各年代で代表に選ばれ“日本の宝”とも称される逸材。今年6月の日本代表デビューで注目度が急上昇した18歳は、日本を背負う覚悟と応援してくれる人への感謝を胸に戦う。応援する側の気持ちも知る彼の“応援の流儀”とは……。

Index

    18歳の日本代表デビュー、急成長をもたらした決断

    今年6月、18歳の若さでFIFAワールドカップアジア最終予選の日本代表に初選出され、香川真司選手が持っていた同大会の最年少出場記録を更新。今年に入って急成長を遂げた佐藤龍之介選手が「小さい頃から目標にしてきた」という“夢の舞台”へ到達した。

    日本サッカー界を背負っていく存在として期待され、9月27日に開幕するU-20W杯から2028年のロサンゼルス五輪を目指す世代の中心選手だ。だが、その視線はすでにその先へ向かっている。

    「代表デビューはうれしかったけれど、もう年齢は一切考える必要がないので、もっと成長して選手としての価値を上げていきたい」

    驚くべきは年齢からは想像できない行動力だ。16歳でプロ契約を結んだFC東京で出場機会に恵まれず、今シーズンから育成型期限付き移籍でファジアーノ岡山への“武者修行”を決断。自らの強い意志と新天地での急激な進化で一気に日本代表入りを手にした。従来は司令塔型の選手だったが、岡山で運動量と球際の強さが求められるウイングバックとして開花。チャンスメイクだけでなく、サイドからゴール前に切り込んで得点に絡むシーンも増えている。

    「自分では運動量やプレー強度に自信はありましたが、それをピッチで証明できた。しっかり走って戦える選手であることをプロの世界で示せたのは大きかった」

    持ち前の積極性は、日本代表でも合流初日からすぐさま発揮された。最年少ながら素早く溶け込んで笑顔で先輩たちとコミュニケーションをとると、ランニングや3組に分かれたフィジカルトレーニングで遠藤航、長友佑都の両選手と並んで先頭に立ち、強烈な存在感を放った。本人は「昔から先頭を走る習慣もありますし、そこは日本代表でも出していかなければと思っていたので、ちょっと頑張りました」と笑うが、「自分がどんな立ち位置でもチームの先頭を走りたいという気持ちは忘れちゃいけない」と意識の高さも見せる。

    応援する側の気持ちも中学時代の経験で理解

    18歳での日本代表デビューを受けて、注目度が一気に上がった。スタジアムはもちろん、メディアを通じて応援される機会も増えていく。U-16から各年代の代表で日の丸をつけてきたこともあり、背負うものの大きさは十分に理解している。それは数人のサポーターしか応援に来ることができなかったアンダー世代のキルギス遠征でも、3万人以上が詰めかけた日本代表デビュー戦でも同様だ。

    「もちろん日本代表は試合の重みや責任が違いますけど、年代別代表の頃から世界中どこまででも応援に来てくれるサポーターの人たちがいましたし、それが自分にとってのいいプレッシャーになっていました。『もっと成長しなきゃ』とか『結果で応えなきゃ』って毎試合思うんです。サポーターのみなさんは自分が考えているよりもはるかに強い気持ちで応援に来てくれているし、それを当たり前だと思っちゃいけない」

    応援とプレーの相乗効果にも持論がある。岡山もFC東京も熱いサポーターの存在が特徴的で、スタジアム全体がチームを後押しする。選手は苦しい時間帯でもあと一歩が出るし、100%を超える能力が発揮できるという。だからこそ「一緒に戦って試合に勝ったときの喜びはすごい」とも語る。

    応援する側の気持ちを実体験として理解している点も彼の強みだろう。「実は結構応援が好き」だとこっそり明かしてくれた。

    「ホームの応援はもちろんですけど、相手チームの応援も詳しいので、実は試合中に口ずさんだりしていることもあります(笑)。だからアウェイの大観衆が相手でも自分が応援されているような感覚になったりするんですよね」

    FC東京U-15むさしでプレーしていた’19シーズン当時、中学1年生だった龍之介少年は、チームの仲間と一緒に味の素スタジアムでトップチームを熱心に応援した。その経験が応援に対する考え方に大きく影響を与えている。

    「あの頃はめっちゃ声を出して本気で応援していたので、ゴールに一喜一憂したり、結果次第で元気になったり落ち込んだり、サッカーが生活の一部に入り込んでいることをすごく感じました。だから個人的にはまた応援したいなと思うこともありますよ。応援してもらう側だけでなく、応援すること自体が活力になる経験もしているので分かるんですが、選手とサポーターってお互いにパワーを与え合える素晴らしい関係だと思います。だからこそ応援してくれる人たちを大切にしたいですね」

    大きな可能性を秘めた18歳。日本代表として、一人のサッカー選手として、その未来は無限大だ。

    「ピッチで一番目立って、チームを勝利に導ける選手になりたい。日本代表や世界のトップリーグで輝きたいし、今の日本代表は愛される選手ばかりなので、僕も世界中で応援してもらえるような選手になっていきたいと思います」

    Profile

    佐藤龍之介

    さとう・りゅうのすけ 2006年10月16日生まれ、東京都出身。171cm、65kg。ボジションはミッドフィルダー。FC東京の育成組織で育ち、16歳でプロ契約。今季はファジアーノ岡山へ育成型期限付き移籍中。各年代で代表に選出され、6月に日本代表デビューを果たした。

    写真・山口 明 スタイリスト・藤長祥平 取材、文・青山知雄

    anan 2464号(2025年9月24日発売)より
    Check!

    No.2464掲載

    応援の流儀

    2025年09月24日発売

    目標に向かい頑張る人たちを見守ることで、心が躍り、パワーをもらえる。今号のananは「応援」を切り口に、スポーツやエンタメなど様々なジャンルの方々に登場いただき、応援する側、される側の心理をインタビューを通して考察するほか、最新の推し活アイテムなども取り上げます。

    Share

    • twitter
    • threads
    • facebook
    • line

    Today's Koyomi

    今日の暦
    2025.9.
    29
    MON
    • 六曜

      先負

    • 選日

      母倉日

    今月も終わりが近づきました。今日の暦には「過去を振り返って未来の行動を決める」という意味がありますので、悪かったところがあれば反省し、良かったところがあれば自分を褒めてあげて今後につなげましょう。問題点があれば早めに解消するようにし、悪い癖が出ていたらそれが恒常化してしまう前に修正を試みましょう。

    Movie

    ムービー

    Regulars

    連載