焼きたてのパンは人を優しい気持ちにするものだが、鳥野しのさんの『麦の惑星』に登場する凸凹コンビもまたしかり。
麦の惑星

「最初に担当編集さんから、“パン”と“宇宙”というキーワードを提案していただいたときは、正直戸惑いました(笑)。パン屋は前にバイトをしたことがあったのですが、宇宙のイメージがなかなか出てこなくて。でも兄弟の設定を思いついたときに、しっくりきたんですよね」

舞台は、人里離れた山のパン屋。亡き祖父の後を継いで、ひとりで店を切り盛りしていたパン職人の紺太がある日、事故で遭難して食料を探していた宇宙人・まみ太と出会う。情に厚くて心配性な紺太に対して、まみ太は見た目は小学生だけど、中身はクールな大人。宇宙からお迎えが来るまで、紺太はまみ太を弟ということにして居候させることに。

「家族が欲しかったら、普通は結婚という形になるんでしょうけど、それ以外にも家族になれる関係があってもよいのでは、という気持ちが自分のなかには前からあるんです」

麦の惑星

しかしながらまみ太は宇宙人なので、人間社会のシステムは理解できても、寂しいという感情や誰かを強く思う気持ちがよくわからない。宇宙人から見た不可思議な地球人の描き方がまた興味深いのだ。

「違う星に来てしまった宇宙人が寂しがっているというパターンも考えましたが、地球人だけが寂しがっているほうが片思い感があっていいかなと思いました。それとグルメマンガブームが来ていた頃に始まった作品でもあったので、人間の食に対する執念のすごさも、まみ太に代弁してもらいたかったんです」

紺太とまみ太は、本当の兄弟のように心を通わせることができるのか。じっくり噛み締めたい物語だ。

『ほたるベーカリー』の店主・紺太と、宇宙人・まみ太のハートウォーミングな物語。脇役もいい味出してます。おいしそうなパンの数々に思わずゴクリ。祥伝社 各680円

とりの・しの マンガ家。主な作品に『オハナホロホロ』(全6巻)、『手紙物語』『ボーイ☆スカート』『アステリスク』など。既存の関係、価値観にとらわれない人たちを丁寧に描く。©鳥野しの/祥伝社フィールコミックス

※『anan』2018年12月19日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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