
今やあらゆる分野で普及したAI。しかし、完全に頼り切りでの利用は思考力に深刻な影響が。“知性”を衰えさせず、AIを利用して能力を上げる方法を伝授。
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教えてくれた方
Profile
樺沢紫苑
かばさわ・しおん 1965年生まれ、北海道出身。精神科医、樺沢心理学研究所所長。『学びを結果に変えるアウトプット大全』『知性大全AI時代に不可欠な力』(共にサンクチュアリ出版)など、ベストセラーの著書が多数。映画評論家という一面も。
AIに丸投げせず、まず自分で考えるクセ付けを
悩み相談に文章作成、検索…。もはやAIは日常生活に欠かせない存在。便利な道具ではありますが、使い方によっては“自分で考える”という行動の放棄につながり、思考力を磨くどころか低下させることに。
「AIに答えを求めるだけの使い方は、問題集の答えを考える前に読む行為に似ており、そこにはユーザーの“考える”という行為が介在しません。そして、それを繰り返していると、思考力は落ちる一方です」
と言うのは、精神科医で、AIに関する著書も多い樺沢紫苑さん。そうならないために、AIとどう付き合うのがよいのか。
「大事なのは、常に人間側が考え続けることです。AIに尋ねる前に、その問題に対してまず自分なりに答えを考えたり仮説を立てたりしてからプロンプトを投げる。そして解答が出たら鵜呑みにせず、それに対して自分で考える。常にいったん自分で思考するクセを付けることが、思考力を上げる唯一のAIの使い方だと思います」
使う前に知りたい、AIの“思考力への影響”
AIでラクをするほど思考力は失われる!? 認知負債
脳は使わなければその機能が衰える器官。つまりAIに丸投げをすればするほど、思考力は衰えます。そういった研究結果も出ているそうで…。

AIに仕事を任せすぎると、人間の思考力や認知機能が低下する。これを〈認知負債〉といいます。
「今年の6月に、中国の中高生約2万7000人を30か月にわたって追跡調査をした論文が発表されました。彼らのうち約80%は宿題をAIに任せていて、短期的に宿題の成績は向上、そして費やす時間も短縮されました。しかし、AIを使えない高校入試の成績は24%低下、同様に大学入試でも18%低下が見られたという調査結果が。つまり、AIに作業を任せてラクをすると、記憶力や思考力、創造性などが低下し、それが借金の負債のように積み上がり将来苦労をする…ということ。AIは、使い方によっては思考力を育てるどころか低下させる危険もあるわけです」
大切なのは、AIとの共創
AIの力を最大限に引き出し、なおかつ認知負債をためずに使うには、AIを〈道具〉ではなく〈創造的なパートナー〉と考えることが大事。

AIを、命令すれば何でもやってくれる魔法の道具だと考える人も多いですが、“プロンプトを入れる→答えを受け取る”のみの関係になると、AIの出力をそのまま鵜呑みにしやすくなり、思慮が浅くなる危険性が。
「AIが提示するのは、膨大な既存の情報をもとにしたいわば平均値的な答え。それをそのまま受け取るのではなく、そこに自分の考えをぶつけ、対話を重ねながら、新たな発想や自分なりの答えを一緒に生み出していく。AIを単なる道具ではなく、“共創”するパートナーとして活用することが重要なのです。その上で大事なのは、人間が主導権を握り、最終判断を下すという姿勢で使うこと。そこは常に念頭に置いてください」
思考力を守る! AI使用ガイド
脳を育てるも衰えさせるも、使い方次第。この5つの項目を忘れずに、自らが考えながら、AIと共創しよう。
⚠️ ハルシネーションに注意する
ハルシネーションとは、AIが誤った情報を、真実のように生成する現象のこと。
「AIは間違えますし、平気で嘘をつく。知りたかった答えが出てきたときほど、鵜呑みにせず疑うことを忘れないで。『わからない場合はわからないと言って』などのカスタム指示を入れると、ハルシネーションの出現率を減らせます」
⚠️ 使用時間を制限する
情報過多の今、AIやスマホに接する時間を制限することも大切だと樺沢さん。
「私はスマホでの情報収集を1日15分と決めています。時間をかければかけるほど良い情報が得られ、良いものが生成できると思いがちですが、実は逆。際限なく情報を集め続けるのではなく、時間を区切ることが重要です」
⚠️ 目的を決めてから使用する
AIをただ漫然と使うのは、むしろ思考力が衰えるだけ。何のために使うのかを明確に。
「これが知りたい、この問題を解決したいなど、使う前に“問いとゴール”を定めることが大事。それを決めれば、1回の使用は短時間で済むもの。ダラダラ使い続けるのではなく、目的を達成したら切り上げ、次は自分の思考の時間に」
⚠️ アウトプットは人間が行う
AIに調べてもらうだけでは、情報をインプットしているにすぎない。
「脳を活性化させるには、インプット3、アウトプット7のバランスが理想。得た情報を誰かに話す、文章を書き直すなど、自分で考え、行動することが大切です。AIの答えをそのままコピペする丸投げでは、思考力は鍛えられません」
⚠️ 1回目で出た回答は基本的には利用しない
AIはユーザーの意見に同調しがち。だからこそ、最初の答えを採用するのは避けたい。
「『こういうことありますよね?』と聞けば、AIは大抵『あります』と答えます。そこで『本当にそう?』『別の考え方は?』と問いを重ねる。最初の答えを正解とせず、複数の案を出させて、自分で取捨選択することが大切です」
AIで思考力を上げる実践編
AIに考えてもらうのではなく、AIを使って考える。問いを重ね、視点を変え、自分なりの答えを探す。思考力を鍛える5つの実践ワークに挑戦しよう!
抽象的な悩みを解決する「なぜなぜ壁打ち」
Work

なぜを3回繰り返すことで、物事の原因や本質、構造を見る
“なぜ?”と1回問いかけるだけでは、思考はそれほど深まらない。3回繰り返すことで、物事の本質や問題の原因に近づいていく。その掘り下げる過程をAIに手伝ってもらうのがこのワーク。
「悩んだときやAIの答えに違和感を持ったときは、『なぜ?』を繰り返してみて。例えば今日うまくいかなかったことを1つ選び、毎日3回問いを重ねる。続けるうちに、何かあったとき自然と『なぜ?』と考える習慣が身につくはずです」

文章力を上げる「パラグラフワーク」
Work

AIが短文を書き、自分は思考を。文章を組み立てる力を一緒に磨く
長文を丸投げするのではなく、100~200字程度の短い文章を作らせ、それを自分で組み立てることで、文章を書き、文脈を構築する力がつく。
「AIは短文を書くのは得意ですが、長文になると文脈や論理の流れが崩れることも。そこで、パラグラフごとに文章を書かせ、次にどんな内容が必要かを考えながら自分でつなげていきます。完成したらAIに添削してもらい、さらに自分で推敲する。文章全体の構成を考えることで、文章力を鍛えられます」

発想力を好転させる「視座転換検証」
Work

異なる視点から物事を見ることで、発想力を磨き、考えを深める
自分とは異なる立場から物事を捉える「視座転換」。AIを使えば、さまざまな視点から考える練習が可能。
「人間はどうしても自分の視点にとらわれがち。でもAIなら、お客様目線、専門家目線、年代や性別の異なる人の目線など、さまざまな立場からの意見を瞬時に提示してくれます。例えば何か文章を書くとき、20代女性や50代男性ならどう感じるかを聞いてみる。自分では気づかなかった考え方に触れることで、物事を多角的に捉える力が養われます」

批評力を身につける「対AI 1on1」
Work

AIに「本当に正しい?」と問い、自ら反論を考え、批評力を磨く
AIの答えにあえて反論し、その妥当性を検証するワーク。異なる可能性を考えることで、思い込みに気づき、論理的に判断する力を養います。
「AIの答えを見たら、まず自分で“そうじゃない可能性は?”と考えてみて。その上でAIにも“今の答えに反論して”“本当に正しい?”と問い直します。必要に応じて根拠となる情報源を探しましょう。答えを受け取って終わりにせず、反証を重ねることが批評的思考力を鍛える練習になります」

選択力を上げる「目標細分化」
Work

目標を低く細かく設定することで、決断力と選択力を磨いていく
失敗したくない思いからなかなか決断ができず、延々と選択肢を比較…。そんな人はぜひこれを。
「決断できない、あるいは選択できないのは、目の前の目標を大きく捉えすぎていることに原因がある場合も。思考の停止を感じたときは、AIに目標を小さくかつハードルを低く細分化してもらうことで、“とりあえずやってみよう”という気持ちが生まれる。目標を小さく分けることは考えることそのもの。自分で条件を加え、行動を選ぶ練習になります」

anan 2515号(2026年10月14日発売)より































