人は優しさを感じた時、前を向く勇気が湧いてくる。
「アイミタガイとは、“誰かを思ってしたことが、巡り巡って見知らぬ誰かをも救う”こと。その意味を知って、なんて素敵な言葉だろうと。脚本を読んだ時、自分の心がじんわりと温かくなるのを感じました」
黒木さん演じる梓は学生時代から背中を押してくれた親友の叶海(かなみ)を事故で失い、前を向けずにいるウェディングプランナー。恋人との結婚に踏み切れず、叶海の死後も彼女の携帯にメッセージを送り続けている。
「親友の死を受け止めきれていないということもあるでしょうし、届かないとわかっていても、自分の気持ちを吐露したかったんじゃないでしょうか。私自身、最終的に自分で答えを出すしかないとわかっていても、信頼する友達には悩みや不安を打ち明けたい時があります。だから、梓の行動はよく理解できました」
さまざまな人物が登場する今作では、同世代の俳優・中村蒼さんや藤間爽子さんだけでなく、草笛光子さん、風吹ジュンさんなど先輩俳優たちとの共演も見どころの一つ。
「風吹さんはこれまでに何度も共演させていただいていたので、一緒の現場ではとても安心感がありました。慣れない関西弁を必死に練習されていた姿がすごく可愛らしかったです。草笛さんは初共演だったのですが、すごくチャーミングな方で! 衣装を自前でご用意されていて、事前に監督に『これはどう?』と相談されていたと知って驚きました。愛情を持って作品に取り組まれる姿勢に学ぶことが多かったです」
作中では、なかなか一歩を踏み出せない梓が変わる瞬間があるが、黒木さんにも重なるところがあるそう。
「高校生の時、野田(秀樹)さんのワークショップに参加した時は一歩を踏み出した瞬間です。あの時から私の役者人生が始まったと思うので」
その後の活躍は多くの人が知る通り。確かな演技力で、映画、ドラマ、舞台で唯一無二の存在感を放っている黒木さん。今回は主題歌にも初挑戦し、新たな一面を見せてくれた。
「どなたか忘れたのですが、『歌、好きですか?』と聞かれて、『カラオケは行きますよ』と答えたら、なぜか主題歌を歌うことに(笑)。やるからにはちゃんとせねばと思い、歌唱指導の先生の元に通いました。当初は音程を外さないことに気を取られていましたが『梓として歌ったら音に乗りやすいですよ』と言ってくださって、その一言に助けられました。改めて、私はいろんな人に支えられているなと実感しました。近年は地震や豪雨などの天災が続き不安を感じることも多いですよね。人は優しさを感じた時、前を向く勇気が湧いてくる。観た方が人との絆を再確認でき、時に優しく背中を押せるような作品になったら嬉しいです」
PROFILE プロフィール
黒木華
くろき・はる 1990年、大阪府生まれ。2010年、NODA・MAP番外公演でデビュー。近年の出演作に映画『せかいのきおく』『ゴールド・ボーイ』『八犬伝』、ドラマ『僕の姉ちゃん』『下剋上球児』『光る君へ』など。
INFORMAITON インフォメーション
映画『アイミタガイ』
突然の事故で中学時代からの親友を失った秋村梓(黒木華)と、彼女を巡る人々が織りなす群像劇。監督/草野翔吾 出演/黒木華、中村蒼、藤間爽子、草笛光子ほか 11月1日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。Ⓒ2024「アイミタガイ」製作委員会