この時代の“豊かさ”に必要な「人との繋がり」を作り直すこと。
誰かと何かを分け合ったり、共有したり。そんなシェアライフが、いま新たな広がりを見せている。
「これまでもカーシェアリングなど、主にモノのシェアはありましたが、いまは場所や時間、特技など、カテゴリーが多様化。しかも、ユーザーとしてだけではなく、自分が提供する側にも気軽になれるツールが増えています」(マーケティングライター・牛窪恵さん)
こうした背景には、コロナ禍など社会の変化も影響しているよう。
「何が起こるかわからない経験をしたからこそ、いざという時に助け合える人との繋がりに、豊かさの価値基準が置かれるように。また、シェアリングは新しいモノを作らず、廃棄もしないため、サステナブルな観点からも、支持が高まっているのだと思います」(社会活動家・石山アンジュさん)
最新のシェアライフは、デジタルの力を活用するのが不可欠に。
「いまはアプリなどのサービスが充実していて、豊富な選択肢の中から、自分が得意なこと、必要なモノを瞬時にシェアできる。自分らしい生き方を自分で編集するような感覚です」(牛窪さん)
シェアライフをもっと楽しむための5つのコツ。
1、“人生の転機”はシェアライフにトライする良いきっかけ。
これまで引っ越しや転職は大きな決断だったが、シェアサービスを利用することで、柔軟にチャレンジできるように。「例えば住む場所は、月額数万円で全国のシェアハウスに泊まり放題といったサービスを利用すれば、お試し移住や、複数拠点生活も可能です。また、転職に関しては、スキルのシェアでまずは無理なく別の道を模索できる。こうした人生の転機を入り口に、シェアライフを始める手もあると思います」(石山さん)
2、地域の繋がりを作る“コモンズ型”サービスに注目。
コロナ禍のステイホームやソーシャルディスタンスを経て、いま改めて対面でのコミュニケーション欲求が高まっているという。「とくに地域や文化などの資源や価値観をシェアする“コモンズ型”のサービスは、地元志向の若い世代を中心に広がっています。例えば、地域の人たちが使えるシェアキッチンや、普段あまり使わない道具を近所の人同士で共有するなど、顔の見える交流で、困った時に助け合える関係性に」(牛窪さん)
3、「名刺以外の肩書」を考えてみると、シェアできることがもっと多様に。
シェアリングの中でも最近注目されているのが、スキルのシェア。「ユーザー側としてはもちろん、実は自分が提供できるスキルを持っている場合も意外とあるんです。名刺の肩書以外で考えられる、自分の特技や固有の経験は何なのか。料理のレシピ作りや服装のアドバイス、留学や旅行の経験などでもいい。シェアサービスの多様化により、それらを“スキル”として生かせる可能性があり、働き方の選択肢が広がります」(石山さん)
4、大変なことをみんなでシェアしよう。
子育てを例にすると、いまは夫婦共働きの世帯が多い中で、親御さんが遠方に住んでいる場合は、働きながら夫婦二人で育児をしなければいけません。でもそれを、子どもを預かり合うなど同じ境遇の人同士でシェアすれば、負担が減らせます」(石山さん)。「パートナーや友人間の決め事も、お互いの予定を共有できるアプリを使えばスマートに。都合のいい時に見てもらうくらいのフランクさで、シェアできます」(牛窪さん)
5、新しい働き方を支援するサポートプランも。
シェアワーカーとして働く場合は、会社員のような福利厚生や保障がなく、心配になることもあるのでは。「最近は、そういった不安を和らげるようなサポートプランも充実。比較的手頃な月額料金で、シェアワーカーのリスクに特化した損害賠償保険に入れたり、会社員並みに充実した福利厚生が受けられたりします。また、働き方に関する相談窓口で心配事もシェア。こうしたサポートをうまく活用するといいでしょう」(石山さん)
ワタシたちのシェアサービス利用事情。
さまざまなサービスが増えているなか、20~30代の女性たちの利用状況や意識を調査すべく、anan総研メンバーへのアンケートを実施しました。
Q1、シェアサービスを使ったことがありますか?
Yes…52%、No…48%
シェアサービスを利用したことのある人は約半数。利用経験者はさまざまなジャンルのサービスを試している一方、使ってみたいけど不安もある…という人も多いよう。
Q2、使ったことのあるシェアサービスは? (複数回答)
- 移動手段のシェア(車・自転車・ライドシェアなど)…82%
- 服やバッグのシェア…45%
- 空間のシェア(オフィス・駐車場・民泊など)…27%
- 家具や家電のシェア…18%
- スキルのシェア(副業・家事代行・手作り品の販売など)…18%
外出先での“ちょい乗り”にも便利なシェアサイクルや、使わなくなったモノを気軽に出品できるフリマアプリなど、日常的に利用できるサービスの利用率が高い傾向だった。
Q3、利用してみてよかったことは?
- 不要になった服が定価の半額で売れたり、誰かに必要とされているんだなと感じられること。(26歳)
- 対面でのやりとりがないから、時間にもしばられず全部スマホで完結すること。(32歳)
- ベビーベッドをレンタルした時、買うより安くて、廃棄もしなくていいのが大変便利でした。(31歳)
車など維持費のかかるものや、使用期間が限られているベビー用品などをシェアすることで「コスパの良さ」を感じている人が多数。またライフスタイルに合わせて「使いたい時だけ使う」ことができるのも魅力。
Q4、利用してみて困ったことは?
- シェアサイクルの利用時に困った際、どこに連絡してどうすべきか、対処法がわかりにくかった。(28歳)
- フリマアプリで神経質な方と接することがあると、ドキドキしてしまいします…。(36歳)
- カーシェアなどで、前の利用者がマナーを守らずに使っているなと感じた時。(22歳)
オンラインで完結する手軽さが便利な一方、カスタマーサポートのわかりにくさやメンテナンスの不備に困った経験をした人が多かったよう。また「借りたい/使いたい時にない」という回答も目立った。
牛窪 恵さん マーケティングライター、立教大学大学院客員教授。近著に『若者たちのニューノーマル Z世代、コロナ禍を生きる』(日経BP)など。『サタデーウオッチ9』(NHK総合)など、メディアでも活躍。
石山アンジュさん 社会活動家。シェアライフの提唱者であり第一人者。「シェアリングエコノミー協会」代表。デジタル庁シェアリングエコノミー伝道師。著書に『シェアライフ』(クロスメディア・パブリッシング)。
※『anan』2022年9月21日号より。イラスト・かりた 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)