今、芸人がドラマで引っ張りだこ? “芸人俳優”が重宝される秘密とは
ドラマにリアリティとワクワクを与える存在。
『大豆田とわ子と三人の元夫』の東京03・角田晃広や『テセウスの船』の霜降り明星・せいやなど主役ではないが、それを食わんばかりの存在感で活躍をみせる芸人たちが気になる。昨今増えている芸人俳優バイプレイヤーズ。その理由は業界の“ひな壇化”にあり?
「かつてお笑い芸人がドラマに出るといえば人気トップの芸人を主演で迎える形が主流でした。でも、今やバラエティ番組で言うところの“ひな壇”芸人が急増してきています。ドラマ界もそこに目をつけてキャスティングをしているんだと思います」(ライター・西森路代さん)
いわゆる“ひな壇枠”は中堅といわれる30~40代。ドラマで不足しがちな世代の役どころをうまくカバーしてくれるという。
「主人公の同僚やいきつけの店の人…そういう役柄を芸人さんに演じていただくとなんでもない普通のシーンも“何か起きそう”というワクワクできる雰囲気を作ってくれる。また、笑いを入れたいこちらの意図も読み取って、いい塩梅で色をつけてくれることも。とてもありがたいんです」(ドラマプロデューサー・岩崎愛奈さん)
かつてのトレンディドラマ一辺倒の時代と違いドラマもテーマや設定が多様化。その中で、リアリティを持って役に入り込んでくれる演技派芸人は貴重な存在なのだ。
「キラキラしたメインキャラだけのドラマはいまや主流ではありません。そこに自分たちの生活と地続きのようなリアルな存在がいてこそドラマが面白くなる時代です。見ていて“こんな人ほんとにいるよね”を与えてくれるのが芸人俳優バイプレイヤーズなのだと思います」(西森さん)
芸人俳優のココがスゴい!
ドラマプロデューサーの岩崎さんとドラマ批評家であるライターの西森さんに芸人俳優バイプレイヤーズのここを見ろ! ここがスゴい! というポイントを教えていただきました。
【1】ひな壇芸人だからこそハングリーに爪痕を残す!
「脇役だからと萎縮せず結果を残せるのは普段、バラエティの戦場で鍛えられている芸人だからこそ」(西森さん)。「アドリブの度胸や瞬発力はさすが。場の空気を掴む勘のよさに現場でいつも助けられてます」(岩崎さん)
【2】ちょうどいい空気感の普通の人を演じられる。
「芸人さんはちょうどいい感じの“おじさん”がたくさんいる。あの普通っぽさ、身近にいそうな感じはドラマ、映画に絶対必要」(西森さん)。「第7世代など若い世代も“今どきの若者”枠で気になってますね」(岩崎さん)
【3】旬な芸人登場が作品の話題性UPのカギに。
「舞台やコント番組を見るなど常に新しい芸人さんがいないかとチェックをしています。あの人がどんなお芝居をするんだろう? と気になる方が出演するとドラマの話題としても盛り上がります」(岩崎さん)
にしもり・みちよ ライター。香港、台湾、韓国と日本のエンタメ事情に精通。共著に『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020』(駒草出版)がある。
いわさき・あいな ドラマプロデューサー。2020年に手がけた『私の家政夫ナギサさん』が大ヒット。現在、重岡大毅さん主演のファミリードラマ『#家族募集します』が放送中。
※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。イラスト・岡田成生 取材、文・梅原加奈
(by anan編集部)