
小池栄子さん
ライブさながらに大音量で流れるロックにド派手な殺陣、凝った舞台美術と衣装に、カッコよさとおバカの詰め合わせ。エンターテインメント性の高い舞台で、演劇ファンにとどまらない人気を誇る劇団☆新感線が今年45周年を迎えた。記念すべき新作公演は『忠臣蔵』を上演するために奔走する江戸時代の演劇人たちを描いた舞台『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』。
バカバカしいことを思い切り。ヘンテコさを楽しんで
「新感線さんの舞台を観終わった後って、毎回、アミューズメントパークの帰りみたいな多幸感があるんですよね。とくに今回の作品は、役者さえいればどこであれ芝居ができるんだという、劇団を支えてきたファンの方々に宛てた劇作家・中島かずきさんのラブレターであり、これからもバカバカしいことを思い切りやっていきますという決意表明のようにも感じています」
小池栄子さんは2011年『髑髏城の七人』で新感線に初参加して以来、今回が4作目。本作では、山奥で父親に芝居を叩き込まれ、花形役者を目指し江戸に出てくる娘・お破(やぶ)役。
「山奥で(橋本)じゅんさん扮する父親に育てられた、言ってしまえば狼少女みたいな娘です。彼女は、その父親から教わったものを歌舞伎であり『忠臣蔵』だと信じてやっているんですけれど、そこのヘンテコさを楽しんでもらえたらと(笑)」
新感線は、関西出身劇団らしいベタな笑いが魅力のひとつ。
「あらためて古田(新太)さんも(高田)聖子さんもすごいんだなと感じています。観客から笑いが起こったときに、少し笑いがおさまってから次のセリフに入るのですが、待っていると不安になるし、焦って次のボケにいっちゃうと届かないまま不発に終わっちゃったりするんです。でもおふたりは、その間も的確で確実に笑いをとっていくんです。ほかの劇団員のみなさんも、本番になると稽古場のさらに何倍も役に肉付けされて笑いを増幅させているし。本当に芝居好きな人たちの集まりだなと思っています」
しかし小池さんも、これまでウッチャンナンチャンやダウンタウン、雨上がり決死隊など、東西さまざまな芸人と渡り合ってきたツワモノ。
「昔から、言われたことは躊躇なくやれるスピード感が自分の強みかなと思っています。自分のカラーみたいなものがないからだと思うんですけれど、番組の雰囲気や共演の方々の空気感に合わせて自分の立ち振る舞い方を変えていくのは好きだし、得意なのかなと思っています」
ボケを受けたりツッコんだり、的確な受け答えと笑いのセンスは、昔から大好きで見ていたバラエティ番組で培われたものらしい。
「もともと芸人さんが好きで、昔からお笑い番組が大好きだったのはあるかもしれません。今も、休みの日に録り溜めたバラエティ番組を見ています。笑いって元気になるし、笑ってたら悩みもどうでもよくなるし。やっぱり人を楽しませることをやっていきたいんですよね」
一方、俳優の仕事は、「理解できないことを自分に落とし込んで理解していく作業が楽しい」と話す。
「基本的に、まるで理解できない役柄もとりあえずやってみるんです。でも演じていくうちに、だんだん役と仲良くなって、こういう考え方もあるのかなと思えたりもする。そうやって私自身の感情や考え方の引き出しが増えていくのが面白いです。逆に、最後まで理解できずに終わった、みたいな役もあるんですが、それが意外にも世の中的に評価をいただくこともあって。結局、わからないからこそ楽しいんでしょうね」
Profile
小池栄子
こいけ・えいこ 1980年11月20日生まれ、東京都出身。近作にドラマ『おい、太宰』『新宿野戦病院』『コタツがない家』『地面師たち』『鎌倉殿の13人』など。
Information

2025年劇団☆新感線 45周年興行・秋冬公演 チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』
山奥で元役者の父・荒村荒蔵(橋本じゅん)から芝居を叩き込まれたお破(小池栄子)は、花形役者として舞台に立つため江戸に向かう。しかし江戸は、幕府により贅沢が禁止され歌舞音曲も規制されており…。11月9日(日)~12月26日(金) 新橋演舞場 作/中島かずき 演出/いのうえひでのり 出演/古田新太、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、羽野晶紀、橋本さとし、小池栄子、早乙女太一、向井理ほか 全席指定・桟敷席1万7000円、1等席1万6000円ほか ※未就学児入場不可 新橋演舞場 TEL. 03-3541-2600(10:00~18:00) 松本、大阪公演あり。
anan 2463号(2025年9月17日発売)より