日本国内にとどまらず、北米や欧州、アジアをはじめ世界中の映画館で公開されているスタジオジブリ作品。最新作『君たちはどう生きるか』(2023)は80を超える国や地域で上映を果たした。しかし、知名度も低かった当初、海外での公開は簡単ではなかったという。さまざまな地域の人々がジブリ作品を待ち受ける土壌が形成されるまでには、作品を愛し、長い時間をかけて届けようとしてきたパートナーたちの奮闘があったと日本テレビ・事業局イベント事業部の依田謙一さん。

ジブリ展の原点。進化して22年ぶりに東京に帰還。

「例えば海外におけるスタジオジブリ作品のエージェントの一つ、グッドフェラス社の社長、ヴァンサン・マラヴァルさんは、東欧や南米など新たな地域での公開に尽力してくれた立役者の一人。作品をそれぞれの地域に合わせようとするのではなく、監督と作品を尊重した上で届けることを第一とする、良き理解者でありパートナーです」

本展ではこうした海外の仲間たちにスポットを当てる。世界各地に作品がどのように届けられたかの道筋をたどりながら、およそ14作品の名場面を立体造型物で紹介する。

ジブリ展といえば「金曜ロードショーとジブリ展」「ジブリパークとジブリ展」など、これまで数多くの展覧会が開催されている。その原点となったのが2003年に始まった立体造型物展だ。今回の展覧会では『千と千尋の神隠し』『耳をすませば』『平成狸合戦ぽんぽこ』に加え、2003年以降に公開された『ハウルの動く城』『コクリコ坂から』、最新作『君たちはどう生きるか』の名場面を立体で表現する。

「どの作品も、もし実際にあったらという設定でイメージした大きさで作っています。例えば『耳をすませば』の雫が乗っていた電車など、実際に中に入って撮影できるスポットがいくつもありますよ」

特に注目したいのは、映画『紅の豚』(1992)に登場する飛行艇サボイアS‐21の立体造型物。

「会場の寺田倉庫は湾岸エリアの運河に面した立地で、『紅の豚』の中で飛行艇を製造するピッコロ社のロケーションとぴったり。そこで飛行艇サボイアS‐21を木製のアート作品として制作しました」

この制作の指揮を執るのは特撮美術の第一人者、伊原弘さん。これまでにも特撮短編映画『巨神兵東京に現わる』(2012)で東京の街のミニチュアを手掛け、全国を巡回した展覧会「ジブリの大博覧会」では『天空の城ラピュタ』の造型物を制作。立体造型のエキスパートだ。

特撮とは「特殊撮影」の略称で、1950年代に始まる怪獣映画ブームを経て発達した日本独自の映画美術の手法だ。CGのない時代に巨大な怪物が街を襲う場面を着ぐるみやミニチュア模型を用いて実写で撮影し、海外のクリエイターからも高い評価を得ている。「人が脳でどう見ているかを考え、錯覚もうまく使いながら、“頭の中にあるシーン”を表現できるのが伊原さんのすごさ」と依田さん。映画の世界が目の前に立ち上がる。アニメ同様、そこにはさまざまなこだわり、技術が詰まっている。立体表現から見えてくる、ジブリの新しい魅力を楽しんで。

ジブリの立体造型物展『ハウルの動く城』

Ⓒ 2004 Diana Wynne Jones/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDDMT

ジブリの立体造型物展『平成狸合戦ぽんぽこ』

Ⓒ 1994 Isao Takahata/Studio Ghibli, NH

ジブリの立体造型物展『千と千尋の神隠し』

Ⓒ 2001 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND DTM

短編アニメーション映画を特別上映。

大空に憧れた人々が空想した“空飛ぶ機械”を描く短編アニメーション映画を会場限定で上映。

ジブリの立体造型物展『空想の空とぶ機械達』

Ⓒ 2002 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

ポルコが乗った飛行艇が立体で登場。

飛行機好きで知られる宮﨑駿監督が『紅の豚』で登場させた飛行艇を木製のアート作品として再現。

ジブリの立体造型物展 制作中のサボイアS‐21

Ⓒ 1992 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NN

ジブリの立体造型物展

Information

天王洲・寺田倉庫B&C HALL/E HALL 東京都品川区東品川2‐1‐3 5月27日(火)~9月23日(火)9時30分~20時(入場は~19時。5/27は15時開館) 会期中無休 一般1900円ほか※日時指定予約制 TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)

取材、文・松本あかね

anan 2447号(2025年5月21日発売)より

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line

Today's Koyomi

今日の暦
2025.5.
24
SAT
  • 六曜

    赤口

  • 選日

    天一天上始め

天一天上の16日間は方位の禁忌がない期間とされます。他方、天一(鶴神ともいう)が渡り歩く44日間は5〜6日ごとに北東から時計回りに避けるべき方位が定められています。その信ぴょう性はともかくとして、一般的に言って衝動に流された行動は利が薄いか、デメリットのほうが多いものです。心に余裕をもっておおらかに。

Movie

ムービー

Regulars

連載