提供:髙島屋史料館TOKYO 撮影:澤木亮平

映画を観ても演じている俳優そっちのけで、後ろに映っている団地に目が行ってしまう。そんな団地好きが集まって「団地団」を結成、団地が登場する映画やアニメを語り合うトークイベントを催してきた。その活動の成果を、展覧会の形で披露したのがこの企画だ。

団地を主役として映画を観るとそこから社会状況が見えてくる。

取り上げているのは、団地を舞台とした国内外の映画、ドラマ、アニメなど。膨大な数となる映像作品を挙げ、それを団地団メンバーの大山顕(写真家・ライター)、佐藤大(脚本家)、速水健朗(ライター・編集者)、稲田豊史(同)、山内マリコ(小説家)、妹尾朝子(漫画家)が、それぞれの立場から分析している。パネルの解説を読むと、団地の空間的特性や団地をめぐる社会状況が、様々な形で映画に表れていると納得できる。

展示の一角には年表があり、時代による団地の扱われ方の移り変わりもわかる。団地が建てられ始めた1960年代初めの『下町の太陽』や『しとやかな獣』では憧れの対象だったのに対し、団地の大量建設が進んだ’70年代の『団地妻 昼下りの情事』では、匿名的な空間で怪(け)しからんことが行われている場となる。’80年代から’90年代にかけては、『新世紀エヴァンゲリオン』や『平成狸合戦ぽんぽこ』などSFやファンタジーの舞台として使われることが増え、さらに2000年以降になると、『みなさん、さようなら』のように、居心地の良い一種のユートピアとしての描かれ方が出てくる。

とはいえ、もとになっている映画を観てないから説明されてもわからない、という向きも多いだろう。そこは心配無用。会場内のモニターでは、主要な団地映画の団地的クライマックスが、短く切り取られ、上映されている。これを観賞するだけでも、この会場に来る価値あり。たとえば『ザ・ファブル』のアクションシーンは、確かに団地でなければ撮りえない傑作だ。

団地の掲示板や郵便受けを模した展示デザインも、団地という空間の愛おしさを、改めて感じさせてくれるものでうれしい。

Information

団地と映画―世界は団地でできている

髙島屋史料館TOKYO 4階展示室 東京都中央区日本橋2‐4‐1 日本橋髙島屋S.C.本館 開催中~8月24日(日)10時30分~19時30分 火曜(祝日の場合は開館し翌日休)、8/20 休 入館無料 監修・団地団(大山顕、佐藤大、速水健朗、稲田豊史、山内マリコ、妹尾朝子)

文・磯 達雄

anan2446号(2025年5月14日発売)より
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No.2446掲載

レスキュー美容 2025

2025年05月14日発売

年々亜熱帯化が進む中、紫外線や大気汚染、湿気やムレ…この夏、肌と髪に迫る危機を救うためのメソッドや最新コスメを紹介する特集号です。藤井サチさん、爪切男さんら注目の美容賢者が自身のとっておきケアや愛用品を語るほか、いま話題のIt girl、池端杏慈さん、乃木坂46の新加入メンバー・瀬戸口心月さんの気になる肌と髪ケアインタビューも。

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明確なテーマか使命感を持って物事に取り組むことを表す日です。それも自分一人というよりは仲間と協力してという形が多くなるでしょう。得意不得意はあるにしても、苦労や楽しさを分かち合いながら、各自できることをして成果を上げるという体験。例えば、お世話になっている人へのサプライズ・プレゼントなんていいかも。

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