【眠活】免疫は深い睡眠時に活性化。睡眠圧の高め方を知っておこう!

ウェルネス
2025.03.23

人は人生の3分の1は眠っているが、睡眠中は、様々なホルモンの働きを利用して、免疫システムを活性化させる最高の時間だそう! そこで東京大学大学院で睡眠の研究をしている林悠先生に、詳しく教えてもらった。

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INDEX

    免疫は深い睡眠時に活性化。睡眠圧の高め方を知っておこう。

    ――まずは、免疫と睡眠の関係性について分かりやすく教えてください!

    昔から「寝る子は育つ」とよくいわれてきたように、睡眠中に“成長ホルモン”が分泌され、細胞の修復を行ったりするため、免疫機能が強化されるといわれています。逆に、睡眠不足だと十分に成長ホルモンが分泌されず、免疫機能は低下するということも一般的によく知られてきた事実です。そして近年の研究で、さらに免疫と睡眠の関係性が具体的に分かってきて、最初に訪れる深い眠りを得る「ノンレム睡眠」の時に、様々なホルモンの働き方が劇的に変化し、免疫機能が活性化されることが明らかになりました。

    ――睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠があり、ノンレム睡眠は何回かやってきますが、1回目が大事なんですか?

    そう、入眠から数時間の間に脳をメンテナンスするノンレム睡眠が始まり、次に脳の動きが活発なレム睡眠が訪れ、またノンレム睡眠へ移行していきます。個人差があり一晩で3~5回程度このサイクルを繰り返しますが、最初が肝心。それは、入眠して最初に訪れる深いノンレム睡眠時に成長ホルモンをはじめ、母乳を作る“プロラクチン”など数種類のホルモンの分泌が増え、逆にストレスにさらされると産生される“コルチゾール”が減るからです。コルチゾールは強い免疫抑制作用があるので、その分泌量が減るということは、逆に免疫機能はアクティブになりやすいということ。また、分泌が増えるプロラクチンは多様な機能を持ち、その一つに免疫を高める作用があります。

    ――スゴイ! 1回目の深いノンレム睡眠時に、免疫細胞に最も良い環境が整っているんですね!

    加えてもう一つ理由があり、ノンレム睡眠中に、いろんな記憶が定着するといわれているんですが、実は免疫の記憶も定着しやすいことが近年分かってきたんです。ワクチン接種後に質の高い深いノンレム睡眠が得られると、効果が持続しやすいという研究結果も。睡眠中の副交感神経が優位なタイミングに、免疫に関する色んな反応が起こり、病原体や病気からカラダを守ってくれるのは、私たちにとって大きなメリットでしかありません。日中は活発に活動するので交感神経優位になり、常に変わる状況に対応するのにカラダは手いっぱいで、免疫のことは後回しに。免疫の機能を高めたり、免疫の記憶を定着させている暇はないので、最初のノンレム睡眠が、免疫をケアするために良い場を提供する格好のタイミングと言っても過言ではありません。

    ――そうなると、免疫のためにいかにこの深いノンレム睡眠を得るかがキモになってきますね。そのためにすべきことは何でしょうか?

    睡眠圧の高め方を知り、習慣にすることですね。睡眠圧とは、眠っていない時間が長いほど、その後の睡眠が深くなること。睡眠不足は言わずもがな、眠りが浅く何度も中途覚醒するような質の良くない睡眠は、睡眠圧が低い証拠。深いノンレム睡眠までいかず、結果睡眠負債を抱えることになります。

    ――自分がちゃんと深く眠れているのか、確かめる方法はありますか?

    睡眠を管理・測定できるウェアラブルデバイスが増えていますが、残念ながら今のところは、脳波を測れる一部のものを除き、睡眠の質を正確に把握できるものはないのです。睡眠クリニックに行けば確かめられますが、ただ睡眠時間が7時間以下の方や、目覚めが悪かったり日中眠くなるような方は、睡眠圧が低い可能性が高いです。それを解消するためには、睡眠時間をちゃんと確保し、起床したら光を浴び、日中は能動的に活動して、夜は消灯したらすぐに眠れるように体内時計を乱さない生活を心がけること。ほかにも昼寝、カフェイン、飲酒など睡眠のさまたげになるようなことはできるだけ避けると、睡眠圧は高まります。そうすれば質の良い睡眠が得られ、免疫のご褒美タイムを有意義に過ごせます。

    ※成長ホルモン
    成長を促進する作用や、カラダを健康な状態に保つ代謝作用を有するホルモン。脳の下垂体で作られ血液中に分泌される。

    ※ノンレム睡眠とレム睡眠
    ノンレム睡眠には深いものと浅いものがあり、深いものはカラダの回復に重要。レム睡眠は脳が活発に働き脳血流も上昇。

    ※コルチゾール
    別名「ストレスホルモン」。カラダのあらゆる機能の制御に不可欠で、免疫反応による炎症を抑える作用もある。

    【深いノンレム睡眠を得るための眠活習慣1】体内時計を乱さない。

    睡眠不足、不規則な生活は避けて、生活リズムを整えること。

    「睡眠時間をちゃんと確保していても、体内時計が乱れていると、ノンレム睡眠時にコルチゾールの分泌量が下がりきらず、免疫に最適な環境を用意できなくなります。体内時計を一定に保つには、朝起きた時に光をたっぷり浴びること。すると、睡眠と覚醒の調整物質“オレキシン”が増え、全身が活動モードに導かれます。日中はできるだけカラダを動かし、夜はリラックス状態を意識的に作るようにすること。さらに睡眠時は、遮光カーテンやアイマスクを活用して真っ暗にして、光を遮断しましょう」

    また、眠りに導く夜のホルモンで、コルチゾールの分泌量を抑制する作用もあるメラトニンの分泌を促すために、夕方ぐらいからできるだけ強い光を浴びないよう注意して。

    【深いノンレム睡眠を得るための眠活習慣2】昼寝をしない。

    グローバル企業が取り入れて話題を集めた“パワーナップ”。午後の仕事のパフォーマンスを上げるために行う昼寝のことで、科学的根拠も数多い。しかし、20分以上の昼寝をしてしまうとせっかく溜めた睡眠圧が下がるので、夜の睡眠時、1回目の深いノンレム睡眠に到達しにくくなる。

    「短時間の昼寝はストレスを軽減する効果も高いため、15~20分ですっきり起きられる人は日課にしてもOK。ただ、起きる自信がない人は、1杯程度のコーヒーを飲んでから昼寝を。それでもダメなら免疫機能を高めることを最優先して、昼寝をすっぱりやめましょう」

    【深いノンレム睡眠を得るための眠活習慣3】午後はカフェインを控える。

    コーヒー、紅茶、緑茶といった日常的に摂取する飲み物に多く含まれているカフェインは、午後になったらできるだけ飲まない方がいい。

    「朝のカフェインは、一度入った覚醒スイッチをオンのまま保つことができるため眠気覚ましにはピッタリ。しかし、数多くの研究をメタ解析した結果、13時以降のカフェイン摂取は睡眠の質に影響することが分かりました。エナジードリンクにもカフェインが多く含まれており、睡眠障害を招きかねないと、厚生労働省が警鐘を鳴らしています。ぐっすり眠るために飲みすぎや、摂取する時間には気を付けましょう」

    【深いノンレム睡眠を得るための眠活習慣4】就寝前のお酒はほどほどに。

    お酒も、カフェインほどではないが覚醒作用がある。

    「アルコールは眠くなる物質だと誤解している方も多いですが、実は二面性があり、入眠を助ける作用と、睡眠を浅くする作用があります。なのでお酒を飲むと気分がふわっとし、眠気をもよおします。でも、飲みすぎると、すぐに眠れたとしても、浅い眠りがダラダラと続くような質の良くない睡眠になり、深いノンレム睡眠まで到達できなくなるでしょう」

    また、過剰に摂取すると何度も目覚めてトイレに行ったりと、中途覚醒しやすくなり、毎日の睡眠リズムが乱れてしまうので適量に抑えること。

    PROFILE プロフィール

    林 悠先生

    東京大学大学院理学系研究科睡眠生理学研究室教授、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構客員教授。“なぜ人は眠るのか”をテーマに研究を行う。新刊に『ぐっすり眠り、スッキリ目覚める! 明日が変わる 睡眠の科学大全』(ナツメ社)。

    マンガ&イラスト・サヲリブラウン 取材、文・鈴木恵美

    anan2439号(2025年3月19日発売)より

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    No.2439掲載2025年03月19日発売

    カラダが整う、免疫ケア 2025

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