現代美術はクィアネス! 実現したいクィア展構想
藪前知子(以下、藪):これまで企画した山口小夜子と石岡瑛子の展覧会が、新宿2丁目でDIVA的だと話題になっていたと言われたことがあって。
ゆっきゅん(以下、ゆ):石岡瑛子展は「女傑」のたくましさというか、五社英雄の映画とか好きな人は好きな感じがする。
藪:ドラァグクイーンの皆様は「私たちは強い女が好きなの」っておっしゃってました。
ゆ:ロンドンのV&A博物館で「DIVA」展があったじゃないですか。そのグッズが私が出してきたグッズとほぼ同じキラキラしたものばかりで、DIVAのイメージ解釈一致すぎて面白かったです。
藪:女性のセクシュアリティを極端に強調したDIVA的な表現が、突き抜けてクィアな感性に結びつくのが興味深いです。
ゆ:パフォーマンス性なんですかね? 順序逆かもだけど、日本の歌姫も衣装とかを見たらドラァグクイーンの表現に近いと感じます。
藪:私はクィアの歴史というか、過去の文化にあったクィア的なものを発見していくことに関心があって。ゆっきゅんが過去の歴史を引用しながら新しく読み替えて活動していることも興味深いです。
ゆ:私は単純に大衆的な文化の中にいたDIVAたちが好きだから、引き継ぐのが必然だったってだけでもあるんですけどね。
藪:実はいつかクィアやDIVA的な感性を展覧会にしたいなと思ったりしてます。
ゆ:藪前さんがどんなキュレーションをするのか楽しみです。
藪:私が活動している現代美術や、その前の19世紀からの前衛的な芸術運動って、新しい価値観を探るものですよね。そういう攻めたものが異端ではなく、芸術と呼ばれるものの本質にあると思うと、クィアなものとして私たちが読み替えなくてはならないものは、もっと多いと思うんです。
ゆ:ホントに興味の幅が広い!
藪:最近は中華沼にもいったりきたりしていまして…。
ゆ:中華沼?
藪:もともと時代劇好きなんですが、中華時代劇が熱いんです。クィアなものとの関係でいうと、アンダーグラウンドで盛り上がっている中華BLは、ポルノに対する検閲をすり抜けながら、あいまいな関係のブロマンス(友情もの)に変換していたり。ジェンダーや社会批判的な内容をギリギリ攻めて伝える熱量がすごいです。
ゆ:すごい熱いプレゼン!
藪:キュレーターって基本、重要な文化を熱く伝えるための“プロのオタク”なんですよ…。
PROFILE プロフィール

藪前知子
やぶまえ・ともこ 東京都現代美術館学芸員。担当した主な展示は2015年「山口小夜子 未来を着る人」、’20~’21年「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」(共に東京都現代美術館)など。現代美術やカルチャーについて執筆も行う。
PROFILE プロフィール

ゆっきゅん
1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』とそのリミックスEP『生まれ変わらない私を!?』が配信中。インスタ、Xは@guility_kyun
anan 2428号(2024年12月25日発売)より