最初の90分が勝負! “最高の睡眠”のために知りたい5つのポイント

ライフスタイル
2018.08.25
睡眠の質を上げるために、今すぐ知りたい5つのこととは? スタンフォード大学教授の西野精治先生が教えてくれました。

睡眠は“ワレモノ注意”と心得よ!

睡眠の質は、湿度、室温、照明などの外的要因やストレスなどの内的要因など、さまざまなものに影響を受ける。例えば、照明は真っ暗が理想。不安な人は間接照明をつけてもいいが最小限の明るさにとどめたい。また、夏は湿度が高く、汗が蒸発せず体温が下がらないので、空調を整えないと夜中に何度も起きてしまうことに。「睡眠は“fragile”=非常に壊れやすい。そう心得ておけば、睡眠を壊さないための心がけも変わってくるはずです」

快眠の近道は、睡眠のメカニズムを“知る”こと。

睡眠の質を改善するには「メカニズムを理解し正しい睡眠を知ること」自体が非常に大切。特に最近は睡眠への関心が高まり、膨大な情報が溢れているが、科学的に疑わしいものも。「『美容のゴールデンタイムは夜10時~2時』という通説がありますが、特にこの時間に入眠しなくても、深い睡眠ができれば美容に影響する成長ホルモンは分泌されるので、間違い。正しい知識を取捨選択して理解しなければ、最高の睡眠にはたどり着けません」

寝付きを良くする鍵は、「体温」と「脳」。

眠りの質

「体温」と「脳」は、カラダと脳をスリープモードに切り替える2つのスイッチ。「スイッチを上手く切って深い眠りに入れれば、少ない睡眠量でも質を最大限に高められます」。体温のスイッチは、体の内部の体温=深部体温を下げ、手足の温度=皮膚温度を上げるのがポイント。「人は寝る前、毛細血管が発達している手足から熱を逃がし、深部体温を下げています。深部温度と皮膚温度の差が2°C以下に縮まるとスムーズに入眠できます」。また、ストレスや肉体的な疲れなどで、なかなかOFFにできないのが脳のスイッチ…。「脳は体温とも関係していて、脳が興奮していると体温も下がりにくいんです」

“最初の90分”を制するものが、睡眠を制する。

寝ている間、深いノンレム睡眠と浅いレム睡眠が4~5回繰り返され、明け方になるにつれて眠りは浅くなり、レム睡眠の時間が長くなっていく。レム睡眠時、脳は起きているがカラダは眠っている。ノンレム睡眠では、脳もカラダも眠っている。西野先生が強調するのは、最初の90分間に訪れるノンレム睡眠の重要性。「“最高の睡眠”の基礎となるのが、最初に訪れるノンレム睡眠であり、この時にいかに深く眠れるかが睡眠の質を左右します。例えば実験で最初の90分の睡眠を阻害すると、その後の睡眠は計測不能になるほど乱れてしまう。また、長く起きていると“睡眠圧”、いわゆる“眠気”が蓄積し、眠ることでこれが解消されますが、その睡眠圧がもっとも放出されるのも最初のノンレム睡眠時。眠り始めの90分が崩れると、その後何時間寝ても睡眠全体の質は総崩れとなってしまいます」

眠りの質

レム睡眠とノンレム睡眠の1周期がスリープサイクル。もっとも深くなる最初の90分のノンレム睡眠できちんと眠れると、その後のスリープサイクルも整っていく。この“黄金の90分”では、成長ホルモンの分泌や脳のコンディショニングも行われている。※グラフは『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)を参考に作成。

よく眠るための勝負は、朝から始まっている!

睡眠に悩んでいる人は、朝の覚醒行動に問題がある場合も。「睡眠と覚醒はセットであり、表裏一体。最高の睡眠への道は、朝から始まっているといっても過言ではありません。『不眠症は朝から始まる』という言葉もあるくらい、朝の行動が睡眠に影響を与えるのです」。朝、スッキリ起きられれば、日中のパフォーマンスはアップし、夜の入眠もスムーズに。「ぐっすり眠るには睡眠法そのものと同じくらい、“どう起きるか”が重要です」

西野精治先生 睡眠研究の最高峰と称されるスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)所長。医師。睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから研究している。

最高の睡眠

睡眠医学の最先端をわかりやすく解説した西野先生の著書『スタンフォード式 最高の睡眠』。20代の働く女性を主人公にしたコミック版が、8/27発売。サンマーク出版。

※『anan』2018年8月29日号より。イラスト・加納徳博 取材・文・小泉咲子

(by anan編集部)


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