性別関係なく、みんなで課題解決を目指す社会になれば。
自分をケアできるのは、ほかでもない自分。
和田彩花さんが自分の体や生理のことを真剣に考え始めたのは、大学時代に興味を持ったフェミニズムがきっかけ。「フェムテック」や「フェムケア」という言葉が浸透するずっと前のこと。
「フェミニズムの歴史や女性の権利についての本を辿ると、性や生理の話がごく自然に扱われていて。その語り口に出合えたのはとても大きかったですね。それまでは、生理のことを話すなんてありえない! と思っていたけど、まずその感情を改めることが、私のフェムケアの一歩だったと思います」
10代の頃から悩まされた生理痛は、アイドルグループを卒業後にピルを服用するようになって改善。気持ちの落ち込みも、薬を頼ることで嘘のようにラクになったそう。
「メンタルが不安定な時期は、涙が止まらなかったり眠れなかったりしたこともありましたが、以前は向き合う余裕がなく、やり過ごしていました。でも周りに勧められて婦人科で相談したら、先生が『お守り代わりに』と、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)という漢方を出してくださって。これが私にはよく効き、落ち着いて眠れるように。相談しなければ、我慢し続けていたはず。情報や医療にアクセスする大切さを、身をもって知りました」
好きなアートを学ぶために2022年から約1年半、フランスに留学した和田さん。自ら婦人科を受診してピルを処方してもらったり、生理用品を調達したりするなかで、日仏のフェムケアの違いを感じる場面も多かったという。
「大きく差を感じたのは、ピルの身近さです。種類にもよりますが、日本では保険適用だと1か月分が1000円くらい、自由診療なら3000円くらいですが、フランスは保険ありで1ユーロ弱、当時で150円くらいでした。しかも25歳以下の女性はピルや避妊リングが無料。共和国のフランスには、自由と平等の精神が息づいていると実感しました。日本でもピルがもっと手に入りやすくなって、生理のツラさを解消する選択肢として広まるといいなと思います」
デリケートゾーン専用のソープや月経カップが、薬局やスーパーに並んでいることも発見だった。
「フランスではビオが根付いているのでオーガニック製品も多く、安心して使えます。デリケートゾーンのソープはたくさん買ってきて、今も愛用しています」
さらに留学中、フェミニズムのデモに参加して「フランス流のあり方」に刺激を受けた。
「男性や家族連れ、カップルも参加して、お祭り騒ぎで明るい雰囲気だったのが印象的で。フェムケアに関わることもジェンダーの問題も、性別関係なく、みんなで考えて変えていくのが理想ですよね。その道を私も探っていけたらいいなと、勇気をもらいました」
新しい情報やグッズを積極的に取り入れるなど、以前より心と体に向き合う意識を持てるようになったという和田さん。
「自分を一番にケアできるのは自分、そう信じること。そのうえで、どんな時にどんなケアが必要か、見極めることが大切なのかなと。自分の状況とやるべきことを“見える化”するために、『ため息が多くなったら○○する』のように、対策を作っておくのもいいかもしれない。いろいろ試して、よかった方法はシェアしたいです」
わだ・あやか 1994年生まれ、群馬県出身。アイドルグループ「アンジュルム」の初代リーダーとして活躍し、2019年に卒業。アイドル活動を続ける傍ら、美術やフェミニズムにも関心を寄せ、発信している。
※『anan』2024年10月30日号より。写真・小笠原真紀 取材、文・熊坂麻美
(by anan編集部)