19組の芸人をとらえた独創的な写真を堪能。
「僕はお笑いが好きなのですが、この企画の時は、なるべくネタを見ず、写真だけを見て撮影に行き、思い浮かんだことをやります。一番最初に撮ったマヂカルラブリーさんは、編集の方につり革を使いたいと言われたけど、その意味を知ったのは撮影後でしたから。芸人さんはみんな人間力があるからポートレートを撮るとかっこいいし、撮影をすると好きになる。帰り道にネタを見て、撮りながら感じた奥行きの答え合わせをする時間が楽しかったりします」
さまざまな小道具を使ってユニークなシチュエーションを生み出す作業には、ファッション誌での撮影経験が生きているという。
「芸人さんはネタ衣装があることが多く、『こういう服でくるだろうな』と、ある程度は予測ができるんです。でも、絵的に、たとえばパンツの丈と靴のバランスが悪いとなるとポテンシャルが下がってしまうので、そこが目立たないような小道具や状況を考えるようにしていました」
これまで、いろいろな人物を撮ってきた佐藤さんにとって、芸人を撮影するということとは?
「最初、アイドルやアーティストの方と比べたら、突拍子もない提案をしたり、自分を抑えずに出せそうだと思っていたんです。でも、何でもやってくださるからこそ、僕がやりたいことをしたせいで、ご本人たちが“つまんない”“下品”と思われると迷惑をかけてしまう。その方のポリシーとは違うことをやっていただくので、その線引きやバランスのとり方を、いつも考えていましたね。他のタレントさんを撮る時とは違う悩みであり難しいけど、だからこそ楽しい部分でもありました。目指したのは、すごく幸せそうか、面白い写真です。そのどちらかがあると、気持ちのいいものになるんです」
『LAUGH PERSONS』撮影=佐藤航嗣 天狗になったダイアン、幕張のビーチに佇むすゑひろがりず、額縁に収まるティモンディや、階段の踊り場に敷かれた布団に横たわる空気階段など芸人全19組を激写。東京ニュース通信社 3000円。
さとう・こうじ 1980年生まれ、東京都出身。長山一樹氏に師事、2010年に独立。「写真新世紀」で佳作を受賞。Toshl、SixTONESらのジャケット写真や、小誌をはじめとするファッション誌、広告などさまざまなメディアで活躍。
※『anan』2023年1月11日号より。インタビュー、文・重信 綾
(by anan編集部)