対処法を知って睡眠力をアップ!
「私たちは一生睡眠をとり続けますが、良質な睡眠をキープし続けることはできません」
そう話すのは、作業療法士の菅原洋平さん。その日のスケジュールによって睡眠時間は変わり、私たちの体や心の状態も一定に保てない以上、睡眠の質にもムラが出て当たり前というわけ。
「まずは、睡眠のリズムは必ず乱れるという前提に立って、チューニングする方法を知り、試してみることが大切です。そして、実際に眠れたという体験を積み上げていけば、どんな状況でも眠れるようになります。眠れない、起きられない時の対処法を実践すればするほど、睡眠力が上がります」
菅原さんの考え方はとても柔軟で、一般的によしとされていない二度寝や寝だめ、寝酒や就寝前のスマホも一概に禁止しない。
「むしろ、睡眠のために“○○をしない”ということをしないでください。睡眠は、人生の目的ではなく、目的を達成するためのツールです。ルールよりも、自分が楽しく快適なことを優先して、その結果、睡眠が乱れても戻す方法を知っておきさえすれば安心です」
睡眠トラブルQ&A
Q. 布団に入ってからもスマホを見るのが習慣で、よく眠れない。
A. “スマホを触る場所”“寝る場所”をきちんと分けた上で楽しむ!
寝る前はスマホを触らないほうがいいとはよく聞くけれど、なかなかやめられない…。「無理にやめようとしなくてもいいですよ。ただ、脳は行為とそれを行った場所をセットで記憶するので、“ベッド=寝る場所”とインプットさせるために、スマホを見るのはベッド以外の場所に決めてください。スペース的に難しい方は、ベッドの上半分=睡眠、下半分=スマホと区分すれば大丈夫です」
Q. 仕事で帰宅が深夜になりがち。食べないと空腹で眠れない…。
A. よく噛んで大食い防止! 盛りつけてから食べるなど量を調節。
深夜にお腹がすくのは、睡眠不足で、エネルギーが足りていないからだそう。「睡眠量を確保できない方は、カロリーの低いものなど、何を食べるかを予め決めておきましょう。また残業前に小さなおにぎりを30秒しっかり噛んで食べると、その後の大食い防止に。お菓子を食べたい時は、袋のままではなくお皿にきれいに盛りつけて量を調節。どうせ食べるなら、罪悪感なく楽しみましょう!」
Q. 怒りや悩みが巡って目が冴えてしまう。
A. 物理的に脳の温度を下げて、思考できない状態を作りましょう。
人間関係や将来のことなどネガティブな感情が湧いて寝つけない。でも、急にポジティブ思考に変われるはずもなく…。「このケースは心理的に捉えず、生理的にアプローチすると案外簡単に解決できます。就寝時に考え事をするのは、脳の温度が高いからで、脳の温度を下げると思考活動自体が止まります。やり方は、柔らかい保冷剤や軽く霧吹きをして冷凍したタオルを枕の上や額に置いて冷やすだけ!」
Q. 寝酒が習慣…やはり良くないのでしょうか?
A. 飲酒と睡眠を切り離して、寝酒以外にも寝つく方法を持つ。
寝る前のアルコールは途中で目が覚めるなど、睡眠に良くないといわれる。「楽しく飲めているなら寝酒してもいいですし、アルコールを飲む前に水分をしっかり摂っておけば、脱水による途中覚醒を減らすことはできます。ただ、飲酒しか寝つく手段を持っていないのは技術不足です。自分にとっての飲酒の良さを大切にしてみると、寝つくための手段は、他のことでも得られることに気づくかも」
Q. 週末の寝だめが習慣に…やはり良くないの?
A. 日中、元気で夜眠くなるならOK。そうでないのであれば改善を。
休日くらい目覚ましをかけず、欲望のままに眠りたい! 「寝だめしても体がだるくなく、夜ちゃんと眠気がくるのであれば、平日に足りていなかった睡眠量を補えたということで問題ありません。でもそうでないのなら、ダラダラ寝ずに、睡眠と覚醒の時間をきちんと分ける必要アリ。睡眠のリミット=起床時間を決めて寝る前に3度唱えると、その時間が脳にインプットされ、起きやすくなります」
Q. どうしても眠れない時、どうすれば眠くなる?
A. 15分寝られなかったら出直す! 1時間は自由に好きなことを。
なかなか寝つけない時は、潔くベッドから出るのが正解! 「ベッドは睡眠の場所。そこで眠れない記憶が残ることが一番ダメなんです。そもそも脳の構造的に、15分寝られないと、その後1時間は寝られません。『今夜は寝るタイミングが悪かっただけで、自由な時間ができた』と思い、ベッドで眠りを待つよりも快適なことに時間を使いましょう。リラックスしているうちに眠気が訪れます」
菅原洋平さん 作業療法士、アクティブスリープ指導士養成講座主宰。「ベスリクリニック」で、薬に頼らない睡眠外来を担当する。『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『快眠アイデア大全』(翔泳社)など、睡眠に関する著書多数。
※『anan』2021年9月8日号より。イラスト・ユリコフ・カワヒロ 取材、文・小泉咲子
(by anan編集部)