back number・清水「号泣しながら歌詞を書きました」 ヒット曲「水平線」誕生秘話

2023.1.20
撮影中もとても賑やかで楽しそうなback numberの3人。昨年も精力的な活動を続け、今年は5大ドームツアーも控えて更なる飛躍の一年になりそうな彼らに、まずは原点を振り返ってもらいながらお話を伺った。
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――インディーズで初めてCDをリリースしたのは2009年のことでしたが、その頃を振り返るとどんなことを思い出しますか。

写真左・小島和也(以下、小島):インディーズ時代に、事務所の社長にめちゃくちゃ怒られたライブがありました。

写真中・清水依与吏(以下、清水):3バンドが出る無料のイベントだったんですけど、「こんなライブ、お金を貰ったら絶対に人に見せられないぞ。お前らバカか!」って怒られましたね。MCで、すげえくだらない話をした後に平気でバラードを演奏したりするから、お客さんがみんな入り込めなかったりとか。そんなこと今考えればわかるんですけど、気づくのに10年かかりました。もうとにかく「お前らバカか!」が今でも忘れられないですね(笑)。

――ライブハウスで公演後にスタッフに怒られていた、そんな3人が今や東京ドーム公演を成功させ、NHKの朝ドラ主題歌を担当するほどの大ブレイクを果たしたわけですから感慨深いですね。

清水:こんなバンドになるって本当に誰も思ってなかったって言われますね。ライブハウスの店長からも「お前ら売れちゃダメな人間だからな」って言われたり。今でこそプロ意識も持てるようになりましたけど、本当に波が激しくて、ダメな時はダメなバンド。それがわかってるから、油断はしないですね。基本的に自分たちができるやつだなんて思ってないから。

――特にターニングポイントになったのは「ヒロイン」や「クリスマスソング」といったシングル曲がヒットした2015年あたりですか。

清水:そうですね。その前からじわじわお客さんが増えてきてくれて、ありがたいなと思っていたんですけど。その2曲くらいから明らかに流れが変わりました。アルバム『シャンデリア』を作った当時から「ポップがやりたい」と言ってたはずなのに、迷ってるところもあったりして、たくさんの方に聴いてもらったアルバムにはなりましたけど、すごく歪なバランスの作品ですね。あの頃は明らかに自分たちがふわふわしてたと思います。

コロナ禍じゃなかったら「水平線」は生まれてない。

――back numberはバンドとしてこうありたいという理想よりも、楽曲至上主義を貫いてきたそうですが、その道のりにはきっと、方向性の選択を迫られるような場面も多かったのではないかと思います。メンバーでその都度、話をしてきたんですか。

小島:3人だけで飲みに行くこともありますし、ライブ後の反省会もします。よくあるロックバンドのイメージでメンバーの楽屋が別とか、ツアー中に話をしないとか、あるじゃないですか(笑)。でもback numberは結構ずっと一緒にいるし、よく話します。

清水:俺が移動中の車の中で急に「では次のテーマを発表します!」みたいなこともあるね(笑)。

写真右・栗原寿(以下、栗原):突然テーマを発表されて、僕ら2人はそれぞれに持ち帰るじゃないですか。でも次のスタジオの時に、依与吏さんに「それはもういいや!」とか言われて、既に違うことを考えてることもあります(笑)。

――そんなふうに和気藹々としたコミュニケーションをとりながら、活動されているんですね。7枚目のオリジナルアルバム『ユーモア』は前作から約4年ぶりのリリースということもあって「アイラブユー」や「水平線」などヒット曲も多く収録されています。ご自身たちにとってどんな作品ですか。

清水:今回のアルバムは時代が変化する中での偶然の産物だと思ってるんです。だってコロナ禍にならなかったら「水平線」なんて絶対に存在してないので。それも事務所の社長が「ここはback numberの直球のバラードで、歌うべきことを歌った方がいいと思う」と言ってくれて。一回書いてみたけど全然アレンジも上手くいかなくて。そこでアレンジャーの島田(昌典)さんに聴いてもらって、島田さんが「なんか違う」ってなったら俺は絶対この曲やらないです、って言って。島田さんがアレンジしてくれた曲のデモが送られてきた時、俺は号泣しながら歌詞を書きました。それがなかったら「水平線」は生まれてないですし、今までもこのバンドはそういうことが多かったんですよ、流動的で我がないというか。でもそれが俺ららしさだし、今作はまさにそれが形になったなと思います。

――周りのいろんな人にヒントを得ながら曲を作っていったということですが。そこで「水平線」の歌詞を書き上げるのがすごいですね。〈歓声と拍手の中に/誰かの悲鳴が隠れている〉という視点を持てるのはどうしてなんでしょう。

清水:スポットライトが当たっている時に自分がどんなふうに光っているかを俯瞰できる人もいると思うんですけど、自分はそうじゃないんですよ。人前で歌うのは緊張するし、俺はステージに上がるような人間じゃないのになって思うこともある。スポーツでもスポットライトが照らされる瞬間ってあるじゃないですか、サッカーでゴールを決めた瞬間、野球でホームランを決めた瞬間。でも音楽ってそういうのがないんですよ、別にランキングで何位になってもハイタッチとかしないし。だから日常生活では曲が何人に聴かれていようと関係なく、髪の毛もボサボサのまま。そういう自分がなるべく嘘がないように歌うから、説教くさくならずに聴いてもらえるのかもしれないですね。

7thアルバム『ユーモア』。前作『MAGIC』から約4年ぶり、全12曲収録。【初回限定盤Aライブ映像付き(CD+2DVD)】¥7,480 【同(CD+BD)】¥8,580 【初回限定盤B弾き語りCD付き(2CD+DVD)】¥7,480 【同(2CD+BD)】¥8,580 【通常盤(CD)】¥3,300(ユニバーサルミュージック)

バックナンバー 清水依与吏(中・Vocal&Guitar)、小島和也(左・Bass)、栗原寿(右・Drums)からなるスリーピース・バンド。2009年2月、1stミニアルバム『逃した魚』をリリース。’11年にシングル『はなびら』でメジャデビュー。心に沁みる歌詞と表現力で「クリスマスソング」や「ハッピーエンド」などヒット曲を多数生み出している。

※『anan』2023年1月25日号より。写真・玉村敬太 スタイリスト・森山優花 ヘア&メイク・高城裕子 インタビュー、文・上野三樹

(by anan編集部)