大河ドラマ『光る君へ』で藤原道長に! 柄本佑「道長さんを色っぽいと言ってもらえるのは嬉しい」

2024.3.15
うつむく、視線を送る、こちらを振り返る。作品の中で見せる些細な動き一つで、私たちの心をかき乱す、俳優の柄本佑さん。いま日本で一番色っぽいと言われている彼に、色気と役者の関係について、聞きました。

スタッフと力を結集して初めて、その役の色気が出せる。

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現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』で、吉高由里子さん演じる主人公のまひろ(紫式部)の心を毎週揺さぶっている、柄本佑さん扮する藤原道長。まだ若く、一見ふわふわしているように見える年頃の道長が、思いがこもった恋文をしたため、熱い眼差しでまひろを見つめ、さらに兄・道兼などに対して感情を爆発させる…。変化し、そのたびに新たな魅力を見せる道長から、まひろだけでなく、私たちも目が離せない。

「道長さんを色っぽいと言ってもらえるのは嬉しいです。見ている方に、そんなふうに受け取ってもらえているんだと思うと、いま制作陣が向かっている方向が間違っていないという確信にも繋がる。明日からの撮影に気合が入ります。ありがとうございます(笑)」

そう言いながら、にっこりと笑う柄本さん。でも同時に、役柄の色気は自分一人で作り出せるものではない、とも言います。

「役を演(や)る上で、“その役柄が放つ色っぽさ”について考えていないわけではないです。でも実は、大石静さんの脚本のト書き部分には、仕草だったりなんだったり、わりと具体的なことが書かれているんですよね。なので、僕がゼロから“道長の色気”について考える必要はそんなにはありません。役者として僕がやるべきことは、脚本という二次元に書かれたものをなるべく邪魔せずに、映像という三次元に上げるか、ということくらいなんです。あとは衣装やメイク、照明、撮影、他にもさまざまな技術を総動員して“役柄の色気”を醸し出していく。役者は、そういうもののほんの一部なんです。だからさっき“色っぽいと言ってもらえるのは嬉しい”と言ったのは、チームとしての仕事を褒めてもらえたわけだから、そこが本当に嬉しい、という気持ちなんです」

そんな柄本さんに色っぽいと思う人を挙げてもらうと、まず挙がったのがコメディアンの志村けんさん。そして渥美清さん、小林桂樹さん、三木のり平さん、森繁久彌さん…と、昭和の役者陣がズラリ。また意外なところでは、吉本新喜劇の座長である芸人・すっちーさんの名前も!!

「みなさんに共通しているのは、クレバーであり、そして自分自身に対してシニカルな眼差しを持っていること。色気って、僕は“普通であること”と深く関係がある気がしていて。役柄を演じたり、芸人として舞台に立ったりする“自分”と、普通の状態の“自分”の間に距離があればあるほど、その人に奥行きが出ると思うんですよ。普通でいることは、とても大事だと思う。普通の自分がいて、その上でいろんなことに苦悩したりあがくから、色気が出る気がするんですよね…。でもこれ、完全に好みの話ですよね。僕の好きな色気はそういうこと(笑)」

笑いながら「色気って難しい…」とつぶやき、ときにじっと黙りつつ思考を巡らせる柄本さん。話をするうち「そういえば…」と、あるエピソードを聞かせてくれた。

「僕は高校生のときに映画の世界に足を踏み入れたわけですが、現場が楽しくて、学校がつまんなくなっちゃったんですよ。そのときに母に、“いま楽しいのはいいけれど、そのうちきっと、現場がしんどくなるときがくる。だから学校生活を大事にしなさい”と言われたんです。時は経ち、大人になってひとり暮らしをはじめた頃に学校時代の同級生に会ったら、彼はスーツで会社に行っているのに、自分は撮影がない時期だったこともあり、浮足立ってたんですよね。そのときにふと、日常をきちんと送ることこそが自分と社会を繋ぎ留めてくれ、それがあって初めて役者という仕事ができる、ということが理解できた。母が言っていたのは、こういうことだったんだな、と。以来、ちゃんと着替えるとか、部屋を汚くしないとか、シンクに食器を溜めないとか(笑)、小さなところから地盤を作り、それが今日に繋がっている気がします。芝居の上手い下手よりも、生活者であることのほうが、役者には大事なんだと思います」

道長が生きていた平安時代の色っぽい人といえば、字が上手な人一択。簡単に男女が会えるわけではない中、彼らは文(ふみ)を送ることで気持ちを伝え、また綴られた文字や紙にたきしめられた香りから相手を想像し、恋心を膨らませた。

「文のやりとりを経て会えたとしても最初は御簾(みす)越し、その向こうで対面できてもほぼ暗闇で、ほとんど見えなかったらしいですから、情報量が圧倒的に少ないんですよね。でもだからこそ、ある意味豊かで広がりがある時代だったような気もしますね。ちなみに道長さんはあまり達筆ではなかったので、そこまでモテたわけではなかったみたい。でも僕は、物語が進むにつれてもっと上手にならなくてはいけないので、頑張って練習しようと思っています(笑)」

えもと・たすく 東京都出身。2003年、映画『美しい夏キリシマ』でデビュー。映画『きみの鳥はうたえる』『素敵なダイナマイトスキャンダル』などで第73回毎日映画コンクール男優主演賞、第92回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞ほかを受賞。近作にドラマ『空白を満たしなさい』や映画『ハケンアニメ!』『シン・仮面ライダー』など。

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※『anan』2024年3月20日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・林 道雄 ヘア&メイク・AMANO

(by anan編集部)