黒島結菜「セリフを何度も何度も口に出すうち、役の人物像が見えてくる」 6年ぶりに舞台出演

2023.6.4
電車や喫茶店でふいに隣の会話が聞こえ、耳を傾けているうちに、ついクスッとしてしまったり、共感してしまったことはないだろうか。岩松了さんの舞台を観ていると、そんな見知らぬ誰かの会話を盗み聞きしているような感覚になる。説明的なセリフはないし、何か大きな事件が起きたりもしない。けれど、淡々とした会話劇に目を凝らすと、登場人物たちの関係性や各々の思惑がじわじわ透けてきて、水面下でのドラマに釘付けにされていく。6年前、舞台『少女ミウ』でその岩松作品を経験した黒島結菜さんは、当時を「すごく楽しかった」と振り返る。
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「岩松さんの稽古は厳しいと聞いていたので最初はすごく緊張していました。確かに、同じシーンを何度も何度も繰り返して稽古するので厳しいと言えばそうですけど、私にはそれが合っていたんですよね。岩松さんって、役について説明されたりはしないけれど、演出の中で『このセリフはこう言ってほしい』と結構おっしゃるんです。その通りにセリフを何度も何度も口に出しているうちに気持ちが追いつくのか、役の人物像が見えてくる気がして、すごく面白かったんです」

そこから、独特の世界観のとりこになったのか、以降の岩松さんの舞台はほとんど観ているのだとも。

「なかには解釈するのが難しい作品もあったけれど、そもそもそこで正解を出すことを求められていない気がするんです。観ながらこの登場人物が好きだったとか、このシーンに共感できたとか、何か面白さを見つけられたらいいんじゃないかって」

今回6年ぶりに出演する舞台『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』は、黒島さん演じるイズミと井之脇海さん演じるアキオの兄妹が、かつての父の愛人(松雪泰子)と対峙することで動き出す物語。

「イズミは話す相手によって全然態度が変わる人なんです。岩松さんからは『芝居っぽく芝居して』と言われて、芝居がかった大袈裟な演技をしているので、全部が嘘っぽくも感じて、私自身まだイズミの本性がわからないまま。でも、相対する人によって見せる顔が違うって誰にでもあるし、普段も自分を演じている、人間らしいといえばすごく人間らしい役なのかもしれないです。ただ前回の稽古場は、どこか緊張感が漂っていてストイックな雰囲気があったんですけれど、今回は全員が楽しんで演じている感じがします。それを見ている岩松さんもずっとニコニコしていて、私はそんな岩松さんの顔ばっかり見ちゃっています(笑)」

この6年、連続テレビ小説『ちむどんどん』をはじめ映像作品で活躍の場を広げてきたが、「舞台も定期的にやっていきたい」と話す。

「毎日同じ場面、同じセリフでも、相手の芝居で感じ方が少し違って、それが後々まで影響する。毎回新鮮な気持ちが失われないんです」

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M&Oplaysプロデュース『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』 肩を寄せ合って生きてきた兄妹・イズミ(黒島)とアキオ(井之脇)。ふたりは、かつて家庭を崩壊させた父親の愛人(松雪)と出会い、徐々に打ち解けてゆくが…。6月3日(土)~25日(日) 下北沢・本多劇場 作・演出/岩松了 出演/黒島結菜、井之脇海、青木柚、櫻井健人、岩松了、松雪泰子 全席指定8000円ほか M&Oplays TEL:03・6427・9486 https://mo-plays.com/kamomeyo 富山、大阪、新潟公演あり。

くろしま・ゆいな 1997年3月15日生まれ、沖縄県出身。初舞台は2015年の『虹とマーブル』で、本作が3作目の舞台出演となる。最近のおもな出演作に、ドラマ『クロサギ』、映画『鋼の錬金術師 完結編』がある。

ワンピース¥38,500(フィル ザ ビル/フィル ザ ビル マーカンタイル 青山 TEL:03・6450・3331) リング(左手中指)¥22,000 3連リング(左人差し指)¥28,600 リング(右手中指)¥23,100(以上エンド/ギャラリー・オブ・オーセンティック TEL:03・5808・7515) その他はスタイリスト私物

※『anan』2023年6月7日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・伊藤省吾(sitor) ヘア&メイク・加藤 恵 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)