食あたりのとき“下痢止め”薬は飲むべからず!! 下痢の原因&対策を医師が解説

2022.7.29
食べ物を消化し便として外に出す仕事をしてくれる、我らの胃や腸。働き者だからこそ、日々小さなトラブルに見舞われがち。忙しいとやり過ごしがちですが、症状や原因をしっかり知ることで、対策が練りやすく! 腸まわりに詳しいお医者様に伺いました~。

腸の調子が良ければ万事快調! そんな健康的な日々を目指しましょう。

ちょっとつらいけど、我慢すれば乗り越えられる。腸のトラブルをそうやり過ごしている人も多いはず。でも、

「お腹が痛くなったり、突然下痢になったり、あるいは便秘が続いてお腹が重い…。気になりながらも、我慢して生活をしていますが、それが重なれば日常生活の質の低下をもたらします」(心療内科医・伊藤克人先生)

腸内環境と心身の繋がりを研究している内科医の桐村里紗先生は、人の健康のベースは腸だと語ります。

「食べ物を分解し栄養を吸収する腸は、植物にとっての“土”と同じ。腸は自律神経とも関係が深いので、腸の調子が悪いと体全体の代謝が悪くなってしまいます。小さな不調もしっかり向き合い、腸の健康を保ちましょう」

「体の最終出口にある肛門で起こる事件の多くは、上流にある腸でのトラブルに起因します。腸を健康に保てば、痔などの疾患は防げるんですよ」(肛門科専門医・平田雅彦先生)

ここでは、冷たいものや刺激の強いものを食べたときはもちろん、美味しいものを食べた翌日にもなったりする、下痢に注目! 緊張するような場面で襲われる人も多いようで…。

下痢

trouble

下痢とは?

水分が多くて便がユルユル!! 泥や水のような状態です…。
健康的な便は、バナナ状の固形便。一方下痢とは、便の水分が多く、形のない泥状や水状の便のこと。

「通常、胃から腸に来た消化物には水分が多く含まれていて、ゆっくり腸を通過する間に水分が腸に吸収され、適度な硬さの便になります。しかしその作業がうまくいかなくなると、便の水分が増え、下痢になってしまいます」(伊藤先生)

「水分の吸収がうまくいかなくなる理由はいくつかあります。まず腸には、収縮と弛緩を繰り返しながら内容物を移動させる“ぜん動運動”というものがあり、その動きが過剰になると、内容物が早く通過してしまい、水分が十分吸収されない、ということが一つ。また食中毒や感染性の胃腸炎によることもありますし、腸内環境の乱れによる場合もあります」(桐村先生)

伊藤先生によると、下痢になるときはお腹が絞られるように痛い人もいるそう…。なりがちな人は、下のシチュエーションを避けましょう。

◎こんなとき、下痢になりがちです。
悪いものを食べた、食べすぎ、お酒の飲みすぎ、脂っこい食事のあと、冷え、過剰なストレスを感じたときなどなど…

原因は?

腸の調子が悪いのですが、実は理由はさまざまあって…。
いわゆる食あたりは、傷んだ食べ物などを食べた場合は細菌感染、また生牡蠣などでお腹を下す場合はウイルスによる下痢。

「食生活の乱れも原因の一つで、アルコールは消化するのに水分を引きつけるので下痢になりやすく、脂っこいものは消化に時間がかかるので、ぜん動運動が過剰になり、下痢になります。また体が冷えると内臓も冷え、消化器の働きが低下し、お腹が下ることに」(桐村先生)

また、緊張感などストレスを感じると腸の働きが悪くなり、下痢を誘発する場合も。

「自律神経のバランスが崩れてしまい、消化器官の働きが過剰になることも。同様に、寝不足のときなども自律神経が乱れるので、要注意です」(伊藤先生)

◎生理のときは、下痢も便秘も注意です。
女性の体を司る女性ホルモンは、腸管の知覚や運動に作用があるらしい!

「生理中に出る卵胞ホルモンのエストロゲンは、腸管の知覚過敏を招き下痢を誘発します。また生理前は黄体ホルモンのプロゲステロンが腸管の運動を抑制するので便秘になる人が多数。この時期はいつも以上に体をいたわって」(伊藤先生)

どうしたら?

細菌やウイルス性以外は服薬OK。水分を摂り、腸を休める食生活を。
いわゆる食あたりの場合、体の中にいる細菌やウイルスを外に出さなければならないので、つらいですが、下痢を止めてはいけません。つまり“下痢止め”の薬は飲むべからず。原因がそれ以外にあると思われるときは、服薬しても大丈夫だそう。

「いずれにしても、下痢をしているときは脱水症状を起こしやすいので、経口補水液などによる水分補給をしっかりしてください。また症状がある場合は消化しやすい食事にすることも大切です」(伊藤先生)

「食生活に原因があると思われる場合は、まずはそこを見直しましょう。アルコールは適度にし、肉や脂っこい食事は、自分の消化力を超える量を食べると消化不良になり、下痢の原因になるので控えめに。その場合は消化酵素のサプリメントを飲むのもいいと思います。また、デキストリンなど、腸活に良いとされる水溶性食物繊維が入った食品やサプリを集中的に摂っていることが、原因になっている場合も。とにかく下痢のときは、ゆったり心と体を休め、ストレスリリースをすることも回復の第一歩です」(桐村先生)

いとう・かつひと 東急病院心療内科、HDCアトラスクリニック、労働衛生コンサルタント。専門は心身医学、森田療法。著書に『いちばんわかりやすい過敏性腸症候群』(河出書房新社)など。

きりむら・りさ 内科医、認定産業医。tenrai株式会社代表取締役。ヘルスウェルネスに関する発信も多数。著書に『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が。

ひらた・まさひこ 平田肛門科医院院長。日本大腸肛門病学会肛門領域指導医。マンガ家ヒヅメさんとの共著『マンガでわかる 痔の治し方 40万人を診たおしりの名医に会いに行く』(小学館)が。

※『anan』2022年8月3日号より。イラスト・HONGAMA

(by anan編集部)