「最初はソロアルバムを作るにあたって、散歩したり、『源氏物語』や途中で止まっちゃってる『論語』も全部読んだりしながら作ろうと思ってたんです。でも、2018年のエレファントカシマシの「Wake Up」ツアー中にスカパラからコラボの話が来て、その後に林檎さんからも話があって。そうこうしているうちに、どんどんドラマやCMのタイアップの話が来た。だから俺自身は何も考えてなくて(笑)。元々、子供の頃に合唱団に入っていてテレビに出たり、『みんなのうた』の『はじめての僕デス』って曲を歌ったり。学芸会では自分が主役じゃなきゃ嫌な子で。要するに、子供の頃から人前ではしゃぎ気味っていうかね。人を楽しませるのが好きだったし、歌うこともすごく好きだったから、いろんな新しいオファーが嬉しくて、自然とこういうアルバムになったというか」
自由で開放的な言葉が並ぶ中、最後にできたという「旅に出ようぜbaby」では“いつか終わりが来るその日まで 僕ら陽気な冒険者でいよう”と、たくさんのミュージシャンと出会い、パワフルな今作が生まれたことへの想いが歌われている。
「ディズニーランドとか、ハリー・ポッターとか、そういうメルヘンの世界って、実は大人に必要なものだって今の年齢になってわかったんです。俺がドラゴンクエストVを13回か14回やるほど好きなのは、仲間たちとの旅や冒険が繰り広げられる“メルヘン”があるからで。『旅に出ようぜbaby』の、“いかした旅人でいよう”って歌詞は、『宮本、独歩。』っていうメルヘンの入り口だと思って作ったんです。仲間ができて一緒に歩んでいく。そうやって人生は進んでいくわけで。この曲のバンドメンバーはみんな俺より年上で、長い間音楽界に君臨している人ばかり。その人たちが想いをストレートに乗せて演奏しているから、すごく説得力がある」
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バンドでデビューしてから32年。そのみなぎる創作意欲の源には何があるのだろうか。
「やっぱり、自分が元気だと元気な友達ができるよね。孤独になるのが良い時もあるから、どっちが良いとか悪いとかじゃないんだけど。ビクトル・ユーゴーが『40代は青年の老年期、50代は老年の青年期』っていう言葉を残してますが、実感してますよ。いろんなことを受け入れて、むしろ余裕ができたのかもしれないね。40代だと抗っちゃうところもあるけど、受け入れると逆に元気になれるんじゃない? でもこれからもっと受け入れることが増えるんだろうね(笑)。その分、音楽を作ったり歌ったりすることは充実させていきたいですね」
ソロアルバム『宮本、独歩。』【初回限定612バースデーライブatリキッドルーム盤(CD+DVD)】¥5,000 【初回限定2019ライブベスト盤(2CD+DVD+ブックレット)】¥5,000 【通常盤(CD)】¥3,000(UNIVERSAL MUSIC)
みやもと・ひろじ 1966年生まれ。’88年、エレファントカシマシのボーカル&ギターとしてデビュー。2018年、ソロシンガーとして椎名林檎、東京スカパラダイスオーケストラの曲に参加。3月13日から全国13か所14公演の初のツアーを開催予定。
※『anan』2020年3月18日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) ヘア&メイク・茅根裕己(Cirque) 取材、文・小松香里
(by anan編集部)