「へい、お待ち!」。目の前にトンと置かれた『すし匠』のばらちらしは惚れ惚れする美しさ。今年も一年よろしくお願いします! と手を合わせたくなる。少し甘めの錦糸卵を敷き詰めた上に、小肌、鯖、イワシ、アイナメ、マグロの赤身、鯛、カンパチ、ズワイガニ、車海老、サワラの皮、鮑、筋子、紫ウニなどなど。35種類近くの寿司ネタがのる。
そのひとつひとつが塩で締める、酢でしめる、炙る、煮るなど、江戸前寿司の技法、『すし匠』の仕事のすべてが込められている。それにしても今日はいつにも増して鮮やか。その理由は、31歳の新親方・勝又啓太さんの采配による。『すし匠』といえば「寿司屋が行きたい寿司屋」で全国1位に選ばれたプロの評価が高い店。親方・中澤圭二氏は世界に江戸前寿司の技法を広めるために、現在はハワイ店で活躍中。東京の本丸は、氏のもとで12年の修業を積んできた勝又さんに任された。
「僕は赤、黄色、緑、黒など色を利かせるのが好き。親方のスタイルを守りつつ、自分らしさも出していきたい」と勝又さん。最近、ばらちらしを出す寿司屋を見かけない。「手間がかかるからね。でも、昼のお客さんも大事だし、若い子の勉強のためにもうちはずっと続けます!」。絶滅危惧メニュー候補のばらちらし。ありがたくいただきます!