昨年、「魔法の絨毯」が大ヒットした川崎さん。一般ユーザーが本作を使った動画をTikTokにアップしたことがきっかけだった。
「インターネットが普及した今は、誰でも手軽に、無料で音楽が聴ける時代。大事なのは、曲を聴いていいと感じた人が誰かに薦めて、拡散していくことだと思っています。その点でいうと『魔法の絨毯』の広まり方は、まさに現代ならではでした。どんな形であっても自分の曲が届くことはありがたいもの。SNSで“好きなアーティストは川崎鷹也”と言ってくださる方を見ると、すごく嬉しいです」
楽曲の誕生からヒットまで約2年半。その期間は長く、もどかしいものだった。
「『魔法の絨毯』は、できた当時から“最強の曲ができた”と思っていたので、なんで広がらないんだろうと考えたし、正直、やさぐれていました(笑)。それが、昨年の8月に親や友だちから『えらいことになってるぞ!』と連絡が来て、今までとはまったく違う状況になったんです。僕が大事にしているのは自分の感覚に嘘をつかないこと。人に左右されず、自分が信じたものを最後まで信じ切ることです。それが未来を切り拓くことにつながっている可能性はあるかもしれない。音楽の専門学校に通っていた時も、僕がアコースティックギター一本で弾き語りする姿を見て笑う人がいたけれど、絶対にスタイルを変えませんでした。時代が回り、自分のスタイルや楽曲のメッセージ性で注目を浴びることを信じていたからです。反骨心や悔しさも、音楽へのパッションになっていましたね」
川崎さんの楽曲は、自身の体験や気持ちがもとになって生まれたものばかり。
「嬉しい、悲しい、怒りなど何かしら感情が動いた時の自分のメッセージが楽曲に変わります。ほとんどの曲はメロディと歌詞が一緒に出てきているし、フルコーラスの骨組みは約30分くらいで書きます。ただ、パッと感情が動いた瞬間は曲になるけれど、逆に、“なんでムカついたのだろう”などと考え込んでしまうと、曲にならないんですよね。書こうと思って書くことはできないんです」
誕生した楽曲の中でも多いのが、愛を歌った作品たち。「魔法の絨毯」もそのひとつだ。
「奥さんとまだ恋人同士だった時に劇団四季のミュージカル『アラジン』を観に行きました。お金がないのに愛するジャスミンに真摯に向き合い、最終的に結ばれるアラジンのストーリーが当時の自分とリンクしたことで生まれた楽曲です。僕にとって愛は、作品作りに不可欠なもの。恋人だけじゃなく、友だちや仕事で出会う人に対してもそうですが、“この人のためなら頑張れる”という気持ちが楽曲作りの活力になっていますね」
そんな彼が今ハマっているものは温泉。
「近所にあるスパや、このあいだは伊香保温泉に行きました。というのも、お湯に浸かっている時に曲が生まれることが多いんです。リラックスしているからなんですかね?」
「魔法の絨毯」のバンドアレンジを行うなど、新しいことにも積極的に挑戦している川崎さん。今後の目標を訪ねてみると。
「ライブでフェイストゥフェイスでメッセージを受け取ってもらうことが大前提です。テクノロジーが進んだ今の時代だからこそ、温もりを大事にしたいですね。そして、僕の音楽を聴いた人が、“好きって伝えよう!”とか“もうちょっと頑張ろう”と未来を切り拓いてくれたら嬉しいです。それが今の僕がやるべきことなのかなって思っています」
かわさき・たかや 1995年5月16日生まれ、栃木県出身。ギターの弾き語りと伸びやかな歌声でメッセージを届ける。3年前にリリースした楽曲「魔法の絨毯」が昨年8月にTikTokで人気となり、本作を使った動画が現在2億2000万回以上再生されたことで話題に。Spotifyの「バイラルTop50」チャートの1位にランクインしたことでも注目を集める。2020年10月にEP『Magic』をリリース。今月、卒業をテーマにした新曲「サクラウサギ」をリリース予定。
※『anan』2021年1月13日号より。写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・髙徳洋史 取材、文・重信 綾
(by anan編集部)