無理のない動きで、繊細で柔軟な筋肉を養う。
体が美しく整うとして2000年代に広がり、ここ数年、再びブームを迎えているピラティス。
「ピラティスのルーツはリハビリ。骨盤と背骨、肋骨をつなげて動かすことで全身を鍛え、体の正しい機能を取り戻すために考えられたメソッドです。一般の筋トレのように体の外側の筋肉を鍛えるのではなく、少ない負荷で内側の筋肉を使うのが特徴で、いわばワークアウトではなくワーク“イン”。その感覚が、自分で自分を丁寧にケアしたいという今の人たちの気分にマッチしているのでは」
と、ピラティス指導の第一人者である森拓郎さん。横たわっての動きが多く、誰でも無理なくできることも人気の理由という。
「ポーズだけを追わず、呼吸や骨格の連動を意識するのがコツ。体幹にしっかり効かせましょう」
数ある動きの中から今回は、ヒップリフトをご紹介。基本の呼吸や動きを確認してから取り組もう。
「1日10分でOK。続けることで体は変わります」
ピラティスのメリット4選。
姿勢が良くなり、見た目がスッキリ!
頭の重みを骨盤の上にある背骨で支えているのが、人間の体。「ピラティスによってその周囲のインナーマッスルを正しく使えるようになると、骨格を保持する持久力が増し、姿勢が自然と整います。それが普通の状態になると、座る、歩く時の姿勢も美しいものに」
インナーマッスル強化で正しく使える体に。
「体幹のインナーマッスルが鍛えられると、末端や外側の筋肉の負担が軽減されます。腰痛、肩こり、膝の痛みなどの不調の予防にも効果的。骨盤や背骨を意識して動かすので、骨格が正しい位置に戻ります。体を機能的に使えるようになり、疲れにくくなる作用も」
しなやかな筋肉が育つことで、ボディラインが自然と整う。
「リハビリから生まれたピラティスは、一部の筋肉を大きくするのではなく、内側の筋肉を中心に全身の筋肉をバランスよく鍛えるためのボディワーク。細かい筋肉が活性化されて動きがしなやかになり、体のラインも美しく引き締まってくるのです」
自律神経のバランスが整い、太りにくい体質に変わる。
「背骨と骨盤を連動させてゆっくりと動くピラティスは、この周辺をリラックスさせる働きがあり、自律神経を整えるのに役立ちます」。脳から背骨を通って骨盤へと伸びる自律神経が整うと、代謝が上がり脂肪が燃焼され、太りにくい体質になるなど嬉しい効果が。
ピラティス前のウォームアップ。
【基本の呼吸法】
1、肋骨に両手のひらを当て、肋骨が膨らむのを感じながら、鼻から5秒かけて息をゆっくりと吸う。
2、5秒息を止める。
3、肋骨の間が閉じていくのを感じながら、口または鼻からゆっくりと息を吐く。5秒息を止めて、1 に戻る。1~3を5セット行う。
【基本のポジション】
ピラティスの基本のキ、意識すべきポイントは?
ピラティスでは、骨盤の角度や、関節を伸ばしたりひとつずつ動かしたりする意識がとても重要。正しい状態を都度確認して。
・ニュートラル
骨盤がまっすぐな状態。仰向けの時は床に対して平行になり、背中と床の間に手が入るくらいの隙間ができる。
◎お腹に手を当てて、動きを確認。
骨盤の出っ張った骨に親指の付け根を当て、両手の中指が恥骨のあたりにくるように、親指と人差し指で三角形を作る。この状態で呼吸をすると骨盤の動きが分かりやすい。
・インプリント
恥骨を軽く天井に向けるようにして、骨盤を後傾させた状態。床との隙間はなくなり、背中が床にぴったりとつく。
・エロンゲーション
「伸長」の意味で、体の軸を安定させながら関節同士を伸ばす動きのこと。様々なポーズで行われるが、写真の姿勢のように腰を上げて伸ばす動きが代表的。
【基本の動き】
1、仰向けに寝て膝を立て、膝の間を拳1個分空ける。みぞおちを床に近づけるようにして肩を床につけ、骨盤はニュートラルに保つ。両手で体を抱えるようにして反対側の脇腹に手のひらを当て、肋骨の間が開くのを感じながら鼻から息を吸う。
2、息を口または鼻からゆっくりと吐きながらお腹を凹ませ、背中とお腹を薄くする。同時に、骨盤はインプリントの状態に。1と2を数回繰り返し、肋骨の動きを確認する。
HIP LIFT
体幹を安定させる重要な動きは、お尻とお腹、太ももなどにスッキリ効果が。お尻に力を入れやすいよう、まずはももの前面をしっかりほぐして。
【STEP1】
1、体の左側を下にして横向きに寝る。左脚の、股関節と膝をどちらも90度に曲げる。左腕を頭の下に入れ、右手は床について上体を支える。骨盤は正面に向ける。
2、お腹を縮めながらやや背中を丸め、右足のつま先を右手で持って膝を後ろに引く。骨盤はインプリントに保ち、視線はみぞおちのあたりへ。この状態を30~60秒キープし、右の太ももの前面を伸ばす。反対側も同様に行う。
【STEP2】
1、膝を立てて仰向けになり、かかとをややお尻に近づける。骨盤をニュートラルに保ち、基本の呼吸を行う。
2、息を吸って吐きながら骨盤をインプリントにしたら、かかとで床を押し、お尻側から背骨をひとつずつ床から離すイメージで、骨盤を浮かせていく。
3、息を吐ききったら、膝と頭で引っ張り合う感覚でエロンゲーションを行い、膝から首までを一直線に保つ。骨盤は天井に向け、ニュートラルに。お尻とお腹の筋肉で押し合うようにして、腰が反らないように注意を。
4、息を吐きながら、2とは反対に背中、腰、お尻の順で、骨をひとつずつ動かすような感覚で床にゆっくりとつけていく。骨盤はインプリントをキープ。最初の姿勢に戻り、骨盤がニュートラルになっていることを確認して、2~4を5回繰り返す。
PROFILE プロフィール
森拓郎
もり・たくろう ピラティス指導者、フィットネストレーナー。自身のパーソナルトレーニングスタジオ『rinato』でボディメイク指導に携わる。近著に『ボディメイク・ピラティス』(ワン・パブリッシング)が。