意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「プーチン大統領北方領土訪問」です。
実効支配を進めるロシア。歴史的背景を顧みるべき
8月13日にプーチン氏がロシアの大統領として初めて北方領土の択捉島を訪問、水産加工工場や病院、学校を視察しました。2010年に当時のメドベージェフ大統領が国後島を訪問したことはありましたが、択捉島は初でした。ロシア政府は補助金を出し、開拓団のような形で国民の北方領土への移住を促していました。今回の大統領訪問は、自分たちの領土であることを世界に向けて、また、ロシア国内に対して強くアピールしたことになります。
日本政府は外務省にロシア大使を呼び、到底受け入れられないと抗議しましたが、ロシアは意に介しません。その後も択捉島周辺で大規模な軍事演習を行い、支配の正当性を示しています。日本とロシアは、第二次世界大戦後、平和条約を結んでいません。安倍政権の頃に締結しようと動いていたのですが、2022年にロシアがウクライナに侵攻し、日本が経済制裁に加わったため関係は悪化。ロシア側から平和条約締結交渉の中断が表明されました。
ロシアの西側国境に接しているウクライナの問題と同様、日本はロシアの東側国境に接しており、実は危うい位置関係にあります。プーチン大統領はロシア系住民の保護という名目でクリミア半島を併合しましたから、北方領土も、日本側が強く返還を求めれば強硬な姿勢に乗り出す恐れがあります。
国立公文書館アジア歴史資料センターの公式サイトでは、「昭和100年」インターネット特別展「日本とアジア諸国の“戦後”」として、極秘とされていた公文書が公開されています。その中には、昭和26年に吉田首相が外務省に太平洋戦争が起きた理由などの調査・検証を求め提出された「日本外交の過誤」という文書があり、日本外交の失敗が明記されていました。
北方領土の問題も、元を辿ればロシアが社会主義国のソビエト連邦になり、満州事変で日本が国連を脱退し、日ソ中立条約締結交渉を進める過程での、北樺太の利権交渉の結果が今につながっています。歴史は切り離して考えることはできません。「日本外交の過誤」は全文を読めますので、今起きている問題を考えるためにも、ぜひ触れていただけたらと思います。
五月女ケイ子解読員から一言

ウクライナと似た状況に気づかないほど日本は平和ですが、日本外交の過誤の「何事が起るにも起るだけの原因があるのであり、そしてその起つたことが又原因となつて次の果を生ずる」という言葉が重く響きます。過去が今を、今が未来を作るのですね。
解説員
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堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
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五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。10/18まで、外苑前の「ギャラリーハウスMAYA」で個展を開催中。近著に『桃太郎、エステへ行く』。
anan 2514号(2026年10月7日発売)より
































