映画、ドラマ、演劇と出演作が常に高いクオリティを保ち、話題を呼んできた高橋一生さん。新たに挑んでいるのは演劇界を牽引する野田秀樹さんの最新作『フェイクスピア』。初タッグを組む野田さんとの創作活動、そして、いま高橋さんが考える「演じるということ」について知りたく、稽古場を訪れた。
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膨大な言葉と美しく抽象性の高い演出で、観客の想像力を最大限に刺激。演劇の面白さを提供し、その世界の第一線を走り続ける演劇人、野田秀樹さん。その野田さんが率いるNODA・MAPの最新作『フェイクスピア』に高橋一生さんが出演中。かつて野田さんのワークショップに参加したこともあるというが、意外にも出演は初。さぞや強い意気込みが…と思いきや、静かな口調で「思ってもみなかったので、光栄なことだなと思いました」と淡々と。そして「基本的に僕は、舞台でも映像でも、自分で“やりたい”ということを持たないようにしているんです」と続けた。

「恵まれていると思いますけれど、お芝居として自分がやってみたいことは、この5年ほどですでにやれてしまっているんです。だからといって熱意や情熱がなくなったという意味ではなくて“離見の見”といいますか…。お芝居でもそういうアプローチが、少なくともいまの自分には心地いいんです」

“離見の見”とは、演じ手が自己の視点から離れて自分の演技を客観的に見つめること。そんな境地にある高橋さんから見たNODA・MAPの稽古場とは?

「とても純度が高いなかでお芝居を作っていっている感覚があります。ワークショップに参加させていただいていた時から感じていたんですが、野田さんは、ある種の変なプライドを持たない方で。若い方たちの意見にも『それもいいよね』と耳を傾けられるので、誰でも意見しやすい雰囲気が稽古場にあるんです。一緒に劇団をやっている青年みたいに思えて、昔、同期とエチュード(即興の芝居)を作っていた時のような、しばらくぶりの感覚を味わっています。ただ、あまりにもスムーズに進んでしまうものだから、作っていくことに没頭しすぎて視野が狭くなってしまうかもしれない。観ている側の人たちの存在を忘れないよう、少しだけ意識してみようといま思っているところです」

自身のことを「人の顔色を窺うのは得意なので(笑)」と皮肉めいた言葉で語る。だからこそ「制作側から“一生さんのここを期待しています”と言われることは、なるべく聞かないようにしている」とも。それを意識してしまえば「作品世界にいろんな雑味が入ってしまう気がして」。これまでもきっとそうやって、つねに主観と客観を行き来しながら作品や役をとらえ、表現を精査してきたに違いない。今回の作品は、“フェイク+シェイクスピア”というタイトルから“偽物”と“演劇”がテーマだと推察される。俳優という仕事は、まさに作り物の嘘を“まこと”にしていく仕事だけれど…。

「僕らは“まこと”にするつもりは最初からありません。演技だとわかってやっていますから。どれだけ熱量を持ってやっていたとしても、僕らはどこか引きで見ている部分があって、今日のお客さんは緊張しているなと思うと、それをほぐすように少し匙加減を変えてみたりするわけで。目の前の嘘をまことにするかは、僕はお客さま次第だと思っています。“あの俳優が演じている”と思って観ていたとしたら、それはやっぱり嘘でしかないわけですから」

それでも高橋さんの演技には、どこか嘘であることを忘れさせてくれる“まことしやか”がある。

「もしあるとしたら、それは観客の方々を騙すためではなく、自分を騙すためだと思います。舞台でも映像でも、自分を騙さないと演技なんてできません、恥ずかしくて(笑)。自分を騙すには、自分の芝居を自分がちゃんと納得できるまで腑に落ちるものにしないといけない。そうなれば、お客さまにもきっと嘘がまことしやかに見えてくるだろうと信じています」

野田作品の面白さは、ひとつの言葉やひとつのセリフが視点を変えることでさまざまな意味に解釈でき、ひとつの物語からあらゆる方向へと想像力が豊かに喚起させられるところ。

「ご自身が書かれたものですから、野田さんなりの解釈はあると思いますが、僕らにもそれは明かさない。あえて添え木を外して、俳優の自由な解釈に委ねている。そこが心地いいなと思うんです。もちろん演じる側は自分なりの最適解を持っていないといけないとは思いますが、観る側はもっと自由でいいと思っています。なんか面白かったとか、なんか悲しかったとか、泣けちゃったとか。へんに分析したりすることは必要なくて、感覚的に楽しんでいただけたら、俳優として幸福だなと思います」

たかはし・いっせい 1980年12月9日生まれ。東京都出身。近作にドラマ『岸辺露伴は動かない』や『天国と地獄 ~サイコな2人~』などがある。6月4日公開予定の映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』に桂小五郎役で出演。

ジャケット¥94,000 シャツ¥41,000 パンツ¥56,000 靴¥66,000(以上ルメール/スクワット/ルメール TEL:03・6384・0237)

NODA・MAP 第24回公演『フェイクスピア』
演劇というエンターテインメントを通して、世の中の矛盾や歪みに警鐘を鳴らし続けてきた野田秀樹さん。新作は、霊魂を自らの身体に憑依させるイタコが登場する恐山を舞台に繰り広げられる。7月11日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて上演中。7月15日(木)~25日(日)には大阪公演あり。
作・演出/野田秀樹 出演/高橋一生、川平慈英、伊原剛志、前田敦子、村岡希美、白石加代子、野田秀樹、橋爪功ほか
S席1万2000円ほか 問NODA・MAP▲03・6802・6681
https://www.nodamap.com/fakespeare/

※『anan』2021年6月2日号より。写真・森山将人(TRIVAL) スタイリスト・秋山貴紀 ヘア&メイク・田中真維(マービィ) 取材、文・望月リサ

(by anan編集部)

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