岡崎体育「今年いちばん響いた曲」 優里のカバーアルバムで見つけた爆風スランプの名曲に感銘

2023.12.2
岡崎体育の連載「体育ですけど、オンガクです」。今回のテーマは「今年いちばん響いた曲」です。
Entame

先日、優里さんが1980年代の邦楽、全10曲をカバーしたカバーアルバム『詩‐80’s』をリリースされたというニュースを読みました。一体、どんな曲をカバーされたのだろう? と興味が湧き、曲目リストを調べてみたのですが、その中の一曲に「大きな玉ねぎの下で」がありました。この曲が爆風スランプさんの名曲のひとつであることは知っていましたが、そういえば曲をきちんと聴いたことがない。せっかくだから原曲に触れてみようと聴いてみたんです。そうしたら…この曲、めちゃくちゃいい! なにこれ! と響きまくりました。今年、いちばん響いた曲かもしれません。

この曲の主人公は、遠く離れたペンフレンドのために貯金箱をこわして一枚のチケットを送ります。“大きな玉ねぎ”とは武道館の屋根にある飾り“擬宝珠”のこと。主人公は、武道館のライブでずっと会いたかった、会えなかったペンフレンドとついに対面できると心をワクワクとさせています。…でも、彼女は来なかった。アンコールの拍手を背に主人公は会場をあとにします。そのあとの、ひとりさみしく歩く風景の描写、心情の切なさが実にしみじみと見事です。武道館の象徴である擬宝珠を“澄んだ空に光る玉ねぎ”とかわいらしく表現することで、悲しさをどこか柔らかくしているところもとても粋ですし、素敵だなと思いました。

歌詞も素晴らしいのですが、ストーリー展開に合わせて演奏のアレンジも変化させているのではないか、とも感じました。曲の途中にギターソロがあるのですが、その音はまるで歌詞の主人公が聴いているようなギターソロなんです。リバーブが効いたギターの音はこの曲の中でちょっと異質です。でもそれは、主人公がいる物語中の武道館で行われているであろう、ミュージシャンのライブの中の音なのだと思うとハッとさせられます。彼女の席は空席のまま、彼はひとりライブを観ながらそのミュージシャンのギターを聴いている…。そんな切ないシーンが頭に浮かび、とてもグッときました。これはもちろん僕の勝手な考察かもしれません。でも、そこまで想像させてくれるめちゃくちゃ泣いているいいギターソロなんです。この曲をあらためて深く聴いてみて、爆風スランプさんの神髄を感じましたし、なんで俺がカバーしてないねん! と思いました。優里さん、教えてくれてありがとう。

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※『anan』2023年12月6日号より。写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・大矢佑奈(KIND) 文・梅原加奈

(by anan編集部)