奇想天外なアイデアとユーモア画で、世を斬った国芳の画業人生に迫る。
当時の浮世絵界では美人画と役者絵が頂点とされる中、国芳は30代初めに中国の長編小説『水滸伝(すいこでん)』の英雄を描き、遅咲きの成功を手にし、武者絵を人気ジャンルへと押し上げた。また3枚続きの大画面による武者絵、ウィットに富んだ戯画、西洋画法を取り入れた風景画など、趣向を凝らした作品を残し、それらは国内外で高い評価を得ている。
本展「歌川国芳展―奇才絵師の魔力」はそんな国芳の初期から晩年までを総括する大規模な展覧会。さまざまな画題の浮世絵版画、貴重な肉筆画など約400点を紹介する。
その目玉となるのが武者絵。本展では、彼の出世作となった連作《通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)》シリーズから、最晩年の大作《四条縄手の戦い》(前期のみ)まで、国芳の武者絵が一堂に会する。
また、ユーモラスでありながら、風刺を潜ませた面白い画も得意とした国芳。猫や金魚といった生き物ばかりでなく、道具や玩具をも擬人化したり、絵に二重の意味を持たせたりした戯画を残している。会場では、《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》などを楽しめる。
さらに、大の猫好きであった国芳は、自身のさまざまな作品に猫の姿を描いた。本展では、近年発見され話題となっている《流行猫の変化》をはじめ、猫をモチーフにした国芳の作品にもフォーカスする。
天保の改革による浮世絵への取り締まりに反発した国芳は、自身の作品に精一杯の皮肉をぶつけたり、当時の幕府ではご法度とされていた赤穂浪士をテーマにした作品を描くなど、持ち前の明晰さで国政とも戦った。絵筆一本で世間に物申す姿勢は、画業を超えて彼のファンを増やした。そんな国民のヒーロー国芳。彼の画業を知ることは、当時の時勢と、彼の生き様を知る機会ともいえそうだ。
現代の漫画やアニメに通じる国芳の武者絵。
風刺を潜ませ、笑いを誘ったエンターテイナー!
INFORMATION インフォメーション
「歌川国芳展―奇才絵師の魔力」
大阪中之島美術館 4階展示室 大阪府大阪市北区中之島4‐3‐1 前期:12月21日(土)~2025年1月19日(日) 後期:1月21日(火)~2月24日(月)10時~17時(入場は閉館の30分前まで) 月曜(1/13、2/24は開館)、12/31、1/1・14休 一般1800円ほか TEL:06・4301・7285(大阪市総合コールセンター)