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デビュー9年目、藤原さくら「今でも一番好きなアーティストはポール・マッカートニー」

エンタメ
2024.04.06
メジャーデビューして9年。俳優としても活躍する藤原さくらさんの、音楽を始めたきっかけやクリエイティブなマインド、新しいアルバムの制作秘話などについてうかがいました。

スモーキーでありながら透明感も併せ持ったその声色は、心を落ち着かせてくれる独特な魅力を放つ。曲のリリースを続けながら映像作品にも出演し、俳優としても活躍する一方で、ポッドキャスト配信を行うなどエネルギッシュに活動している藤原さくらさん。5枚目となるアルバム『wood mood』をリリースした。

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――素敵なタイトルですね。

ありがとうございます。今までは、いろんなアーティストのみなさんと1~2曲ずつ作って一枚のアルバムにまとめていたので、楽曲が出揃った後に「こういうアルバムになったな」とタイトルをつけることが多かったのですが、今回は曲を作り始める前から森の中にみんなを連れていくような雰囲気のアルバムにしたいというイメージがあって。見たことのない植物や、聞いたことのない鳴き声の鳥がいて、それが次第に心地よく感じられるようになった時に、差し込む光に導かれて森を抜けるようなイメージがまず浮かびました。それで『wood mood』というタイトルに。プロデュースをお願いした石若駿さんには、私が最近好きなテイストの曲をプレイリストで送って聴いてもらったり、1曲ごとに“こういう雰囲気に仕上げたい”などと伝えていく作業を繰り返したんですが、9年間の活動の中で、音楽の方向性に対する意思を伝えられるようになったと思います。それっていい成長だな、って。

――聴いていて、美しくもカッコいい世界観に足を踏み入れた感じがしました。

ジャズマンたちが集結してレコーディングをしたんですが、テンポを出さずに録った曲も多かったので、すごくライブ感のあるテイクがたくさん録れて楽しかったです。いま一緒にやりたい人と音楽を作る、というのはこれまでと変わらない共通点ですが、コロナ禍でライブができなくなって、今ある日常が当たり前じゃないんだと思った時に、一緒にいる人を大切にしたいとか、今の気持ちを優先したいとより思うようになりました。そして、そう思えたことで、嫌なことも全部無駄じゃなかったし、失敗しても必ず残るものはあるから、とりあえずいったんやってみる、という生き方をするようにもなって。どんどんポジティブな人間になってるみたい(笑)。

――お話ししていてその人柄も伝わってきます。アルバム作りの際のエピソードを教えてください。

最近姪っ子が生まれたのですが、近しいところで新しい命に直面したのが初めてで。ミルクをあげたりおしめを替えたりしていると、すごく不思議な感覚に陥ったんです。収録されている「sunshine」や「good night」は姪っ子のことを想って書いた曲です。

――お父さまもミュージシャンだそうですね。やはり幼少期から、音楽は身近にあったのでしょうか。

小さい頃からお父さんのバンドのライブを観に行っていたし、UKロックが好きなお父さんが車の中や家でいつも洋楽を聴いていたので、音楽は身近にありました。楽器も当たり前のように家の中に置いてあるような環境で。ギターを始めたきっかけは、小5の時にお父さんから使わなくなったクラシックギターをもらったこと。当時周りにはギターを弾ける子がいなかったから、弾けるようになったらめちゃくちゃカッコいいな、って思ったんです。お父さんから、ビートルズの曲のコード進行やリフを教えてもらいながら練習しました。

――周りにいないからやりたい、と思ったんですね。

他の人ができないことができるって、めちゃくちゃカッコよくないですか? 今でもその価値観を持っていて、最近、馬頭琴を始めました。モンゴルの民族楽器なんですが、小学校の時、国語の教材だった「スーホの白い馬」に出てきていたので気にはなっていたんです。私、ワールドミュージックが大好きなんですが、ある時YouTubeでモンゴルの人間国宝のおじいちゃんが馬頭琴を演奏している動画を見て、その音色にすっかり魅了されて。これ弾けたら超カッコいいじゃん、って思って始めました。弦や弓が馬の尻尾でできていて、毛の本数によって音色が変わるところもすごく興味深いです。

――いつかライブで聴いてみたいです。ところで、これまでどんな音楽遍歴を辿ってきましたか?

幼少期によく聴いていたこともあって、今でも一番好きなアーティストはポール・マッカートニーなんですが、いろんな音楽を聴くようになり、声が魅力的な女性シンガーに憧れるようになりました。小学生の頃からYUIさんにも憧れたし、ノラ・ジョーンズをはじめジャズシンガーなど幅広いジャンルを聴くようにもなって。クレジットで見た謎の楽器に興味を惹かれて民族音楽に夢中になったりもしました。

――なるほど、それで馬頭琴も。いろんなジャンルに挑戦する行動力も素晴らしいです。

私、小さい頃から興味がいろんなところに向くタイプなんです。よく「落ち着け」って言われるような子供だったんですが、音楽を作る時も今一番興味があることをやりたいから、アルバム制作にしても1曲ごとに違うプロデューサーを立てたりして、ジャンルがバラバラになることが多くて。ある時心配になって「曲のテイストがあまりにも乖離していると、バラバラすぎて空中分解しちゃうんじゃないか…」とスタッフに相談したら、「あなたが歌うとあなたの色になるから、そこはあまり気にしなくていいんじゃない?」って言われて、すごく納得したんです。このままでいいんだ、って。

――いろんなジャンルが歌えるって、素敵だと思いますが。

やったことがないことをやりたいという気持ちが、すごく強いんでしょうね。ライブでもずっと同じことを繰り返していると飽きちゃうから、同じツアーでもセットリストや曲のアレンジを毎回変えたりしているんです。そもそもライブでCDと同じように演奏したら、ライブの意味がないと思っていて。その日一緒に演奏するメンバーならではのアプローチって、人が変われば毎回違うだろうし。あと、47都道府県を回った昨年までの弾き語りツアーでは、いろんな場所をライブ会場にさせていただいたんです。例えばプラネタリウムや能楽堂、教会、牧場など。そうなると畳の間と教会では、空間の反響や建物と音楽との調和などが全然違ってくるので、同じ曲を演奏するわけにはいかなくて。

――印象的な会場はどこでした?

鹿児島の水族館では、ライブ前にイルカショーをやらせてもらいました(笑)。登場のしかたも会場によっていろいろで、芝居小屋では舞台装置のスッポンというものを使って、ポン! って飛び出したり、別の会場では花道を練り歩きながら登場したり。

――面白い(笑)。藤原さんのキャラクターも伝わってきますね。

そうやって毎回違うことをしていると、いろんな発見ができてワクワクするんですよね。

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ドラマーの石若駿がトータルサウンドプロデュースを務めた5thアルバム『wood mood』が発売中。デジタルシングルとしてすでにリリースされている「daybreak」と「sunshine」をはじめ、全10曲を収録。CD1枚組、豪華ブックレット付きの紙ジャケ仕様。¥4,180。またアルバムを提げて、NHKホール公演など全国5都市を回るツアーが4月14日より開催。

ふじわら・さくら 1995年12月30日生まれ、福岡県出身。ミュージシャンのみならず役者としても活躍の幅を広げ、近年はドラマ『ファイトソング』『束の間の一花』『こっち向いてよ向井くん』などの話題作にも出演。定期的に楽曲をリリースしながら、デビュー以来毎年ワンマンライブも行っている。

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※『anan』2024年4月10日号より。写真・中野 道 スタイリスト・岡本さなみ ヘア&メイク・佐竹静香 インタビュー、文・若山あや

(by anan編集部)

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