意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「欧州熱波」です。
命も危険な暑さ。今後は適応策を広げるしかない
ヨーロッパで酷暑が続いています。5月末にフランス、スペイン、イギリスで例年ではあり得ない30℃超え。6月下旬には記録的な熱波が襲い、フランスのボルドー近郊で44.3℃、パリで44℃に達しました。欧州疾病予防管理センターと世界保健機関の支援を受け、デンマーク国立血清研究所が運営するEuroMOMOでは、季節性感染症や異常気象などに関連する超過死亡率(本来の死亡率を上回る割合)を検出するための死亡統計を提供しています。その発表によると6月22〜28日に1万650人の超過死亡者が出ました。そのうち約85%は65歳以上の高齢者であることが判明。熱中症や、暑さによる心筋梗塞や呼吸器系疾患の悪化などが原因なのではといわれています。
欧州北部では歴史的にエアコンがいるほどの暑さにならなかったため、エアコンのある家庭が少なく、また、建物が古いためエアコンをつけることは容易ではありません。気候変動対策や、古い建築物や景観を守るための規制が厳しく、設置したくてもなかなかできない事情もあります。
その点、日本は建物も新しく、エアコンが普及していますから、酷暑でも建物内に入ればなんとか凌げます。夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるよう断熱材の普及にも力を入れており、東京都では助成金を出して断熱材や断熱ガラスの使用を勧めています。東京都の住宅は約7割が集合住宅ですが、戸建てでは6割程度まで高断熱窓が普及している一方で、集合住宅では導入は3割程度にとどまっています。都や自治体は、「省エネ改修促進事業」としてさまざまな支援を行っています。
気候変動に関しては、CO2排出を減らす緩和策だけでは対応が間に合わないため、今は気候変動を受け入れた上での適応策を見出す方向にシフトチェンジしています。例えば、体を冷やす衣服を開発したり、農作物を守るために酷暑に耐えうる品種改良をするなど。
エネルギー高騰により、エアコンを始終使えない人のために、日中涼めるよう、公共施設を開放する動きも出ています。熱中症は命の危険を伴います。気候災害対策として、暑さの避難所も日常的に整備するべきでしょう。
五月女ケイ子解読員から一言

欧州は、歴史的建造物にはクーラーの設置が難しいのも一因みたいですね。残すことと環境に順応することの難しさ。サグラダ・ファミリアがやっと完成するガウディは、どう思ってるでしょうか? 気候の変化は世界の景色を変えていってしまいそうです
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。10/5〜10/18に、外苑前の「ギャラリーハウスMAYA」で個展を開催。近著に『桃太郎、エステへ行く』。
anan 2510号(2026年9月2日発売)より































