
松山ケンイチさん
発達障害を抱える裁判官が“普通”を装いながら難解な事件に向き合っていくドラマ『テミスの不確かな法廷』。松山ケンイチさんは自身が演じる主人公・安堂のことを「視野を広げてくれる存在」と語る。
「安堂はコミュニケーションの中で引っかかるところが僕自身とは違うので、ハッとさせられることが多くて。その感性に触れることで視野や認識が広げられますし、自分とは違う価値観も大事にしようと思える。そんな安堂が僕はとても好きです」
特性を懸命に隠そうとする安堂の姿は、私たちに「普通って何だろう」という問いを投げかけてくる。
「最近はASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)を題材に描くドラマや映画が多いですけど、きっとこれまでもそういう特性を持っているであろう変わり者のキャラクターはすごく多かったと思うんですよね。例えば過去に僕が演じた『デスノート』のLも、恐らくそのタイプ。今は改めてそういうキャラに特性を付けて描くことが増えているんだと思うんですけど、自分の中では『じゃあ“特性”と“個性”の線引きは?』という問いも生まれていて。同じように、まだ名前は付いていないけど生きづらさを抱えたり社会から分断されていると感じていたりする人は、きっと多い。この作品は『そういう人とどう関わっていくことが大切か』の指標にもなるし、知ることで誰かに優しくなれる作品でもあると思っています」
何にでもケチャップをかけたり同じ服を着たりと、独自の習性がある安堂。松山さんの場合は「一度気になったら終わるまで止められない」という、こだわりがあるとか。
「アニメは一度見始めると一気に全部見ないと気が済まないし、ゲームも5~6時間、なんなら気絶するまでやり続けちゃうことがあって(笑)。自分の体力の配分がバカになっているんですよね。そういうこだわりは役作りでもそうで、僕はいつも監督とコミュニケーションをとってから本番に臨んでいます。1カットを撮ったらすぐにもう次のカットの準備が始まっちゃうし、後で『あぁしておけばよかった』となっても無理ですから。対話をする中で新たな発見などが生まれることもありますし、そこはこれからもしっかりとやっていきたいです」
役作りといえば映画『聖☆おにいさん』の時には自身のXのフォロワー数を原作と同じ108人にする企画を実施したり、昨年には法律を扱う今作にもかけた「誰も傷つけない悪口選手権」を開催したりと、役と連動したSNS活動も毎回話題に。
「遊びの一環ではありますが、やっぱりみんなで一生懸命に作ったものは一人でも多くの方に知っていただきたいですから。とはいえ不発のものも多いし、いつも試行錯誤していますけどね。今回だって『そもそも悪口って傷つけるためのものだろ』って話ですし(笑)。でもSNSだけじゃなく友達や家族などに対しても、知らず知らずのうちに人権を侵害する言動をしていることがあるかもしれない。その可能性を知ることで配慮ができるようになるかもしれないというのは今作と同じテーマなので、それを投げかけたかったという思いもあります。これからも皆さんに刺さる企画を考えていきたいですが、できればSNS対策チームのようなものが欲しい…(笑)」
Profile
松山ケンイチ
まつやま・けんいち 1985年3月5日生まれ、青森県出身。2002年にドラマ『ごくせん』で俳優デビュー。近年は映画『ロストケア』、連続テレビ小説『虎に翼』、ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』など数々の話題作に出演している。
information

ドラマ10『テミスの不確かな法廷』
発達障害を持つことを隠し、“普通”を装いながら生きる裁判官・安堂清春(松山)。しかし、その特性からくる“こだわり”が、誰も気づかなかった事件の矛盾をあぶり出していく。毎週火曜22:00~、NHK総合にて放送中。
anan 2480号(2026年1月21日発売)より





















