“女二人”の片方が持つ違和感…短編集『私に似ていない彼女』の読みどころ

2020.2.4
“女二人”をテーマにした短編集『私に似ていない彼女』の著者・加藤千恵さんに、作品に対する思いを聞きました。

友達、姉妹、母娘、仕事仲間…。さまざまな“女二人”の意外な風景。

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「男女問わず、人間同士の関係性にはずっと興味があります」

と語る作家・歌人の加藤千恵さん。新作『私に似ていない彼女』は、“女二人”をテーマにした短編集。どれもひねりのある展開でわくわくさせる。例えば女子高校生の親友同士の日常が綴られる「滅亡しない日」や、一緒に暮らす姉妹を描いた「切れなかったもの」は、片方の思いもよらない行動に読者も驚くはず。

「人って時々とんでもないことをしうると感じていて。みんな普通の生活をしていても、その枠の中だけで生きているわけじゃない。他者から理解できないこと、自分でも説明できないことは皆抱えているのでは」

一方「非共有」は、女性作家が女友達と話すなかで違和感を抱く話。それはいわば、「女性作家はこうするもの」と決めつけられた形だ。

「何か共通点がある人同士は、全部が共通していると思われがちというか。でも本当は一人ひとりに差異があるんですよね。私もそうした発言をして反省することがあるし、一緒にされて“いや、違うんだけどな”と思うこともあるんです」

他に商店街で台湾茶の店を開く女性のもとに、昔の仕事仲間の女性が転がりこんでくる話(この二人の関係がとても魅力的)や、小学生の女子が主人公の一編(教室で友達と意見が衝突しそうになる場面の展開が微笑ましい)、男性の立場から対照的な2人の女性が描かれる短編など、バリエーション豊か。また、「神様の名前」は宗教がモチーフだが、

「前から宗教には興味があります。信仰を持ってる周囲の方っていい人が多いんです。でも自分は何かを信仰するかといったら、できない気がする。だからこそ、そういう人たちのことが気になるんですよね」

最後に収録された「皺のついたスカート」は母に反発していた娘の話。

「母娘といってもさまざまで、良くも悪くも唯一無二だから気になっています。今回はそのひとつを切り取った形ですね」

どの短編も切り取り方、余白の残し方が巧み。激しく共感したり何かに気づかされたり、刺激もたっぷり。

「自分と同じだなと思ってもらえても、逆にまるで違うなって思ってもらえても嬉しいです。宗教や母娘といったテーマは、それぞれいつか長編でも書きたいです」

加藤千恵『私に似ていない彼女』 親友の真優からいつも他校に通う彼氏の話を聞いている「あたし」は、突然、ある行動に出て…。「滅亡しない日」ほか8編を収録。ポプラ社 1500円

かとう・ちえ 1983年北海道生まれ。2001年、短歌集『ハッピーアイスクリーム』で高校生歌人としてデビュー。『ハニー ビター ハニー』『ラジオラジオラジオ!』『そして旅にいる』など著書多数。

※『anan』2020年2月5日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)

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