“NEWSに育ててもらった増田貴久が1人でどんな作品を作れるのか――。戦ってきます! スタッフ、バンド、ストリングス、ダンサーの皆さんと一緒に頑張ります”
東京ガーデンシアター公演にあたって、そんな意気込みコメントを寄せていた増田さん。ソロデビューアルバム「喜怒哀楽」を伴った初めてのソロコンサートは、自分自身の中にある歌、音楽をすべて詰め込んだという“喜怒哀楽”の世界を表現するステージに――。
増田さんが自身のラジオ番組で、「初めてのコンサートでは皆が何も持っていない状態でその状況だけを楽しんでもらいたい」と呼びかけていたことから、ペンライトなし、うちわなしの8000人のファンが集まった会場。1曲目はツアータイトルになっている『喜怒哀楽』。増田さんの“歌で勝負したい”という熱い想いが伝わる、アカペラ歌唱から始まった。

NEWSでは、長年衣裳を担当。今回もその才能をいかんなく発揮した。初のソロコンサートという新しい始まりを感じさせる白を基調とした衣裳で登場。後半では自らデザインしたグッズのTシャツを取り入れたスタイリングなど細部にわたって、こだわりが満載。アルバム『喜怒哀楽』はアートワークやMVの衣裳を私物でスタイリングするなど、増田さんのセンスをふんだんに発揮した、全編本人プロデュース作。ライブ「喜怒哀楽」でも、眩しいほどの白の照明を巧みに使うなど、アーティスト・増田貴久の視点が盛り込まれていた。
3曲目の「Venom」は、ミュージカル調の演出で披露。スクリーンに大きな瞳の映像が映し出されるとその中にいるのは、踊る増田さん。ダンサーを従え、迫力のダンスパフォーマンスを繰り広げた。2ブロックからはストリングスバンドから奏でられる弦楽の音色とともに、力強くまっすぐな増田さんの歌声が会場を包み込む。音楽の素晴らしさを届けることをNEWSでも個人としても大切にしている増田さんの想いがこもった贅沢な時間となった。
今回のコンサートは、MCなしで進行するのもNEWSのコンサートと違って新鮮なところ。曲と曲を繋ぐ本編の合間には、シーン1からシーン5のスペシャルな映像コーナーが。まず1つめの映像では冒頭で、「僕の喜怒哀楽の感情を引き出してくれる(コーナーが)今始まったんですね。お願いします。『まっすーの喜怒哀楽を引き出そう』一体、どんな感情が出てくるかな?」とタイトルコール。チャイナ帽をかぶった増田さんの目の前に大好物の餃子が置かれると「あれ? そういうこと? 量、すごいよ」と続々と運ばれてくる餃子に喜びの悲鳴をあげる。
「じゃあ、お食べください」とスタッフに餃子を勧められると、「なんかありそうな感じしかしないよ。普通に(食べて)いいんですか? ちょっと嫌な予感しますよね」と、戸惑いつつ、「じゃあ、いただきます。いや~、嬉しいな、餃子。うん、旨い!」と満足げな表情で美味しそうに食べる増田さん。「美味しい。結構、皮が厚めのね、モチモチ系の…」と食レポを始めると「どっち系が好きですか?」とスタッフさん。「皮薄いパリパリ系」と、まさかの好みとは真逆だったことが判明。「今、喜怒哀楽で言うと、どれですか?」という問いには、「“喜”。めっちゃ“喜”」とニッコリ。
じつは大量の餃子の中に1個だけ激辛餃子が混入。「その辺のやつとか美味しそうですね」とスタッフさんが激辛餃子に誘導すると「そういうこと? あれか、食リポというかね、喜びをもっと表現する食リポ…レポ? ルポ? やっぱ、しなきゃいけなかったってことですね。はい、すいません。じゃ、いただきます。(と、気を取り直し)餃子ね、好きなんですよ。デカくてね、プリプリのね、餃子」と餃子の美味しさを説明。しかし、「お、すごいわ。ちょっと待って!」と激辛餃子だったことに気づき、「やったな~、やったな~!」と悶絶しつつもぐっと飲み込む。「ギリギリ食べれるからさ。やるならやって!」と辛さが激辛というほどではないことを告白すると、会場に笑いが巻き起こった。
「喜怒哀楽で言うと…」というスタッフさんの確認に「中途半端!」とダメ出ししたものの、「これで“喜”を引き出せたってことですね」と、そんなに激辛ではない激辛餃子で喜怒哀楽の喜びを表現することに成功して次のブロックへ。バラエティに富んだセットリストでEvery Little Thingのカバー曲「恋文」では切ない歌声を届け、山下達郎のカバーをした「FOREVER MINE」では、スタンドマイクを前にしっとり優しい歌声を奏でる。
「キャンディ」では、ギタリストの隣で歌を披露しようと上手に移動。すると、上手側からはキャーと喜びの悲鳴が。それを聞いて、「近いよね。もうちょっと後ろに行こうか」といたずらっ子の表情で後ろに下がったり、「こんなことしながらね。1人で全部やるからね」と自ら椅子を持ってギタリストさんの近くに移動するなど、気さくな振る舞いが温かい。
「次の曲はね。せっかくなんでそっち側で」と今度はステージ下手側に移動する優しい増田さん。するとテゴマスのデビュー曲「ミソスープ」のイントロが…。サビ前にマイクを掲げて、「say」と叫んでファンと一緒に合唱したり、手拍子をしたり。ラストは大きな拍手が起こり、長年増田さんを支えるファンの想いが感じられる温かく一体感に包まれた空間に。
そして、映像のシーン2。「まっすーの喜怒哀楽を引き出そう。一体どんな感情が出てくるかな」と、次に増田さんがチャレンジしたのは、喜怒哀楽の哀。「いろいろと小道具が用意されてますね」と、感情を引き出すアイテムが増田さんの目の前にズラリ。「100秒で泣いてください」というお題に、「タマネギを切って、目ショボショボで泣く。目薬をさして、哀しいというか、涙を流すというコーナー?」と小道具を見て予測。犬のぬいぐるみを見つけ、「これはパトラッシュ的な…感情移入用のいにゅ(犬)」と甘噛みするお茶目な一幕も。
スタッフさんから「泣く自信はありますか?」と問われると「感情をコントロールしてきたんですよ。いろんな感情…それこそドラマとか舞台とかミュージカルもやらせてもらってきて、泣くシーンとかも結構ありましたからね。それにはやっぱ順序というかね、なんで泣いたのか、というのがあって泣いてるから。1分って言いました? 100秒?」と時間制限に戸惑うと、「100秒って何分?」。「中途半端だね。1分40秒で泣いてくださいって、急に言われてもね。それはもう(用意された小道具を)使うよ」とキッパリ言い切ると、「自信がなければ(使ってください)」と挑発するスタッフさん。「それ、ムカつくな。じゃあ実力でやってやりますよ。涙が出ればいいんでしょ」とスイッチが入った様子。スタートを切ってから「出てるね。出てるね」と言うものの、キラリと光る涙は見当たらず、100秒経過し……。
「え。出てるでしょ。見えたよね?」と涙したことを確認するも、「いや、カメラに写ってない」とスタッフさん。「え、それ何? 古いカメラ?」と、ボケる増田さんに笑う会場。「ちょっと1回犬のインサートとってもらっていいですか?」と犬にカメラさんが寄る横で、目薬をさしまくる姿が見切れており…。目薬の涙で号泣しつつ、「はい、いいっすよ。戻ってきて。いや、でもホント無事に涙を出すことができて。やっぱちょっと不安もあったんですよ。やっぱ100秒でこの泣けるのかなって。今、急に泣けって言われて泣けなかったら、どうしようなんて不安もあったんですけど、やっぱ結局、自分を信じて、仲間を信じて…」と、雰囲気たっぷりに遠くを見つめるお芝居をする増田さんをファンが笑顔で見つめていた。

18年ぶりに披露した「Pumpkin」ではカラフルな色彩が溢れる中、懐かしの曲を歌い、ファンから絶大の支持を持つナンバー「Remedy」では、とにかくカッコいい増田さんを魅せつけ、会場の視線をクギ付けにして、シーン3の映像コーナーへ。次のお題は、“楽”。スタッフさんが「これがどうしても思いつかなくて。引き出し方が分からない。一応、準備したんですけど、なんか違うかなっていう」と自信なさげにすると、「楽しいみたいなものが引き出せればいいってことですよね?物はあるんですよね?…やってみます」と増田さん。
頭にシイタケの被り物をして、ハイテンションに「1個しかないけど、シイタケ!」と叫ぶと、会場は「可愛い~」という声に包まれる。「そうなりますよね…」と滑ったことを予測していた増田さんは、「ハッピ着て、ハッピー!」と今度は祭りのハッピを着て、ダジャレを。「なるほど、なるほど。じゃ、もう1個良さそうなやつあった」とラクダのぬいぐるみを肩に乗せて、「ラクダが乗って、楽だってお前が乗ってるか~いっ」とノリ突っ込み。愛すべき“滑り芸”にファンは実に和む。するとスタッフさんは無表情で「増田さんって何してる時が一番楽しいですか」と気まずそうに質問。
「何してる時が一番楽しい? やっぱりライブ。…ライブ全部ね、生で、その日、その場所でしか生まれないものっていうのがそこにある。なんか特別だなって思うし、不思議だなって思うし、楽しいたけ(たのシイタケ)だなって思うし…」といい話の最後にダジャレで攻めると会場に爆笑が巻き起こった。しかし、スタッフさんは「やっぱ違いますよね。これ。違いましたよね」と楽しい感情を引っ張る方法が間違ったと反省!?
喜怒哀楽の“楽”の感情をサクレツさせたのは、増田さんがDJとなって音を操ったパート。「XXX」では拡声器を持ったり、マイクを持ったり、音楽を届けるアイテムを目まぐるしくチェンジしながら、ラップをハードに畳みかける。興奮冷めやらぬ中、喜怒哀楽の映像コーナーの4シーンに突入。すると、突然「おめでとうございます。お祝いのケーキをお持ちしました」とケーキを用意したスタッフさん。「え。嬉しい。俺に? ありがとうございます」と笑顔でお礼を言いつつ、「めちゃめちゃ手作り」とフワフワの泡のようなクリームケーキを見つめる増田さん。「“まっすーおめでとう”と書かせていただきました。どうですか。単独ライブ」と尋ねられた増田さんは、「いや、なんかドキドキしてますけど。嬉しい。嬉しいし、歓喜」。
「ケーキお渡ししてもいいですか。両手で持ってください」となぜか腕に水のペットボトルを4本釣り下げられたうえで、ケーキを持つことに。「おめでとうございます。重いですか?」と問われ、「結構重い。でも、嬉しいよ。いいですね。ありがとうございます」と疑問に思いつつケーキを持つと、スタッフさんがペットボトルが吊り下げられた紐を切り落とし、フワフワの泡ケーキが増田さんの顔にベッタリヒット。特製泡ケーキも“まっすー”の文字が読めない状態に。
増田さんが面白く調理されたことにファンはニコニコしつつ、頑張った増田さんを褒めるような拍手が起こり、「やったな! 今、すごい怒りの感情…あんま感じたことのない怒りの感情」とテーマは“怒”だったことが判明。「まっすーおめでとうと書かせていただきました」とスタッフさんが改めて言うとケーキに残された文字を読み上げ、「ないよ、もう。誰かお客さんの中で“ま”を見つけた方いらっしゃいませんか?」とボケてから「昨日、今日会ったぐらいなやっぱ関係で、やっぱこう仲良くなれて本当によかったなと思うし。嬉しかったよ。一緒に仲良くなれたというか。やっぱ一緒になんか作品を作ってく関係として、ひとつになれたなって思ってて」とスタッフさんの顔面にケーキをお返し。
すると泡だらけになったスタッフさんが「ちょっと許したくない」と不満げ。「そちらが一番怒る? そちらが一番怒る。え、俺より怒ってるの?」と自分自身だけでなく、スタッフさんの“怒”の感情を引き出すことにも大成功!? 「怒って帰るのが一番ヤダ。こちらとして、ごめん、ごめんって」と優しく謝る増田さんに「生まれて初めてやりました」とスタッフさん。「俺も。俺も」と初めての体験を共有できたと共感し合い、一件落着してラストスパートへ。

加藤シゲアキさんが作詞を担当した「おやすみなさい」を情感たっぷりに歌い上げたあとは、スクリーンに「物語」の歌詞が映し出され、増田さんの今の想いが伝わってくる。いま目に映る景色に辿り着けた理由を自分なりに考えたと心を込めてありったけの情熱を込めて歌う。人知れずに流した涙の数のおかげで今があり、涙も糧となっていたと前を向く、その歌声にじっと聴き入る観客たち。最後、両手をあげて、「ありがとう」とニッコリ微笑む。ラジオで、「ソロをやるのは、NEWSのため」と語っていた増田さん。唯一無二の自分らしい物語を紡ぎ始めたことは、さらにNEWSを輝かせるだろう。増田さんを称えるかのような盛大な拍手が送られソロステージの幕が閉じた。