都会の中で自然を感じる。そんな場が求められている。――建築家 吉田 愛さん
虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーのフードエリア「虎ノ門横丁」や、MIYASHITA PARKと連携したホテル「シークエンス ミヤシタパーク」のラウンジスペースなど、建築家の吉田愛さんが、谷尻誠さんと共に代表を務める建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」では、この春お披露目となる施設のデザインを多数手がけている。そんな新しい東京をクリエイションする立場から見た、これからの東京とは?
「例えばオフィスビルの隣に緑地帯があるなど、都会の中にいながらも自然を感じられるような空間が、これまで以上に増えていく気がします。時代の流れとして今求められているのは、経済を優先した合理性より、人としての豊かさ。バーベキューなど屋外でごはんを食べれば、やっぱりおいしいと感じるはず。そんな“気持ちのいい場所”をいかにつくるかを、私たちが建物をデザインするうえでも大切にしています」
吉田さんの事務所の仕事はもちろん、最近オープンした中では、地上から屋上庭園まで外階段で行き来できる渋谷PARCOが、その一つといえる。また、店舗住宅一体型のエリアも存在する下北線路街のBONUS TRACKのような、新しい形態の商店街にも期待を寄せる。
「仕事と暮らし、人と人など、さまざまな事物が混ざり合うことで生まれる化学反応がある。利便性を追求して無理に切り離すのではなく、心地よく同居できる場も、東京には増えていくと思います」
よしだ・あい 広島と東京を拠点とする建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」を、谷尻誠氏と共に率いる。
街をつくる側も選ぶ側も、それぞれの理念が大切に。――タイムアウト東京代表 伏谷博之さん
「世界の大都市のトレンドは、多様性を許容できる街づくり。それぞれ異なる志向や生活スタイルに寄り添う選択肢の豊富さ、と言い換えることもできますが、その流れは新しい東京にも感じられます」
こう話すのは、東京の魅力を世界に発信するグローバルメディア「タイムアウト東京」を手がける伏谷博之さん。
「そもそも東京は、『ロンドンが5つくらいある』と外国人に例えられるほどのスーパーメガシティ。渋谷、新宿、品川など大きな街が複数ありますが、そのどこで遊び、働き、住むのかも、選択肢といえますよね。とはいえ、それが同じような街なら意味がありません。これからさまざまな施設がオープンしますが、それらの差別化が各エリアで行われ、特色ある街になっていくことが大切だと思います。そして、例えば『銀座のほうが環境にやさしい』など、どの街を選ぶかで、自分の生き方やセンスを表せる時代になるのではないでしょうか」
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また、サステナブルな観点により、水や緑を豊かにする街づくりも、世界の大都市では進んでいるという。
「パリではセーヌ川沿いの車道を廃止して、ランニングをしたり、寛いだりできるスペースに変えたほど。そのようにウォーターフロントを大事にする外国人は多く、海外に行っても地元の人が水辺でどう過ごすのか、興味を持っているんです。その意味で注目したいのが東京湾岸エリア。競技場などが建っていますが、水辺も含めてどのように整備されていくのか楽しみですね」
ふしたに・ひろゆき タワーレコード代表取締役を経て、タイムアウト東京を設立、ORIGINAL Inc.代表取締役。観光庁アドバイザリー・ボード。
※『anan』2020年4月15日号より。構成、文・保手濱奈美 写真・峰脇英樹/アフロ、古城 渡/アフロ
(by anan編集部)