
新しい学校のリーダーズのメンバーとして国内外で活躍するSUZUKAが映画『迷宮のしおり』で声優デビューを果たした。初めての挑戦やエネルギッシュなパフォーマンスの根幹を聞いた。
新しい学校のリーダーズのメインボーカルとして世界を股にかけて活躍するSUZUKAが声優に初挑戦。「マクロス」シリーズで知られる河森正治監督初のオリジナル劇場長編アニメーション『迷宮のしおり』で、スマホの世界に迷い込んだ引っ込み思案な高校生・栞と、現実世界に現れ栞と入れ替わったもうひとりのSHIORIを見事に演じ分けた。ついネットの世界に夢中になってしまいがちな現代を映し出す異世界青春脱出劇を通じて、何を感じたのか聞いた。
── 『迷宮のしおり』で一番共感したのはどんなところでしたか?
引っ込み思案な高校生の栞がスマホの中の異世界に飛び込んでしまう一方で、栞にとっての理想であるSHIORIが現実世界に現れて自由奔放に遊んじゃう。人間が持つ二面性に共感しました。
昔はひとつの人格で完結すると思っていたので、別の自分を感じると混乱していたんですが、徐々に強い部分があれば弱い部分があるということを知っていきました。今は対極的なところのバランスをどうとっていくかを楽しんでいる最中です。
── 昔はどういうふうに混乱していたんですか?
ライブでエネルギーがハイになった後に「もっと進化していきたい」って思い続けていると、どこかで充電が切れて混乱しちゃうんです。ずっと早いBPMのままで生きようとしていたんですが、動があれば静があるので深呼吸する時間が必要なんだなって気付きました。
バランスのとり方を学んでいますが、SUZUKAという人間として生きる上での基盤を学べている気がするのでやりがいがありますね。こういう仕事をしていると現実と離れた感覚に浸りやすいんですが、現実はしっかりあるってことをわかった上で、本当にリラックスできる時間を追求してます。
── では、栞の理想型であるSHIORIが好き放題やってしまうところには共感しますか?
そうですね。ライブ中は限界を超えたいので、自分を破壊するように壁をぶっといハンマーで壊すような作業をしてると思っていて。それと通じるのかなと思いました。
── 二面性を演じ分けるにあたってどんなことを意識しましたか?
SHIORIはステージに立ってる時のテンションに近いのでスイッチを入れやすかったんですけど、栞はパーソナルに近いので最初は戸惑いましたね。でもセリフは標準語ですし、栞が動いているところを見ながら「こんな声なのかな」と想像すると自然と声帯に影響が出て自分が思ってもみなかった声が出ていました。心をむき出しにすると自分が一気に出ていってしまうのでちゃんと抑えて演じ分けられた気がします。
── 別人格になれるとしたら誰になりたいですか?
うわー! 私以外のすべてになってみたいかもしれないです。自分と向き合うのに日々苦労しつつ冒険しているので「自分以外の人はどんな感覚で生きてるんだろう?」って思います。私は生まれながらに邪悪な部分があって、たまに理性が利かなくなってゾーンに入ることがあるんですよね。
── ライブパフォーマンスだとそれが良い方向に作用しそうです。
確かにライブしてるときが一番自分らしいのかもしれないです。脳汁が出て「こんな気持ちになっていいんですか?」って思う。芸術だとそれが許されちゃう。だから日々の溜まっているものを出したり、日々得たいと思ってる快感を得たり、お客さんにバレないところで興奮しまくってます。でも「もっと良い解放があるんじゃないか?」って思ってるので模索中ではあります。
── 河森監督とは大阪・関西万博で監督がプロデュースしたパビリオンを一緒に巡っていましたよね。
はい。監督は夢を作品に落とし込むクリエイティブの大先輩なのでめちゃくちゃ学ぶことが多いんです。監督の言葉が私が感じていることの答え合わせになっている気がする。しかも違うカテゴリーで活動しているので刺激を与え合えてる気がしてとても居心地が良いです。
万博でご一緒した帰りのバスで「私はステージに立つ時こんなことを感じてるんです」とお話ししたら「ライブってこういうことだよね」っていう話をしてくださって、その話を数日引きずったままステージに立ちました。詳細を明かすのは恥ずかしいんですが、ステージに立つ人間としての軸を付け加えてもらえたような感覚がありました。

── 『迷宮のしおり』はSNSの怖さを描いた作品でもあります。SNSとはどう向き合っていますか?
SNSを通して知識も世界も広げすぎると、狭いコミュニティで深く付き合うようなことが薄くなってしまうと思っています。リーダーズはリアルなライブという場所での2時間のショーで何を与えられるかを一番大事にしているので、SNS上の意見は気にしないです。SNSの使い方は自由だし遊んでいい。
── 何か思うところがあったんですか?
SNSの投稿を見て「この人はこういう人なんだ」って認識するじゃないですか。断捨離ってするものだと思うんですけど、それと同じように何かが切り替わった瞬間が突然来たのかもしれないです。アーカイブが必要じゃなくなったというか。いきなりそういう感覚に襲われて一気に投稿を消した後、好きな曲を3曲ぐらい爆音で流してめっちゃ踊ってました。
── (笑)。スマホに依存していると思いますか?
最近携帯を見る回数がめっちゃ減ったんです。携帯を見てると意識が上の方に行って足先と距離が遠のく感覚があって。私は足がよく冷えるので、携帯を見ずに意識を下に向けたら血の巡りが良くなってしもやけができなくなるかなと思って実験してます(笑)。
── 結果が気になります(笑)。リーダーズのメンバーとはスマホでどんなやりとりをしていますか?
「遅れる」「OK」とか淡々とした事務連絡が多いです。MIZYUは絵文字とかかわいらしいスタンプを付けてくれるんで楽しんで見てます。でもたまに自分たちの面白いライブ写真で盛り上がったりします。面白い写真は大体おばあちゃん化してるか誰かわからなくなってるかの二択ですね(笑)。
ステージの上はまさに額縁の中にいる最中
── 特に影響を受けたアニメや映画はありますか?
めっちゃあります。アニメだと『妖怪人間ベム』と『デビルマン』がめっちゃ好きです。あの時代のアニメのテクスチャーって中毒性があるんですよね。時期によっていろいろな映画に影響を受けてます。
例えば『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』は公開時にすごく影響を受けました。あと『インターステラー』。最近は(クエンティン・)タランティーノの映画を観漁ってます。今は『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』を観るのがとにかく楽しみです。フランスや香港の映画も大好きで日々映画に救われてますね。
── いつも体のフォルムが美しいですが、ボディメイクで気を付けていることはありますか?
ありがとうございます。体は本当に不思議なので毎日研究してます。生きてる中で芸術的なシルエットを実感することが多いんです。ステージの上はまさに額縁の中にいる最中なので、どこを切り取っても芸術作品でいたいって気持ちがあります。
コンテンポラリーのステージを観に行くと、スタジオジブリの世界みたいに涙がポンポンポンポンッてちらばっちゃうような気持ちにさせられて「なんて美しい! 額縁の中にいる人間はこうあるべきだ」って思わされる。そういう気持ちが積み重なって自然と今に至るという感じだと思います。

── ビヨンセに憧れてダンスを始めたそうですが、いま憧れの存在はいますか?
今は具体的な誰かっていうよりは、アーティストに限らずたくさんの人たちが憧れの対象でありインスピレーションのもとになっていますね。「この人の生き方が美しいのはなんでなんだろう?」って感じることが多くて、学びたくて仕方ないです。共感できるところは取り入れてるのでいろんな人の意思が自分の中に入っていってます。
あえて誰か挙げるとすると、高校生の時からプライベートで定期的にいろんなお寺に泊まりに行ってるんですけど、あるお寺のお坊さんに心を動かされました。愛や人生について起承転結をつけて話してくださって、「この人すごい!」って思ったんですよね。
── お寺はどういうタイミングで行っているんですか?
何かしらの節目の度に行っていますね。特定の宗教を信仰しているわけじゃないんですが、祈りに触れると心の根幹が揺さぶられるんです。行ったお寺によってさまざまな“生”を感じます。都会にいると自然と離れちゃうので自然と触れ合う機会でもあります。
高校生の時に初めてひとりでお寺に行った時はずっと「寂しい」って泣いてたんです。自分から「行く!」って言ってお母さんに「ひとりは危ないから行くな!」って言われたんですけど「でも私行くねん!」って。結局お寺からお母さんに電話して「寂しい!」って言ったら「だから言ったでしょ!」って(笑)。
結局夜になったら全然大丈夫になって。翌日帰宅した時、お母さんの尊さに気付いて泣きながら「お母さん大好き!」って言って抱き付きました(笑)。
── (笑)。2026年はどんな年にしたいですか?
想像してなかったような未知の世界と出会いたいです。いま見えている景色が変わってしまうような感覚や経験が待っていると信じてます。
Profile
SUZUKA
すずか 新しい学校のリーダーズのメインボーカルとして2017年にメジャーデビュー。2021年、88risingから世界デビュー。2024年、世界最大級の音楽フェス・Coachellaに出演し、世界33都市で計11万人を動員するワールドツアーを開催。2025年、結成10周年を記念して初のベストアルバム『新しい学校のすゝめ』をリリース。
information
『迷宮のしおり』
「マクロス」シリーズの河森正治監督初のオリジナル長編アニメーション映画『迷宮のしおり』。引っ込み思案の高校生・前澤栞は親友・希星と撮った動画がきっかけでスマホの中の不思議な世界にとじ込められてしまう。現実世界ではもう一人の派手なスタイルのSHIORIが栞と入れ替わり、SNSを駆使して自由奔放に振る舞っていた。2026年1月1日全国公開。
anan2477号(2025年12月26日発売)より





















