
18歳でアメリカから単身来日し、ドラマや映画、CMなどの出演を経て一躍人気者に。現在はアクション俳優としてグローバルに活躍を続けるケイン・コスギさんの現在地とは。
7月31日より公開の映画『四十九 - SEEK』に出演しているケイン・コスギさん。今作は弟のシェイン・コスギさんの監督デビュー作でもあり、すでに世界で82もの賞を受賞している注目作だ。
── 出演はどのような経緯で?
シェインといつものように電話で話している時、今度映画の監督をやると聞いて。すぐに出たいと思ったけど、言えなかったんです。僕に合うキャラクターがないかもしれないし。それで「何か必要なことがあったら言ってね。スタッフでもなんでもいいから」って伝えたら、その1週間後に「悪役でどうですか?」と連絡をもらって。「ぜひぜひ!」って感じでした。
── 今作は現代に生き残った忍者が、非政府組織“四十九(シーク)”として暗躍するという物語で、ケインさんが演じるのは、ヤクザ高月組の組長・高月総二郎。緊迫したアクションが繰り広げられるなか、ラスボス感満載でケインさんが登場し、相変わらずキレキレのアクションを見せてくれました。
実はメインの悪役だと聞いていたけど、台本を読んで、あれ…出番これだけ? ってちょっと不満があったんです。それでもアクションをしたくてウズウズしながら現場に入ったら、さらにシーンがカットされて撮影は1時間ぐらいで終わっちゃって…。もう少し出たかったです(笑)。
── 現場で弟さんの仕事ぶりを見て、いかがでしたか?
僕はこれまでに、日本でも海外でもいろんな監督と仕事をしてきましたが、シェインはデビュー作にもかかわらずしっかりしていて、不安や迷いを一切感じさせずにリーダーシップをとっていたのでびっくりしました。幼い頃から変わらないシェインと一緒にいる空間は、懐かしくて楽しかったです。
── ケインさんは、日本では悪役のイメージがあまりないですが。
20代の頃はスーパー戦隊シリーズなどのヒーローものに出ることが多かったですからね。歳を重ねて、最近は海外の作品ではずっと悪役です。この2〜3年で、5回連続で殺されていますよ(笑)。でも僕は悪役のほうが好きなんです。だってヒーローってパターンが決まってしまうけど、悪役の場合はクールなのかクレイジーなのかって、キャラクターに遊びがあるから演じていて面白いんですよね。
── なるほど。ケインさんはハリウッド映画『ニンジャ・アベンジャーズ』のほか、中国や韓国など海外の作品にも多く出演されています。グローバルな視点からは、侍や忍者をテーマにした日本の作品はどう映っていますか。
真田広之さんの『SHOGUN 将軍』もそうですが、日本の文化は海外で本当に人気があります。アクションにおいてもただ強いだけ、速いだけではなく、刀を抜く時の無駄のない動きとか、所作の美しさみたいなものは日本独特のスタイル。海外の方にとってはすごく新鮮だと思います。僕も日本の文化は大好きです。
── アクション俳優として、カラダづくりへの意識は高そうです。
トレーニングは常にしていて、いつ呼ばれてもいいように準備はしています。役によってバルクアップしなければいけない時は、ひたすら筋肉をつけますけど、それ以外では動きやすいカラダを目指していて。今年52歳になるんですが、今は怪我をしにくいカラダをできるだけ維持するようにしています。実は今年、腱を怪我して手術をしたんですが、この2〜3年は怪我が多くて。20代の頃はリビングにダンベルばかり置いてあったけど、今はストレッチボールやマットなどが増えてリハビリセンターみたい(笑)。
── (笑)。年齢に合ったカラダづくりをされているんですね。
若い頃は毎日ハンバーガーを食べていましたけど、今はバランスのいい食事を心がけ、18時過ぎには夕食を終えています。カラダが重くなるとやっぱり怪我をしやすくなるし、動きも鈍くなるんですよね。そういう生活を始めたのは、30代半ばぐらいから。同じものを食べていてもカラダは違ってきますから。睡眠や心拍数など、一日のバイオリズムを測るリングを着けて、カラダがどのように回復するかも常に観察しながら日々調整しています。
諦めずに頑張っている姿を娘に見せたかったから

── そもそも日本に来られたきっかけを教えてください。
生まれ育ちはアメリカで、高校を卒業する時にアメリカで俳優を目指すか大学に行くか迷っていて。その時に父親から「日本に行って日本語や日本の文化を勉強してから考えれば?」というアドバイスをもらったんです。
── お父様はアメリカでニンジャブームを巻き起こしたアクション俳優、ショー・コスギさんですね。日本でも有名です。
はい。それで18歳で日本に来たものの、初めての一人暮らしで友達もいなくてホームシックになって。本当はすぐに帰りたかったんです。日本語が話せないからアルバイトも皿洗いばかり。一度、出前のバイトをやってみたんですが、漢字が読めないから住所がわからなくてダメでした。そんな時、大河ドラマの出演が決まった父親が日本に来て、僕もちょっとした役で出演させてもらったんです。そこで初めて、日本の芸能界ってすごいと興味を持ち始めて。
── すごいというのは?
アメリカの俳優は当時、出演するのは映画だけとかドラマだけって決まっていたんです。でも日本の俳優は映画やドラマ、バラエティ番組にも出るし、歌も歌う。これはすごい経験になるな、僕ももっといろんなことをやりたいと思うようになりました。その頃、初めてジャッキー・チェンさんなど、アジアのアクション俳優たちの作品を観て。自分もこのままではいけない、レベルアップして仕事を取りにいかなくちゃって。当時事務所には入っていたんですが、日本語が話せなかったから全然仕事がなくて、とにかくジム通いをしてカラダを鍛えておこうと。
── そこが原点に。
それでも、やっぱりアメリカに帰ろうと思っていた時に、テレビで筋肉を競い合う『筋肉番付』という番組を見て。すぐにマネージャーに電話をして「どんなコーナーでもいいから出たい」と言ったんです。マネージャーはその場でテレビ局に電話をしてくれて、次の週末に誰でも出られるだるま落としのコーナーがあるからどう? となって。その結果が結構良くて、いろんなチャンスをいただけるようになりました。
── 転機になったのは『筋肉番付』だったんですね。ケインさんといえば、リポビタンDのCMのイメージも強いですから。
ありがとうございます。ある時『筋肉番付』の芸能人大会で優勝して、その賞金で1年間生活をしながらトレーニングを続けて、また翌年に優勝して。その頃からいろんな仕事をいただけるようになったんですが、その中の一つが、リポビタンDの「ファイトイッパーツ!」でした。
── 名台詞を生で聞けて嬉しいです(笑)。
あははは(笑)。僕は日本に来た時から、テレビで見るあのCMが強烈に印象に残っていて。なんで真っ黒に日焼けした2人が、いつもどこかから落ちてるんだろう…と。まさか自分がそれをやるとは思ってもみなかったけど。あのCMは、年に3回海外に行って、最新の映画のカメラやヘリ、クレーンなどを使って大掛かりな撮影をしていたんです。実際に100mの崖の上で撮影もしたし。そこでワイヤーアクションを学んだことが、のちのアクション俳優の道に繋がっていきました。
── なるほど。日本語も覚えて?
勉強は続けていたし、今は昔と比べたらだいぶ楽に話せるようにはなりましたけど、今でも台本の漢字は読めないのでふりがなを振って、すらすら言えるようになるまでひたすら練習を繰り返しています。昨年は初めて時代劇に出演したんですが、「久しいな」などの昔の言葉は本当に難しかった。別の国の言葉でお芝居をした感じ。
── 努力を重ねていらっしゃるんですね。触れずにいられないのが、なかやまきんに君さんとのお笑いコンビ、パーフェクトパワーズ。2023年の『M-1グランプリ』に出場されましたね。
なかやまさんのYouTubeに出演した時にすごく楽しかったし、お互いに筋肉好きで息が合ったから冗談で「今度はM-1に出ましょう」と言っちゃったんです。そうしたら半年ぐらい経って、なかやまさんから電話があって「エントリーしました」って言われて。やべぇ…って。
── それで準々決勝まで進んだのはすごいですね。その後、お笑いに沼ったりは?
いやいや、沼ってないです(笑)。そもそもM-1にチャレンジしたのは、今7歳の娘に、パパがなんでも挑戦して諦めずに頑張っている姿を見せたかったから。家でずっとゲームをやってるパパだとまずいですから。だから娘が生まれてから『SASUKE』にも復帰して。昔は自分のために挑戦していたけど、今は娘のためですね。でもいつも奥さんに怒られるんですよね。だって娘にスポーツをさせても、怪我をしないように僕が後ろにずっとついてるから。最近は娘にも「パパ、もういいよ」って言われるようになって…。
── ちょっと寂しいですね。最後に、50代に入った今、これからの人生の目標を教えてください。
プライベートでは娘がとにかくハッピーでいられるように、毎日が充実していること。仕事は、いま一番頑張らなければいけない時期。海外の作品では、40〜60歳がアクション俳優のベストの年齢。いろんな作品に出て、いいアクションを見せていきたいです。父親がアメリカでニンジャ・ブームを作り、ブルース・リーさんやジャッキー・チェンさんにもそれぞれのスタイルがある。だから僕も、ケイン・コスギのアクションのスタイルを作っていきたいですね。
Profile
ケイン・コスギ
1974年10月11日生まれ、アメリカ出身。テレビ番組『筋肉番付』の出演をきっかけに、リポビタンDのCMに抜擢。ドラマ『忍者戦隊カクレンジャー』や、『劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア』に出演し、アクション俳優として人気を得る。ハリウッド映画『ニンジャ・アベンジャーズ』に出演するなど世界的に活躍中。
information
『四十九 - SEEK』
忍者の末裔で非政府組織“四十九”から任務を受けた相沢京平(浅野寛介)は、恋人を亡くした孤独な青年。高月総二郎(ケイン・コスギ)が組長を務める日本のヤクザ高月組に侵入して、任務を果たすが…。出演:浅野寛介、ケイン・コスギ、三浦誠己、菜葉菜、弓削智久ほか。映画『四十九 - SEEK』は7月31日より公開。
anan 2506号(2026年7月29日発売)より































