三石琴乃、「美少女戦士セーラームーン」最終章で再確認した“月野うさぎの原動力”とは?

2023.6.9
テレビシリーズ放送開始30周年を迎えた「美少女戦士セーラームーン」。2014年より紡がれてきた新アニメシリーズが、劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」で最終章を迎える。主人公・月野うさぎと共に駆け抜けてきた三石琴乃さんにとっても、制作に関わったすべての人にとっても、本作は大きな意味を持つ作品となった。

三石琴乃 エターナルセーラームーン/月野うさぎ

いつも、いつまでも、共にある。三石琴乃さんと「美少女戦士セーラームーン」の30年。

Entame

「’90年代に放送されていたテレビシリーズが終わった後、月野うさぎはいったん、自分の中にしまっていたんですよね。その後、長いブランクを経て『Crystalシリーズ』として復活することになり、本当に感謝しながら取り組ませていただきました。『Crystalシリーズ』が始まった頃、スタッフさんから『セーラームーンと関わりたくてこの会社に入ったんです!』と言われたり、オーディションでも感激と緊張で涙ぐんでしまう声優さんがいたり、みなさんの愛の深さを感じました。こんなにも『セーラームーン』を大事に想ってくれていたんだというのが伝わって、やってよかったなと思うことだらけでした」

本作では、かつてないほどの強敵・セーラーギャラクシアと戦うことになる月野うさぎ。どんな時でもけっして諦めないうさぎだけれど、一番近くで彼女を見てきた三石さんは「強い人ではない」と語る。

「強くはないから、つらいことがあったら泣いてしまうし、時には気絶してしまうほど衝撃を受けることもあるんです。でも、そのたびに周りの人が彼女を守って、愛を注いでくれるんですよね。だからうさぎちゃんも、自分が愛する人のためにがんばれる。実は本作でうさぎちゃんは、もう戦えないって音を上げる場面があるんですよ。それは、自分の大事な人がもう戻らないのでは、と思ってしまったから。その時、うさぎちゃんの原動力ってやっぱり身近な人を大切に想う気持ちなんだな、と再確認しました。うさぎちゃんにとって大事なものは愛であり、身近にいる大切な人たち。そういう人たちを守りたいという想いが彼女を奮い立たせているんです。でもそれって誰しも同じだと思うんですよね。身近な人を愛することからすべては始まるのかなって。そういうちっちゃい愛がいっぱいあれば、世界は平和で、未来は明るいと思うんですけど、実際にはなかなかうまくはいかないものですよね。だから映画でエネルギーをもらって、現実でがんばる力になれれば、と思います」

物語中、うさぎはセーラーギャラクシアとの戦い以外にも、未来へつながる重要な決断をすることになるのだが…。

「いろんなものを全部“無”にしたとしても、またどこかで未来は始まる。そうするといいことも悪いことも、善も悪もやはり生まれる。光があれば影がある。そのどちらも受け入れて、その中で生きていく。うさぎちゃんの選択はそういうことなんですよね。anan読者のみなさんもきっと、いいことも悪いことも、つらいこともずるいことも経験して、いろんなことがちょっとずつわかってきている世代だと思うんですけど、それが人間の生きる世界なのかなって。その中で自分はどういうふうに生きていくのか、どんな道を選ぶのか、その選択次第で未来は変わっていくので、自分の生きたい未来を描いて、そこに向かって少しずつ進んでいけたらいいのかもしれないですね」

長い歴史の中で、日本だけでなく海外でもたくさんのファンに愛されてきた「美少女戦士セーラームーン」。三石さんにとっては、「声優・三石琴乃を語る上では絶対に欠かせない作品」だと笑顔で答えてくれた。

「私にとってとても大事な作品であり、そして大事な役ですが、ついに最終章を迎えることになりました。『Crystalシリーズ』は配信から始まって、映画になって、少しずつうさぎちゃんと接する機会も少なくなってきました。でもそれ以上に、共演者のみなさんと会えなくなることがさみしくて。今回もコロナの影響でみなさんと一緒にアフレコすることはできなかったのですが、完成した作品ではみんなが一堂に会していて、重厚なお話になったと思います。最終章だからと特にがんばったというところはないんですけど、うさぎちゃんが立派に戦ってくれたので、私も一緒に戦って、映画にはたくさんの想いを込めました。観ていただくだけでも本当にうれしいので、ぜひ映画館に足を運んで、作品をご覧になってください」

劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」
描かれるのはシリーズ最終章〈シャドウ・ギャラクティカ〉編。平穏が訪れたはずの月野うさぎたちの世界に、宇宙全体をも巻き込む最大の危機が押し寄せる。究極の選択を迫られるうさぎは、最後に何を選ぶのか。原作・総監修/武内直子 監督/髙橋知也 脚本/筆安一幸 キャラクターデザイン/只野和子 キャスト/三石琴乃、林原めぐみ、水樹奈々、井上麻里奈、早見沙織、佐倉綾音ほか 《前編》6月9日、《後編》6月30日全国公開。

つきの・うさぎ 普段はドジで泣き虫な高校生・月野うさぎだが、実は愛と正義のセーラー服美少女戦士・エターナルセーラームーンとして地球を守っている。月の王国のプリンセスであり、幻の銀水晶の力で浄化能力を持つ。

みついし・ことの 1989年に声優デビューし、’92年『美少女戦士セーラームーン』月野うさぎ役で一躍、有名に。『新世紀エヴァンゲリオン』葛城ミサト役、『ONE PIECE』ボア・ハンコック役など出演作多数。

ワンピース¥8,980(Wild Lily TEL:03・3461・4887)

※『anan』2023年6月14日号より。写真・魵澤和之(まきうらオフィス) スタイリスト・ナミキアキ ヘア&メイク・RIE(TOKYO LOGIC) 取材、文・尹 秀姫 撮影協力・バックグラウンズ ファクトリー

(by anan編集部)