いますぐ会いに行きたい! 動物園のネコ科の仲間たち/教えて! 猫博士。Vol.2

近頃、動物園ではいろんなスターが生まれ、話題を集めているけれど、猫好きとしてはやっぱりネコ科の動物が気になる! そこで、全国の動物園にいるネコ科の仲間から、動物学者の今泉忠明先生が注目の種類を紹介。

Index

    この秋、100年ぶりに新たなネコ科動物「ティルカヨ」がボリビアで見つかったというニュースがあり、どんな猫なのか気になっている猫好きとは多いのでは? 「その一方で、ネコ科動物は野生の個体数が年々減少し、絶滅が危惧される種類も多いんです」と動物学者の今泉忠明さん。

    「生息地によって大きさや見た目、そして特性もいろいろ。でも、いずれも繁殖は簡単ではないので、チャンスがあれば動物園でその姿をぜひ見ておいてほしいですね」

    絶滅危惧種という観点だけでなく、ずば抜けた身体能力、見た目が個性的…。日本の動物園で会えるネコ科動物から、ananの猫好き読者必見の5種類について先生が解説します。

    ユキヒョウ〜ムクムクで愛らしいけれど、身体能力は凄まじい!

    ユキヒョウ

    「ヒマラヤの高山にひっそりと生息しているヒョウの一種で、薄いベージュに斑点がすごくきれいなんですよね。そして、寒い場所に暮らす動物なので毛が長くてムクムクとしている。手足も太くて筋肉質なので、ほかのヒョウに比べると、見た目はちょっとかわいらしいんですよね。

    長いしっぽが特徴で、野生ではこの長いしっぽでバランスを上手にとりながら、岩から岩へひと飛びで15メートルくらいジャンプしたり、崖から飛び降りたりする。険しい山や岩場を跳び回り、野生のヤギやヒツジを捕まえて生きているんです。獲物を捕まえる際に、その獲物を咥えたまま50メートルくらい山の斜面を転がり落ちる映像を見たことがあるのですが、ケガをした様子もなく全然へっちゃらそうでした。ビルの15階くらいから落ちているのにですよ! すごいですよね」

    ユキヒョウに会える動物園

    札幌市丸山動物園(北海道)、旭川市旭山動物園(北海道)、秋田市大森山動物園(秋田県)、多摩動物公園(東京都)、いしかわ動物園(石川県)、東山動植物園(愛知県)

    ツシマヤマネコ〜長崎県の対馬にのみに生息する、国の天然記念物

    ツシマヤマネコ

    「動物園によっては、アムールヤマネコ、ベンガルヤマネコと表記するところがありますが、その亜種で長崎県の対馬にのみ生息しています。湿地で生活する東南アジアのヤマネコの亜種なので、イエネコとは違って水を怖がらない。毛も脂でコーティングされていて水を弾くから、泳ぎはむしろ得意。水の中のカニやハゼなどを捕食しています。

    現在、野生では100頭くらいしか生息していなくて、国の天然記念物であり、絶滅危惧種でもあります。ですので、個体数を増やすために全国各地の動物園で分散飼育され、繁殖に取り組んでいます。今年の春は、福岡市動物園で赤ちゃんが産まれていますね。放獣して野生復帰させる取り組みも行われていますが、現在の対馬はヤマネコが安心して生息できる森がほとんどなくて、交通事故に遭ったり、イノシシなどの罠にかかってケガをしたり、餌場も少なかったり…生き延びるのはなかなか大変なのです」

    ツシマヤマネコに会える動物園

    よこはま動物園ズーラシア(神奈川)、富山市ファミリーパーク(富山)、東山動植物園(愛知県)、京都市動物園(京都府)、福岡市動物園(福岡)など

    マヌルネコ〜ずんぐりむっくりで愛嬌のある風貌は、生きるための進化!?

    マヌルネコ

    「マヌルネコは近頃大人気ですね。日本に初めてやって来たのは1980年代で、上野動物園だったと思います。

    中央アジアの岩場や峡谷など丘陵地帯に生息し、寒くて乾燥している環境なので、野生のネコ科動物では珍しく、毛が長くてムクムクしているんです。またネコ類は耳で体温調整をしているのですが、マヌルネコの小さな耳は体温をできるだけ逃さないことに、また、その耳の位置が他のネコ科動物に比べて低く、顔の横にあるのは、狩りをする時に獲物に気づかれないことに役立っているのです。岩の後ろに潜んでナキウサギや小型哺乳類などを狩るのですが、様子をうかがう時に、岩から耳が先に出ると獲物に気づかれちゃいますからね。ずんぐりむっくりで、どことなく奇妙な顔をしてるのが巷ではかわいいって言われていますが、動物として生き残ってきた結果なんですよ。

    ちなみに、マヌルネコは獲物との距離を詰める時に尻尾を立てて振りながら近づくのですが、ウサギやリスはそのしっぽに見惚れちゃうんです。その隙に忍び寄って、さっと捕らえる。動物は動くものに反応しやすいことを利用して、マヌルネコは狩りをするんです。おもしろいですよね」

    マヌルネコに会える動物園

    旭川市旭山動物園(北海道)、那須どうぶつ王国(栃木県)、埼玉県こども動物自然公園(埼玉)、恩賜上野動物園(東京都)、東山動植物園(愛知県)、神戸どうぶつ王国(兵庫県)など

    スナネコ〜日本での飼育頭数はまだ少なめ。小柄で愛らしい砂漠の天使

    スナネコ

    「小さくてかわいいネコ科動物といえば、やっぱりスナネコでしょう。体のサイズは、イエネコよりもひと回りくらい小さいでネコ科では最小クラス。見た目はとても愛らしいのですが、肉食動物だし、人にも懐きません。生息地は北アフリカ、アラビア半島、中央アジアの砂漠地帯で、暑い日中は動かず、おもに夜行性。体のわりに耳が大きいのが特徴で、マヌルネコとは逆に、大きな耳から熱を逃して体温調節をしているんですよね。でも、この大きな耳のおかげで聴覚は優れていて、獲物である虫の羽音などを素早くキャッチできるんです。

    また、足の裏の毛がふさふさで肉球を覆っているのですが、これも暑い砂から肉球を守るためなんです。機会があればチェックしてみてください。日本の動物園で見られるようになったのは、比較的最近なので、まだ飼育頭数は少なめのネコ科動物です」

    スナネコに会える動物園

    那須どうぶつ王国(栃木県)、埼玉県こども動物自然公園(埼玉)、神戸どうぶつ王国(兵庫県)、長崎バイオパーク(長崎)など

    サーバル〜ネコ科屈指の手足の長さで、優れたジャンプ力を持つ

    サーバル

    「アフリカ北西部のサバンナや草原に生息している中型のネコ科動物。手足が長く草原を動き回って狩りをするんですが、とにかくジャンプ力がすごい。2メートルくらいは余裕で垂直ジャンプできちゃう。手も器用だから、低空飛行している鳥をパンチして捕ったりするんですよね。あと、顔が小さい割に耳がとても大きく、聴覚が優れているから、草むらに潜む獲物の音を敏感にキャッチします。毒蛇なんかも捕まえたりするんですよ。

    そんなふうに身体能力が高いサーバルなのですが、子猫の時から一緒に暮らすと意外と人に慣れたりするので、過去にはペットとして流通していた時期もあったんですよね。でも、今は特定動物に指定されていて、もちろんペットとして飼うことはできません。ぜひ動物園に会いに行ってくださいね」

    サーバルに会える動物園

    札幌市丸山動物園(北海道)、多摩動物公園(東京都)、東山動植物園(愛知県)、神戸どうぶつ王国(兵庫県)、アドベンチャーワールド(和歌山)、愛媛県立とべ動物園(愛媛)など

    (猫の魅力を専門家が解説する連載「教えて! 猫博士。」は毎月1回更新! 次回は12月上旬に公開予定です)

    Navigator

    Profile

    今泉忠明

    動物学者。1944年生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、動物学者の父に誘われ、国立科学博物館所属の特別研究生として哺乳類の生態学、分類学を学ぶ。上野動物園動物解説員、伊豆高原ねこの博物館艦長などを歴任。著書も多数。

    Loading...
    イラスト・HONGAMA 取材、文・野尻和代

    Share

    • twitter
    • threads
    • facebook
    • line
    ライフスタイル

    Recommend

    こちらの記事もおすすめ

    獣医師が解説! 初めての猫暮らしで考えたい7つの心得
    獣医師が解説! 初めての猫暮らしで考えたい7つの心得
    Lifestyle
    PR
    10月16日は「野良猫の日」。ananノラネコジャーナル
    10月16日は「野良猫の日」。ananノラネコジャーナル
    Lifestyle
    【anan総研】なんだか元気が出ない日に訪れたい特別な場所
    【anan総研】なんだか元気が出ない日に訪れたい特別な場所
    Lifestyle
    デザインも機能もバリエーション豊富な時計。新たなお気に入りを迎えてみて
    デザインも機能もバリエーション豊富な時計。新たなお気に入りを迎えてみて
    Lifestyle

    Movie

    ムービー

    Regulars

    連載