スイーツライターのchicoさんがおすすめスイーツを紹介する「お菓子な宝物」。今回は、『向陽珈琲店』の向陽(こうよう)ほか、です。

左から、「向陽」918円、「綺羅星」842円。バラとアーモンドムースのエレガントな香りをチェリーとハイビスカスの果実味、カモミールで愛らしく彩った「万華」842円。(すべてテイクアウト価格)
「花は本能的に太陽の方を向いて咲きますよね。そんな太陽みたいな場にしたくて」。温かな想いを胸に王師都(ワンシドゥ)さんが構えた『向陽珈琲店』。彼が愛する蓄音機をはじめ、日仏のアンティークに囲まれた陽だまりのような空間で咲く“花”は、お客さんや共に表現するクリエイター、それから王さん自身だ。
太陽やお花の型から自ら作り上げた、アートピースみたいなムースケーキはその想いの結晶。フランス菓子をベースに、王さんのルーツである台湾の素材を取り入れて。さらに蒸留水で花のみずみずしい香りを移す手法は、彼が腕を磨いた資生堂『FARO』のデザートを思わせる。
シグネチャーの「向陽」は台湾の季節の野花(今はクチナシ)の蒸留水を使ったムースに、金木犀カスタード(台湾の「桂花蜜」に倣って乾燥金木犀を蜂蜜で煮込んで使う)を潜めた。口にすると可憐で優しいクチナシの香りに、金木犀の優雅な香りとほのかな苦みがふんわり重なり、トロピカルフルーツジュレがジューシーにまとめていく。
「綺羅星」は台湾でちまきを包む葉に使われる月桃の香りを牛乳に移し、蒸留水の香りも加えてムースに。シナモンにも似た月桃の甘い香りと爽やかな青みに、マンゴージュレとパイナップルの南国の華やぎがとろけ、最後にレモングラスのエキゾティックな風が吹き抜ける。どれもふわっと儚い口溶けに、植物の優しい香りとほんのり異国情緒が漂う、ここにしかない幸せだ。
SHOP DATA
向陽珈琲店
東京都杉並区高円寺南4-24-11 宝山ビル102 TEL. 非公開 営業時間と休みはInstagramで確認を。
Profile
chico
チコ スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
anan 2506号(2026年7月29日発売)より
































