都会に出現した都市と自然が交差する場所をレポート! 平子雄一「HUMAN AND NATURE」展覧会

平子雄一さん(右)の展覧会をanan総研メンバーの金定和沙さんが巡る!

“人間社会と自然の関係性”をテーマに、さまざまな出力方法で作品を生み出す現代美術作家の平子雄一さん。現在、東京ミッドタウン日比谷で開催中の展覧会「HUMAN AND NATURE」では、空間全体を使ったインスタレーションを展開。新作の絵画、立体作品、モビール群など約300点が展示されている。今回は、anan総研メンバーの金定和沙さんが会場へ。平子さん自身によるガイドを聞きながら、作品を鑑賞しました!

Index

    愛らしい自然の姿を表現した「箱庭」

    一番最初に現れるのは、平子さんが「箱庭」と名付けたエリア。手のひらサイズのものをはじめ、カラフルで愛らしい、小型の立体物がずらりと並ぶ。

    1/1

    平子さん

    ここでは人間よりも小さいサイズの作品を揃えています。植物の用途、人間との関係性にはバリエーションがありますが、家の中に飾ったり、庭に植えるというのも在り方の一つですよね。人が愛好する、可愛らしさのあるラインナップになっています。

    金定さん

    壁に貼られたドローイングも可愛くて気になります。立体物を作る時に描いているのですか?

    平子さん

    これはもっとラフなもので、頭にぱっと浮かんだイマジネーションを描き留めた、作品になる前のアイデアです。決めたゴールだけを見ていると、どうしてもアイデアの広がりがなくなっていくので、そうならないためにも必要な作業ですね。

    可愛らしさと怖さが同居する作品たち「The Colony」

    「箱庭」を出て進むと、人間と同じくらいのサイズの集団立体が登場する。

     

    1/1

    金定さん

    迫力がありますね。自分が集団の中に紛れ込んでしまったような感覚になるというか。さっきまで、自分の手の中に収まるサイズだったものが、扱えないサイズとして現れるので、ドキッとしました。

    さらに奥には、人間と思しき体に植物の頭がついた不思議な存在が猫を抱いて座る部屋「The Cedar」があり、一歩足を踏み入れると、独特の存在感に圧倒される。

    金定さん

    わ、すごい…!

    平子さん

    さきほどの小さいサイズのものとは感じ方が変わってくると思います。可愛らしさがあるんだけど、同時にどこか怖い。

    金定さん

    何か問いかけられているような感じがします。ちなみに、どの洋服の柄も素敵ですが、意識されていることはありますか?

    平子さん

    色みに関しては人間っぽいものにするか、植物っぽいものにするか、どちらを使おうかといつも考えています。色みを楽しんだり、色を見てきれいなどと思うのは人間だけで、ほかの生き物たちには必要ないらしいんです。それがすごく面白いなと思って、あえてビビッドな色を使ったりもしています。

    人が管理できる自然と、できない自然

    次の部屋「Paintings」には、3つの大きな絵が飾られている。頭が植物になった不思議な存在が、草原のような場所に佇んでいたり、人工物に囲まれていたりと興味深いシチュエーションが描かれており、想像を掻き立てられる。

    1/1

    金定さん

    平子さんの作品は、自然のなかに誰かや人工物がある場合と、人が暮らす場所のなかに植物が存在している場合に分かれている気がします。

    平子さん

    自然というのは一方向だけでは決められないものだと思っていて。人間のコントロールが及ばない自然もあれば、管理できる自然もある。場所によって自然が多い場合もあるし、人工物が多い場合もあるんですよね。でも、今回の展覧会は、自然のモチーフが多い気はしていて、それは、日比谷という街自体に自然が少ないことが影響しているように思います。日比谷公園があるけれど、それも人がつくったものなので。

    金定さん

    人が管理している“自然”ですもんね。今回の日比谷はすごく快適に過ごせる街だからこそ、反対のものを目指したところもあるのでしょうか。

    平子さん

    そうですね、少し意識しました。最初の部屋は結構、人工物が多めに見えると思うんですけど、自分が愛くるしい対象として見られるもの、自分がコントロールできそうなものというのは、人工物なんですよね。そして、自分のコントロールが及ばないのが自然。だから、最初は可愛らしい作品で油断をさせておいて…という(笑)。

    金定さん

    ちゃんと油断しました(笑)。猫のモチーフがいろいろな場所に登場しますが、お好きなんですか?

    平子さん

    好きでもありますし、猫や犬、鳥などもともと野生の動物が一緒に暮らすという状況は人間ありきのものだと思うんですよね。そして、猫と犬でいうと、猫のほうが都会にいなくて野生的なのかなと勝手に考えていて。犬はよく散歩している人を見ますから。

    人間と自然の関係性をフラットに見るモビール群

    最後に登場する空間「The no land」には、この展覧会で初公開となるモビールのシリーズを展示。約3.5mのモビールが吊るされる空間は圧巻のひとこと。

    1/1

    金定さん

    すごい! なぜモビールを吊るそうと思ったのですか?

    平子さん

    人間と植物の共通点は、大地に依存しているということだと気付いたんです。そこで、地面を取り払って宙に浮かせることで、人間と植物、自然の関係性をフラットなものにしてみようと思って試してみました。対等な関係になることで考えられること、見えてくることもあると思うんです。

    金定さん

    作品のなかを歩けるのが、ぜいたくですね。没入感がとんでもないし、展示というより体験できる空間だなと思いました。

    平子さん

    まさに、みなさんにそう感じてもらいたいと思っていたので、よかったです。日比谷で展覧会の準備や作業をしていると、街で忙しく働いている人たちを目にすることが多く、彼らがすごく元気だなと感じたんです。そういう方たちが展示を見に来てくださったら、きっといろいろな感情が湧くだろうな…と思えたし、“対人間”の展覧会になるだろうなと感じました。

    金定さん

    どの展示も圧倒的でした。そして、平子さんのお話を実際に聞いたことで、また違う角度から作品を鑑賞でき、すごく楽しかったです。

    平子さん

    みなさんが少しでも何かを考える機会になったら嬉しいですし、作品について「これはこうだったんじゃない?」みたいに、いろいろ話してもらえたらいいなと思います。

    「HUMAN AND NATURE」

    会期:2026年9月5日(土)~10月18日(日)

    会場:東京ミッドタウン日比谷 6階 ホール

    住所:東京都千代田区有楽町1-1-2

    休館日:無休

    料金(オンラインチケット):大人 2000円 / 大学生・専門学生 1500円 / 中高生 1000円 / 小学生以下 無料

    Profile

    平子雄一

    1982年、岡山県生まれ。2006年にイギリスのウィンブルドン・カレッジ・オブ・アートの絵画専攻を卒業。植物や自然と人間の共存について、また、その関係性の中で浮上する曖昧さや疑問をテーマに制作を行う。韓国、台湾、イギリス、アメリカなど、国外でも精力的に作品を発表している。

    写真・中島慶子 文・重信 綾

    Share

    • twitter
    • threads
    • facebook
    • line
    ライフスタイル

    Recommend

    こちらの記事もおすすめ

    「死の援助法案」を堀潤さんが解説
    「死の援助法案」を堀潤さんが解説
    Lifestyle
    【anan総研】恋愛、仕事、人生…どう頼る? 占いとの付き合い方を教えて!
    【anan総研】恋愛、仕事、人生…どう頼る? 占いとの付き合い方を教えて!
    Lifestyle
    エスプリを感じられる、メイド・イン・フランスのアイテムをお届け
    エスプリを感じられる、メイド・イン・フランスのアイテムをお届け
    Lifestyle
    【anan総研】さわやかなアジアンの風! タイ&ベトナムフードに夢中。「エスニック料理」
    【anan総研】さわやかなアジアンの風! タイ&ベトナムフードに夢中。「エスニック料理」
    Lifestyle

    Movie

    ムービー

    Regulars

    連載