近年のモダンタコスの世界的な広がり(ガストロノミーの一皿から街角の一軒まで、素敵なタコスに出会うこと増えたよね!)は、そのアイコニックな見た目と何を乗せてもタコスになる包容力で、あらゆる文化の交差点の役割を引き受けることができるからではないかと考えている。
今年の5月に中延でタコスショップ『みよし屋』を開いた阿部太一さんも、タコスの力に魅了された一人だ。もともと彼は編集のプロフェッショナル。そして三代続いた街のお蕎麦屋さん『みよし屋』の倅でもある。数年前に両親が他界して、建物が残った。子供の頃から店の上で育ち、大人になってからも大晦日には家族総出で手伝った。この大切な場所で何かできないか。人が集う場を作れないか。そう考えて辿り着いたのがタコスだった。
店構えはお蕎麦屋さんの面影を残しながら、店内はポップに。照明に描かれた「WRAP ME TENDER」のサインが優しく躍る。タコスは料理家の山田英季さんのアドバイスのもと、自家製のコーントルティーヤの上にメキシコの風とお惣菜の安心感を絶妙にミックスする。タコスも惣菜もテイクアウトできるという。「街の人のための店だから。行き過ぎない、でもちょっと行きたい。そんな塩梅です」と阿部さん。これまでを包容しながら、これからを編む。『みよし屋』は続いていく。その真ん中にタコスがある。
右から時計回りに、カルニータスのタコス(¥418)、コリアンダー風味のフライドチキンのタコス(¥418)、フライドトマトのタコス(¥418)、クラフトビール(¥770)、レモンソーダ(¥385)。隣には銭湯「八幡湯」が。タコスからの銭湯、最高~! ※クラフトビールは、時期により提供する種類が異なります。
みよし屋 東京都品川区西中延3‐15‐7 11:00~21:00 火曜休 詳細はインスタグラム(@tacoshop_miyoshiya)で。
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。
※『anan』2023年6月14日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)