野球がコンセプト? 味も値段も嬉しい、ユニークな“立ち食い寿司店”誕生

2021.11.17
フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『鮨ブルペン』のおまかせ握りです。
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水玉の暖簾に、剛速球で迫り来るマグロの寿司の看板。なんだか一筋縄ではいかない雰囲気の立ち食い寿司店が10月1日に荏原に誕生した。その名は『ブルペン』。寿司の名店『鮨りんだ』『らんまる』の系列店で、ブルペン=ピッチャーがマウンドに立つ前に球を投げ込んで準備をする場所になぞらえ、若手の職人が日々バシバシと寿司を投げ込む、いや、握り込んでいく。

マグロは豊洲一番の仲卸ともいわれる「やま幸」から仕入れるなど立ち食い寿司とは思えぬネタが揃うが、おまかせコースは4000円からと値段はグッと抑え込む。だってそりゃあ若手が握るんでしょ、と侮ることなかれ。ドラフト1位指名でつけ場に立つのは、社内きっての若手エース・佐々木男駆(だんく)さん。魚屋の孫で、子供の頃から魚を愛し、魚を突き詰める男の寿司は、25歳という年齢を感じさせない仕上がりを見せる。羽釜で炊き上げた赤酢のシャリは一粒一粒の輪郭が際立ち、口の中でネタと混じりあって心地よくほどける。お寿司のラインナップも、スーパークラシックな江戸前仕事を継承したネタ(さいまき海老をおぼろと握る“唐子づけ”!)がありつつ、回転寿司でしかお目にかかれないマヨネタ(出たぞオニオンサーモンマヨ!)を本気でアップデートさせるなど縦横無尽。あっという間の一時間一本勝負。おいしさも楽しさも尽きない新しい寿司屋の形がそこにある。

日替わりのブルペンおまかせ¥4,000。この日は、青森三厩の中トロ、佐賀竹崎のこはだ、天草の真鯛、対馬の穴子など11貫。玉子はあえて海苔で巻くクラシックスタイル。魚のアラ、あるいは一番出汁がベースのお椀で〆。ダンクおまかせ¥7,000も。

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鮨ブルペン 東京都品川区荏原4‐6‐1 TEL:03・6426・7970 11:00~14:30、17:00~20:30 水・木曜休 予約可。詳細はインスタグラム(@bullpen0604)で。

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。

※『anan』2021年11月24日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子

(by anan編集部)