呼吸と体幹がもたらすメリットとは? 自分の状態もチェック

相関関係にある呼吸と体幹は、共に整えていくと多くのメリットが。主な効果を把握しつつ、トレーニングを始める前に、まずは知っておく&チェックしておくべき“呼吸と体幹”知識のセットアップをしよう。

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    お話を伺った方

    Profile

    奥仲哲弥

    おくなか・てつや 呼吸器外科医、医学博士。山王病院前副院長。肺がんや肺気腫などを専門とし、手がけた手術は4500例を超える。日本人の呼吸異常を問題視し独自の呼吸法を提案。

    呼吸と体幹アプローチがもたらす主な6つのメリット

    ① スタイルアップ

    横隔膜を使った呼吸ができるようになると体幹のインナーマッスルが鍛えられる。とくにお腹の深層筋、腹横筋が鍛えられることでウエストの引き締め効果が得られることも。さらに、副交感神経が優位になって肩の力が抜けるようになると、姿勢がよくなり、全身のシルエットも美しく見える。

    ② 肩こり・頭痛改善

    現代人が無意識に行っている胸式呼吸では、肋骨の間にある肋間筋、首すじの胸鎖乳突筋などが酷使される。つまり、胸や首まわりが常に緊張して肩こりや頭痛に。さらにデスクワークによる猫背や巻き肩姿勢が緊張に拍車をかける。「デスクワークをしているとき、10分に一度くらいは深い呼吸を2~3回行って肩こり予防を」(奥仲さん)

    ③ 冷え改善

    多くの女性が季節にかかわらず悩まされている“冷え”。深い呼吸によってこの悩みの改善も図れる。理屈は睡眠の項と同様。横隔膜を動かす呼吸で副交感神経が優位な状態にスイッチすると、手足の血管が拡張して血液と酸素が行き渡る。こうしてカラダの奥に蓄積された熱を発散させようとするので手足がポカポカ温まる。

    ④ 睡眠質アップ

    速やかに眠りにつく条件のひとつは、手足などの末端から熱を放出して脳の温度を下げること。そのためには副交感神経を優位な状態にしてカラダの末端の血管を広げる必要がある。「赤ちゃんが眠るときに手足が温かくなるのと同じ原理です。深い呼吸で副交感神経を活性化できれば睡眠の質が向上します」(奥仲さん)

    ⑤ メンタル安定

    朝の忙しい時間帯にエレベーターを乗り過ごしてしまったとき、ランチタイムのコンビニで行列しているとき、多くの人はイライラしがち。奥仲さんは深い呼吸を実践するようになってから、その手のイライラが解消されたという。「深い呼吸がアンガーマネジメントに繋がり、人に先を譲れるようになりました」(奥仲さん)

    ⑥ 実質腸活

    深くゆっくりした呼吸を行うためには横隔膜を上下に動かす必要がある。この運動によってもたらされるメリットのひとつが便秘の改善。「息を吐いて横隔膜が上がるときに腸管も引き上げられ、息を吸って横隔膜が下がるときに腸管も下がり、腸のぜん動運動が促されます。おかげで私は便秘をしたことがありません」(奥仲さん)

    TEST|自分の呼吸ポテンシャルをチェック

    息止めテスト

    体内に酸素をどれくらい保っていられるか、呼吸で取り込んだ酸素をうまく活用できているかを判定。

    HOW TO

    ①スマホのストップウォッチ機能を用意。②鼻から普通に息を吸う。③小さく息を吐き、指で鼻をしっかりつまんだらストップウォッチで計測スタート。④「息をしたい」と自然に感じるまでの時間を計る。我慢はしないことがポイント。⑤鼻をつまんだ手を放し、鼻で呼吸を再開する。

    40秒以上息を止めていられたという人は酸素保持力がアスリート並み。理想的な状態なのでこれを維持したい。一般人なら30秒台で良好といえるレベル。20秒台は呼吸過多気味でやや不安な状態。10秒台は呼吸過多で常に息苦しさを感じている危険レベル。

    息出しテスト

    一度にどれだけ息を吐けるかをチェックする吐ける量が少ない人は、必要な場所に酸素が供給されていないかも。

    HOW TO

    ① スマホのストップウォッチ機能を用意。② 鼻から普通に息を吸う。くれぐれも思い切り吸わないこと。③ 口からゆっくりと息を吐くと同時にストップウォッチで計測スタート。④ これ以上吐けないというところで計測ストップ。※「イ~」と声を出したり歌を歌いながら行ってもいい。

    20秒以上息を吐き続けられる人はアスリート並みの呼吸機能。階段を駆け上がっても息切れしないはず。一般人の場合は15秒以上でもかなり優秀。10秒以上吐ければ合格圏だが、今後、これ以上数値が下がらないよう注意。10秒未満は呼吸機能低下の可能性あり。

    TRY|横隔膜を使った正しい深呼吸の仕方をマスターしよう!

    自分の今の呼吸機能をチェックしたら、いよいよ横隔膜を使った深い呼吸のトレーニングに移ろう。

    「呼吸というのは文字通り、息を吐く“呼”が先で吐いて吸うのが基本です。その逆の“吸呼”になると、息を全部吐き切れないうちに、次の息を吸ってしまうことになります」

    慣れないうちは息を吐いてから吸うのは難しい。なのでまず短く吸って勢いをつけてから、吐くことを意識した正しい深呼吸の仕方をマスターしてほしい。

    HOW TO ① できるだけリラックスして立った姿勢で鼻からスッと1~2秒間息を吸う。② 口からヒューッと10秒間息を吐く(慣れてきたら鼻から吐いてみる。その場合は5秒間)。③ 最後に口からフウッ(鼻からならフンッ)とダメ押しで残気を吐く。このときギュッとお腹を引き締める。これを4~5セット行う。息を吐き切った後、自然に空気が肺に入ってくるので吸うことを意識しなくてよし。

    TEST|体幹の筋肉はきちんと機能している?

    基本姿勢テスト

    正しい呼吸をするための姿勢がとれているかをチェック。長時間のデスクワークの合間にときどき確認を。

    HOW TO

    自然に椅子に座ってみる。その姿勢のまま、片手を胸の前、反対側の手をお腹の前にやりやすい方の手で当てる。横から見たとき、両手を結ぶ線が垂直であれば、合格の正しい姿勢。極端に前後傾したり、線より肩が前に出る姿勢はNG。人に横からチェックしてもらったり、写真を撮ってもらうとより分かりやすい。

    バランステスト

    体幹の筋肉、とくにインナーマッスルはカラダのバランス力を担う細かい筋肉。きちんと働いているか、片足立ちで判定。

    HOW TO

    ①スマホのストップウォッチ機能を準備。②両手を腰に当てて立ち、左右どちらでもいいので片足を床から上げ、目は開けて計測スタート。③軸足が少しでもズレたり上げた足が軸足に触れたり床についたらそこで計測ストップ。④2回行って(軸足を替えても替えなくてもOK)長い方の記録時間を採用する。

    120秒以上キープできたという人はアスリート並みの体幹力の持ち主。一般人なら60秒以上キープできれば十分。30秒~59秒という場合は体幹の力がやや低め。30秒未満という人は体幹力がかなり低下しているので、深い呼吸ができていない可能性あり。

    MAP|体幹の筋肉の基礎知識を身につける

    体幹とは、首から下の胴体部分のこと。右に示したアウターマッスルが表層にあり、左に示したインナーマッスルがその深層にある。体幹力はこれらの筋肉が協調してこそ。トレーニングの前に位置と働きを把握しておこう。

    アウターマッスル

    ① 脊柱起立筋

    頭の付け根から骨盤にかけ、背骨に沿って走っている筋肉。直立二足歩行の姿勢を保つ大黒柱。衰えると猫背や反り腰になりがち。

    ② 腹斜筋

    わき腹の部分でたすきがけの状態で走っている筋肉の総称。体幹を左右に捻る動作で働く。息を吐き切るときにも収縮する。

    ③ 腹直筋

    お腹の正面、肋骨の下から恥骨までを繋ぐ縦に長い筋肉。腹圧をコントロールし、正しい姿勢を保つためには欠かせない筋肉。

    インナーマッスル

    ④ 多裂筋

    脊柱起立筋の深層にあり、背骨のひとつひとつを繋ぎ留めている短い筋肉の総称。背骨ひとつひとつを安定させる役割がある。

    ⑤ 腹横筋

    腹直筋の深層にあり、お腹の前面を広く覆う筋肉。息を吐き切るときに腹圧を上げて横隔膜を押し上げる働きをする。

    ⑥ 骨盤底筋

    その名の通り骨盤の底にハンモックのように張り巡らされている。横隔膜の動きに合わせて上下する。鍛えるとぽっこりお腹解消に。

    ⑦ 横隔膜

    胸とお腹の境界にある腹式呼吸の主役。「膜」という名だが立派な筋肉。息を吸うときに収縮して下がり、吐くときに緩んで上がる。

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    イラスト・深川 優 取材、文・石飛カノ

    anan 2499号(2026年6月10日発売)より
    Check!

    No.2499掲載

    呼吸と体幹

    2026年06月10日発売

    スタイルなど見た目はもちろん、疲労改善や深い睡眠など体調全般に影響を及ぼす呼吸と体幹についての特集。ピラティス、ナイトヨガ、坐禅、大人のバレエ教室など気になる呼吸と体幹鍛えスポット取材まで、さまざまな形で健やかな呼吸とブレない体幹作りを考えます。

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