チルドレン・ファーストな国を作るために…「こども庁」の創設と課題

2021.6.26
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「こども庁」です。

組織の一元化にとどまらず、官民協力体制で実現を。

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子どもに関する諸問題に一元的に取り組む「こども庁」の創設を、与党は次の衆議院選挙の公約の目玉にしようとしています。これまで、案件が複数の省庁にまたがるため、速やかに解決できないという問題がありました。たとえばコロナ禍のオンライン授業も、厚労省、文科省、経産省が関わります。経産省は、ベンチャーIT企業とつながりがあり、エドテック(エデュケーション×テクノロジー)を産業政策に掲げ、「未来の教室」というサイトを作っています。文科省は文科省で別のプログラムを持っており、こちらはテクノロジーにはあまり強くありません。

こども庁創設の議論がなされるようになったきっかけは少子化です。子どもの貧困や教育格差などの問題に注目が集まり、もっと速やかに政策を打てるようにするべきだという機運が高まりました。さらにコロナ禍になり、その動きはいっそう加速しました。

日本はもとより、「シルバー民主主義」といわれており、高齢化が大きな課題です。そのため、どうしても高齢者の医療サポートや年金問題、社会福祉政策に目が向きがちでした。予算配分もそちらのほうに重きがおかれていました。GDPに占める子育て支援策の比率は、先進国のなかでも日本は低水準といわれています。人口の違いもありますが、イギリスが3%台半ばなのに対して、日本はたった1%台半ばくらいしかないんですね。

ただ、「こども庁」が創設されても、単に組織を作るだけで終わってはいけません。東日本大震災のときには復興庁が作られ、その存在は大きいですが、まだ使われずに眠っている予算もあるといわれています。きちんとした実態把握をし、それに適した予算を投下する実働部隊が必要です。子どもの貧困や教育、テクノロジーなどは、ソーシャルセクターといわれるベンチャー企業やNPO、NGOに任されてきた分野。彼らが積極的にこども庁のなかに入って構成されるような、官民の協力体制が欠かせないのではないかと思います。チルドレン・ファーストな国を作ることが、結果的に国民全体の利益につながります。さまざまな社会資源をここに投入していただきたいですね。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX 平日7:00~)が放送中。

※『anan』2021年6月30日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)