令和ロマン・松井ケムリ「仕事熱心じゃないくせに、仕事人間なのかもしれないです」

デビュー9年目。インテリ、実家が太い、ボンボンなどのイメージで知られる松井ケムリさんの、頭の中とは? M-1連覇の賞金をめぐる真相から、今ハマっていることまでを直撃!


令和ロマンが『M-1グランプリ』(以下、M-1)で史上初となる連覇を成し遂げたのは、2024年のこと。前代未聞の快挙を果たし、コンビとしてはもちろん、個人としても活躍の場を広げている松井ケムリさん。テレビ番組ではMCやコメンテーターを務めるなど、その姿を目にしない日はない。

── 相方の髙比良くるまさんとは、大学時代に出会ったそうですね。

慶應義塾大学のお笑いサークルに所属していたんですが、当時相方を探していた僕が白羽の矢を立てたのが、1年後輩のくるま。彼は面白かったしプロになりそうだと思ったので、「漫才をしよう」と誘いました。

── では大学を卒業して、そのままNSCに入ったのでしょうか。

それが、お互いにプロに行こうと話したことはなくて。NSCの願書には、すでに相方がいる場合はその名前を書く欄があるんですが、くるまいてくれ〜と思いながらそこに彼の名前を書いたんです。そうしたらいました。

── お互いにいるのを知らずに?

バラバラに入っていたんです。

── それはすごい。松井さんは幼少期からボケるのが好きだったそうですね。なぜ今はツッコミに?

小学生ぐらいまでは、お調子者系のボケでした。たぶん周りに知り合いしかいなかったから、内弁慶でボケていたんでしょうね。ツッコミを意識したのはいつだろう。自然にくるまをボケとして扱って、自分自身はツッコミとしていたと思います。たぶん、斜に構えたようなツッコミという立場がカッコいいと思ったのかも。音楽で言えばベース弾いてます、みたいな。僕、ベースも弾くんで。あ…マジでそういうヤツなんだろうな(笑)。

── (笑)。そもそも、お笑いを目指したきっかけを教えてください。

お笑い芸人になりたかったというよりは、有名になってチヤホヤされたかったから芸能界に入ろうと思ったんです。それで、どうやらスカウトがいるらしいと聞いて竹下通りに行ったんですが、往復して帰ってきて。その足で吉本のお笑い養成所NSCに入りました。まあそうは言いつつも、高校生ぐらいから芸人しかないんだろうな、と思ってはいたんですけど。

── 芸人=吉本だったわけですね。

他にも事務所は知ってたけど、吉本だったら間違いないだろうと。最近思うんですけど、僕は父親がサラリーマンをしていたせいか、大きな勢力とか組織に対する信頼が強いんですよね(笑)。学校や大手がすることは間違いないと思って生きてきたから、いま吉本にいるのはすごいラクです。

── そうなんですね(笑)。ところで、松井さんがおっしゃるところの“チヤホヤ”とは?

みんなが僕を知っている状態というか、例えば仕事でロケに行ったら人だかりを作りたいんです。『旅猿』に出させてもらった時、東野(幸治)さんとか岡村(隆史)さんってやっぱりすごくて、はっきり人だかりができるんですよね。僕も少しずつチヤホヤされるようになったとは思いますけど、諸先輩方に比べたらまだまだです。

── 令和ロマンの知名度を上げたのが、M-1での2年連続優勝。1年目の賞金は全額くるまさんに譲り、2年目は全額松井さんがもらったというエピソードは強烈で、大きな話題になりました。

ラジオのノリで「もし優勝したら賞金は全部あげる」と僕がくるまに約束しちゃったんです。だってくるまが「賞金を全部くれるなら、ネタ作りを2倍頑張ります」と言ったから。正直僕は、優勝するとは思ってなかったけど、そういう意味では彼が賭けに勝ったということで讃えてあげようと思って。でも全額あげることで、僕が得した部分も絶対にあるだろうし、そう考えれば投資としては大損したわけでもないと思うんです。よく賞金を1000万円あげたと言われがちですけど、そもそも半分ずつもらうとして、僕があげたのは500万円ですし。

── それが翌年にも優勝して、元金が戻ってきたという。

さすがにそれにはびっくり。最高の投資ですよね(笑)。

── そもそもチヤホヤされたい松井さんとくるまさんとでは、M-1への温度差があるようにも…。

くるまもそれは感じているんじゃないですかね。僕は本当に何でもいいんで。ただ、M-1で優勝すれば売れるし、チヤホヤされる。だから理由は違うけどM-1に対する熱量は同じというか。

── 喧嘩はないんですか?

コンビを組んで10年経ちますが一度もないし、くるまが休んだ時も解散とかの話は一度も出ていない。お互い大人ですから、意見が違ってもちゃんとどこかで擦り合わせられるんでしょうね。

── なるほど。ところでバラエティ番組『ニカゲーム』では単独でMCを務めていますが、人気企画の英語クイズでは二階堂高嗣さん(Kis-My-Ft2)と猪俣周杜さん(timelesz)の珍回答を翻訳しながら、手腕を発揮して、上手く引っ張っているなと。

あの番組はめちゃくちゃ怖くて、収録中は頭を回転させまくって必死ですよ。だって、二人が日本語を英訳したものをまた和訳する作業って、本当に難しいですから。そもそもGoogle翻訳でもめっちゃミスるやつじゃないですか。それを人間の力で超えていくというのは、あの番組の醍醐味なのかもしれないです。

── お二人の印象は?

結局、僕が二人の“英訳”をある意味正解にしているから二人とも間違ったことにはなってなくて。周杜くんなんて、僕が間違えた時「ケムリさんが悪い」と本気で思っている瞬間もあるから、逆に気持ちいい(笑)。本当に才能だと思います。この番組はレギュラー化前からやらせてもらっていて、たぶん単独では初めてのレギュラー番組なので思い入れがあるんですよね。僕のツッコミのスタイルとか、インテリキャラみたいな部分もこの番組から広まっていった感覚で、今のチヤホヤにも繋がっていると思うとありがたいです。

── 動物がお好きだそうで、動物をモチーフにしたエッセイを出版したり、ほかにも映画『トイ・ストーリー5』で声優をされたりもしています。多ジャンルでの活動は、どのように棲み分けを?

声優仕事は、ここまで溜めてきたチヤホヤが与えてくれたご褒美仕事だと思っています。もちろん全力で取り組みますけど、お笑いのレベルが上がるわけではない。一方で本を書くとか、MCやコメンテーターの仕事は、お笑いの修業のような位置付け。日常的に時事に関心を持ち、世の中に対する意識や、脳みそを使うという部分では芸の肥やしになると思っています。ただやっぱりそこでも、組織を信じてしまうし、大きな勢力の中で成り上がること以外、成功する方法を知らないんでしょうね。自分で地図を描くのではなく、誰かが描いた地図しか歩けないというか。だから、MCなんかを任せていただいたら自分なりに楽しくできるんですが、若手芸人のひな壇に座って自由にどうぞ、みたいなのは本当にできない。だいたい、大人数も苦手なんです。

── 何でもこなしそうなので、意外です。

なるべくリスクを取りたくないし、ミスを恐れているんです。だからひな壇ではリスクが少ない=喋らないを選んじゃう。それは自分でも嫌いなところですね。

── くるまさんとは真逆のイメージですね。

くるまは挑戦しないことのほうがリスクだと思うタイプ。僕からしたらそういう人がカッコいいし、大成するイメージです。

── いま相当お忙しいとは思いますが、お休みの日は何を?

ありがたいことにほとんど休みがないんですが、昨日は半休をいただいたので、子供を連れて、甥っ子や姪っ子たちと実家の大きいビニールプールで遊びました。結局休みをもらっても、そうやって子供と遊んだり、仕事で必要な調べものをしたり。もし自分だけの時間ができたら、ブーツが好きなので買い物に行こうかな。でも、買ったからって何なんだろうとも思っちゃって。仕事以外、何をしたらいいのかわからないんですよね。仕事熱心じゃないくせに、仕事人間なのかもしれないです。

来年6月までに痩せないと、知らないヤツとM-1出場

── では、趣味やリラックスの時間はありますか?

唯一、ラジオが好き。僕自身も『GURUGURU!』という生放送を持っていますが、他にも必ず聴く番組は週に何本もあって。

── どんな番組がお好きですか?

ある意味、聴き手を無視して喋り手だけのノリで勝手に進んでいく番組が好きなのかも。だって「リスナーのみなさん」って問いかけられると、聴いているほうは同じ場所にいないんだ、と思っちゃうじゃないですか。でもリスナーを無視することで、リスナーも同じ場所にいられるような気がする。もともと伊集院光さんは好きでずっと聴いているんですが、アルコ&ピースさんも好き。それからハライチの番組では、岩井(勇気)さんが勝手なルールで話を進めていく感じも好きです。ラジオを聴くことに追われていたりもするんですが、ブーツを磨きながら、ラジオを聴いている時は、ちょっと豊かな時間かもしれませんね。

── リアルが垣間見られるエピソードですね。

あ、あとハマっているといえばダイエットかな。いま101kgなんですが、来年の6月ぐらいまでに90kgを切っていなかったら、知らないヤツとM-1に出るって、くるまと約束したんですよ。

── えっ…相変わらず話題に事欠かないですね(笑)。

知らないヤツとなんて、絶対にイヤじゃないですか。だからこの1か月で約5kgは落としたんです。でももし年が明けてもあまり痩せてなかったら、僕のダイエット企画をアンアンさんにお願いしていいですか?(笑)

Profile

松井ケムリ

まつい・けむり 1993年5月29日生まれ、神奈川県出身。NSC東京校23期生。大学時代に髙比良くるまとコンビを結成し、2018年にデビュー。'23年から、2年連続でM-1グランプリ優勝を果たして話題に。『ニカゲーム』(テレビ朝日)、『ラヴィット!』(TBS系)、『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)ほか、MCやコメンテーターとしてソロでも活躍中。

information

松井ケムリ自らが描いた、面白おかしいキャラクターやイラストが満載の絵本『ちがうちがう』(集英社)が発売中。神様が作った間違いだらけの世界を小さな少年が正していく物語で、水中で泳ぐライオンや、牙の生えたパンダ、ぐにゃぐにゃの公園、四角いフルーツなどヘンテコな世界に「ちがうよ」と親子で優しくツッコみながら楽しめる。

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写真・岩澤高雄(TheVOICE) ヘア&メイク・浜田あゆみ インタビュー、文・若山あや

anan 2509号(2026年8月26日発売)より
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No.2509掲載

シェアライフ 2026

2026年08月26日発売

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