「全部歌いづらいです(笑)」高橋優がスランプを経験し変わったところ

エンタメ
2018.09.24
痛切なほどに気持ちを歌に乗せる高橋 優さん。新アルバム作成の前の時期は、いわゆる「スランプ」を経験したと正直に語る。久々のオリジナル作に向けた思いとは。
タレント

心に生まれたままの感情を、加工することなく歌詞に綴り、歌い続けているシンガーソングライターの高橋 優さん。最近は音楽のみならず、映画やドラマに出演したり、巧みな話術を武器にラジオ番組を持つなど、武骨なイメージとかけ離れた、驚くほどマルチな才能を発揮しているのだ。そんな彼が2年ぶりにリリースするアルバムが『STARTING OVER』。この作品に込めた彼のいまの思いから、話を聞いてみた。

――アルバムタイトルが“原点に戻る”とか“再出発”という意味合いですね。

高橋:はい、そうです。実は去年、自分の親に、ずっとあげたいと思っていた大きなプレゼントをしたんですよ。こんなことができるなんて、僕も大人になったなぁ、と感慨深くて。いまはお金を稼ぎながら歌わせてもらえる、なんて自分は幸せなんだろうと思ったら、曲が書けなくなってしまったんです。

――えっ、そんなことが。

高橋:曲作りに向かうモチベーションが全然上がらないのに、日々が充実している感じはあって……。でもその感覚がすごく怖くて、去年から今年の5月ぐらいまでそのモードから抜けきれなかったんですよね。曲作りって自分自身のメンタルと向き合うものだから、ヘンにホンワカしているとダメなんですよ。ギスギスしていたり、いびつじゃなきゃいけないのに、その部分が小さくなってしまっていた。このまま歌も書けないつまらない人間になってしまうのか、と。

――作り手としては危機的状況。

高橋:あぶなかったですね。もう一度ゼロからやり直すというか、ここから高橋 優をゼロから知ってもらうぐらいの気持ちで曲作りをしないと、自分は終わってしまう。そういう思いで「STARTING OVER」とつけました。

――完成したアルバムには16曲もの素晴らしい歌があります。書けるようになったきっかけは?

高橋:この8年間で積み重ねてきた曲作りのやり方を、いったん忘れて一度ゼロに戻ろうと「曲作りってどうやるんですか?」と、それぐらいのレベルからはじめたんです。「こんな感じですか」「いやそれは違うぞ」とダメ出しされるようなことを、わざとやってみようと。駄作と言われようが関係ない。自分をもっと伸び伸びと出して、新しい曲を生み出す、そんなやり方で書いてみて、最初にできたのが「美しい鳥」でした。

――具体的には、なにをどうしたんでしょうか。

高橋:譜割りを気にしないことですね。いままでは、とくにシングル曲は、口ずさみやすいとか、キャッチーだとか、どこかで気にしていたけど、そういうことを全部やめた。このアルバムに入っている曲は、全部歌いづらいです(笑)。

――言葉がいままでの作品以上に饒舌で、歌詞カードからはみ出しそうですよね。

高橋:そう。自分にしか歌えない歌かも。それが良いことか悪いことかはわからないけど、いまの僕に必要なのは、曲作りを楽しむことや、ワクワクしながら届けることだし、キレイな形じゃなくても、高橋優の音楽を聴いてくれる人は、きっと受け取ってくれるんじゃないかと期待しています。みんながカラオケで歌うことを意識しないで作っていったら、どんどん楽しくなっていったし、誰が聴いても素晴らしいと思われる曲を書くのはやめました。

――おおー。

高橋:いつの時代も古くならない普遍的な曲を書くことがいい場合もあるけど、いま僕がやろうとしているのは、自分の中で爆発しているものの火花を、しっかりとアルバムに焼き付けること。永遠に残ってゆく曲ではないかもしれないけど、そういう瞬発性を大事にしたいと、ますます思うようになりました。僕はデビュー当時は「リアルタイムシンガーソングライター」と言ってきたけど、いまになってその言葉がしっくりきている気がします。

――なるほど。ソングライターは若いころの思いや経験の蓄積で曲を作り続けるという話も聞きますが、優さんの曲の素となるのは、いまこの瞬間、ということですか。

高橋:ありがたいことに僕は“根に持ちタイプ”なので、いまも18歳の自分に負けないぐらい、傷つきながら生きています。だから青春時代の蓄積で曲を書くことになってしまったら、シンガーソングライター・高橋 優としてはおしまいなんです。もしそうなったら、歌うこともやめると思う。だってそんな歌、誰も聴きたくないですもん。去年、ふわっと幸せの幕の中に入ってしまい、しばらく曲が書けなくなったのは、いい意味で失敗をしにいったような感じ。あの経験があったから、新しい道が拓けたのかもしれないですね。

――このアルバムは、高橋 優の生まれ変わりの作品、なんですね。

高橋:まあでも失敗は数限りなくしてますよ。いまでもかわいい年下の女の子と知り合う機会があると、中途半端にカッコつけて、失敗していますし(笑)。ほら、20歳そこそこの女性って、例えばお酒が強い男性って大人、とかいう価値観持ってませんか? それに乗せられちゃって、気づいたらベロベロとか、僕、そんなですよ。シンガーソングライターの人って、その界隈で戦っていることが多い気がします(笑)。

――どこ界隈で戦っているんでしょう(笑)。

高橋:そのひと言を言わなければカッコいいのに、みたいな。または逆に言うべきときに言えなかったり。どんなときもうまく決められる人は、歌を歌わなくてもカッコいいんですよね。でも僕は、そのときの孤独感や、切ない気持ちを歌にするんです。だからロクでもないんですけどね(笑)。

――シンガーソングライターあるある(笑)。ところで、以前お伺いした「お誘いは断らないキャンペーン」は継続中ですか?

高橋:いえ、社交的なことはもう積極的にはしてないです。まぁ、そういう場では社交的なフリはしてますよ。

――フリ(笑)。でもご友人はすごく多そうです。

高橋:僕が話そうとしていることと似たニュアンスの人といると落ち着きますね。なぜかO型の人が多いんですよ。最近、面白いと思ったのは、僕はいま34歳ですけど、上の世代の40代の人って、これじゃなくてはいけないというこだわりの強い人が多いんですよ。僕ら30代は、そのこだわりを見せられてきたから、別にそこまでこだわらなくてもいいじゃんという世代。でも20代はまた別のこだわりがある世代なんですよ。その3つの世代と同席していると、飲みの場なのに20代と40代が、マジトークになってきて、ケンカになったりする。僕らはその合間の中間層ですし、ケンカが大っ嫌いなんですよ(笑)。ホント苦手だから、そういうことで熱くならない人がいい。

たかはし・ゆう 1983年生まれ、秋田県出身。2010年、シングル『素晴らしき日常』でメジャーデビュー。‘16年より主催野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES」を開催。‘17年から‘18年にかけて、約8万人動員した自身最大規模となる全国ツアーを成功させた。‘18年12月より高橋 優LIVE TOUR 2018-2019「STARTING OVER」を開催する。

カットソー¥9,500 パンツ¥32,000(共に原宿VILLAGE TEL:03・3405・8528) ブルゾン¥28,000(ROCK THERAPY TEL:03・6805・1312) その他はスタイリスト私物

6作目のアルバム『STARTING OVER』(10月24日発売)は、シングル「ありがとう」(映画『パパはわるものチャンピオン』主題歌)など16曲を収録。ジャケット写真は親交の深いリリー・フランキーさんが撮影した。ニッポン放送『オールナイトニッポンサタデースペシャル 大倉くんと高橋くん』に出演中。

※『anan』2018年9月26日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・横田勝広(YKP) ヘア&メイク・内山多加子(Commune) インタビュー、文・北條尚子

(by anan編集部)



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