ロックスターの伝説の逆で“26歳始まる説”を唱えたい。
能町みね子(以下、能):ゆっきゅんのファンはどんな人が多い?
ゆっきゅん(以下、ゆ):転職を考えている女性が多いですね。私を見て、自分にはもっと別に、自由に輝ける場所があるって思ってくれているのかも。
能:背中を押してる感じだ。ゆっきゅんの曲は歌詞もそうだもんね。私は頑張っても作詞ってできないだろうな。
ゆ:私にとっては文章のほうが大変。歌詞は基本的になんでもありだけど、文章は理路整然としてないといけないので。能町さんの文筆家デビューはブログですよね。
能:実は最初から書籍化する気満々で、戦略がガチガチにあったんです。当時はブログ本が流行っていたからそこで話題になるのが早いかなって。文章も本当はトゲトゲしたものを書くんだけど、一般ウケを狙って柔らかくしたし。
ゆ:当時、岡山の本屋で見たな。
能:最初はセクシュアリティのことを書いていたから、次に出すなら他のテーマがいいなと思って。その後に書いた作品をバズらせたのも戦略的で、結構プロジェクトを組んできたんですよ(笑)。
ゆ:戦略的なのは私も同じです(笑)。それって何歳の時ですか?
能:26歳だったな。
ゆ:私が“構想26年”って打ち出して「DIVA Project」を始めたのも同じ歳です! ちなみに川瀬智子さんがTommy february6を始めたのも、一青窈さんが「もらい泣き」を歌ったのも。いろんな人が26でバチッと決まることをやってるから“26歳始まる説”を唱えたいんです。
能:“ロックスターは27歳で死ぬ”っていう話の逆でいいですね。そういえば私「歌手になるプロジェクト」をしたことがあるんです。といっても、歌手を目指している人のメンタルになってみるっていう。一人カラオケに行って、自分が歌手としてふさわしいか考えながら歌うの。それが本当につらくて……。あと全然キーが上がらなくて、やっぱり歌手になるならボイトレは最低限必要だなと思い始めて。人前で歌を歌うってやっぱりすごいことですね。
ゆ:そう言われると歌うってなんか恥ずかしいことだったのかも。
能:カラオケは許されるけど。
ゆ:カラオケは喜びしかない。一人カラオケに客観性を持ち込んだらもうだめですよ。
能:あと、歌手ってなんらかの個性がないと。そこにたどり着くための試行錯誤も気が遠くなって。
ゆ:本気すぎる(笑)。でもカラオケは私も大好き。本当に尊い思い出しかないです。
のうまち・みねこ 北海道生まれ。文筆業。著書に、『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』(共著、朝日出版社)、『私みたいな者に飼われて猫は幸せなんだろうか?』(東京ニュース通信社)、『皆様、関係者の皆様』(文春文庫)、『結婚の奴』(平凡社)など。
ゆっきゅん 1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。「電影と少年CQ」のメンバー。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。X、インスタは@guilty_kyun
※『anan』2024年3月6日号より。写真・幸喜ひかり 文・綿貫大介
(by anan編集部)