編集者との打ち合わせそのものもホラー装置になっていく…傑作短編集『身から出た闇』

原 浩『身から出た闇』

「『火喰鳥を、喰う』はSFやパラレルワールドっぽくも読めますし、『やまのめの六人』はクライムムービー的なものをやりたかったんですよね。3作めの『蜘蛛の牢より落つるもの』では、ミステリー要素を濃くしたつもりです。これまではそんなふうに、書きたいテーマにホラーを掛け合わせて作品にしてきました。なので、初めて怖がらせることに全振りしようと意識したのが、この『身から出た闇』かもしれません」。そう語る原浩さんの最新作が、いま話題沸騰中。


編集者との打ち合わせそのものもホラー装置になっていく。傑作短編集

5つの短編が収録されているが、その制作のプロセスが各編の前後に〈編集者との打ち合わせ〉という形で記されている。

「冒頭は、僕が3人の担当編集さんと打ち合わせする場面から始まります。そこで『短編集にしましょう』というのが今作のスタートになったのは事実です。もちろん脚色したところもあるのですが、同時に“本当にあったこと”にも沿っていると思います」

ページが進むにつれ、怪異はじわじわと現実を侵食し始めていく。何が起きるかは読んで確かめてほしいが、全体を串刺しにするその仕掛けが効いている。日常に潜む恐怖という軸はありながら、メタフィクションあり、ジュブナイルありと読み心地はバラエティ豊か。

「自分も短編集を読むときにはいろいろな味が入っていた方が好みなので。ある意味、いちばん気を遣ったのが『トゥルージー』ですね、実際に高校生に流行っているああいう画像共有アプリがあって。そのSNSがもたらす死の連鎖みたいな話なのに、おじさんがひねり出した女子高生たちみたいになったら興ざめだなと。高校生の娘に読んでもらって、『大丈夫、女子高生っぽい言葉遣いができている』『流行っている“あのアプリ”をやるのが怖くなる』と言われてほくそ笑みました(笑)」

個人的には、死の原体験がその人の死神になるという、文学的なホラーミステリーの「828の1」は、絶対におすすめしたい一編。

「幼い頃にカマキリがバッタを捕食する場面を見てすごい恐怖とショックを味わったんです。その怖さの最初のイメージが死神と結びついて生まれたお話です。ただ、読者の反響を見ると結構好みが分かれているみたいで、多方面に刺さったのなら僕としてはそれがうれしいですね」

Profile

原 浩

はら・こう 1974年、長野県生まれ。作家。2020年「火喰鳥」で「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」大賞を受賞。同作を改題した『火喰鳥を、喰う』でデビュー。同作は映画化もされた。

Information

『身から出た闇』

5話めの「828の1」の初出は、『潰える 最恐の書き下ろしアンソロジー』(角川ホラー文庫)。その他の短編と幕間は書き下ろし。角川ホラー文庫 902円

写真・土佐麻理子(原さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・三浦天紗子

anan 2469号(2025年10月29日発売)より

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