意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「アナログは福祉」です。
デジタル一本化ではなく、別の手法も必要なのでは
「アナログは福祉」とは、エッセイストの忍足みかんさんが訴えている言葉です。忍足さんは高齢者や精神疾患・発達障害のある家族のケアを子供の頃から担ってきました。家族はインターネットを使えず、お店や病院の連絡先は電話番号案内の「104」を利用。ところが、104のサービスが今年の3月で終了してしまいました。スマホで検索すれば、AIに聞けばいいというのは健常者の目線です。精神疾患と発達障害のあるご家族にとって、新しい手順を覚えることは難しく、104は大切なライフラインでした。
デジタル化は各所で進んでいます。東京都でも「東京アプリ」を導入すれば1万1000ポイント取得できるとか、自治体の行政手続きもLINEに登録し、情報を得るよう推奨されています。インターネットやパソコン、スマホを利用できる人とできない人の情報格差「デジタルデバイド」が広がっており、深刻な問題になっています。家族にできないことは、忍足さんのようなケアをする人が担わなければならず、利便性があるはずのことが、誰かにとっては負担に。
忍足さんは、デジタル化が必要なことには同意しながら、もう一方でアナログな方法も残しておき、両方を並行して進めることが、誰一人取り残さない優しい社会なのではと話していました。「アナログは福祉です」と、デジタルデバイドの問題をメディアや国会議員などにコツコツと訴えかけています。
忍足さんは海外の事例も調べており、キャッシュレス化の進んだスウェーデンでは、食料品店と薬局の有人レジに現金の受け付けを義務づける法律が7月から施行されました。イギリスでは高齢者支援を行うチャリティ団体が、イギリスの65歳以上の人のうち、およそ580万人がインターネット操作を十分に行えていない、利用していないと、自治体の公共サービスにオフラインの方法を保障するよう、約17万人分の署名を集めて政府に求めたそうです。
元デジタル庁統括官・村上敬亮さんにこの問題を伝えたところ、完全デジタル化に向けた移行期の問題と分析。多くの人を取り残さないデジタル政策について今、舵取りが問われています。
五月女ケイ子解読員から一言

「アナログは福祉」、なるほどと思いました。アナログを残すのは、デジタルを使えない人への配慮だけではなく、人が人を頼って関わっていくこと自体を福祉と呼ぶんだなと改めて思いました。便利さや効率を優先させるのは孤立を生みかねないですよね。
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。近著に、細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)。
anan 2516号(2026年10月21日発売)より































