「糖尿病とは無縁」と思っている人も注意! 妊娠糖尿病のリスクとは

ウェルネス
2024.09.01
ananフェムケア連載「Femcare File」。今回のテーマは、「妊娠糖尿病ってどんな病気??」です。「糖尿病とは無縁」と思っている人でも発症する妊娠糖尿病。そのリスクを、門岡みずほ先生に聞きました。

将来糖尿病になるリスクや赤ちゃんへの影響も。

フェムケア

妊娠によって女性の体には様々な変化が表れる。その一つが血糖値で、「妊娠糖尿病」の原因になるという。

「妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常と定義されます。妊娠初期と中期に行われる検査によってチェックされます。肥満や糖尿病の家族歴のある人、高齢の人など発症しやすい人の特徴はあります。ただ、妊娠中は胎盤からインスリンを効きにくくするホルモンが出るため、誰にでも妊娠糖尿病になる可能性はあるのです」

妊娠糖尿病になると、お腹の中で赤ちゃんが大きくなりすぎて、難産になるリスクが高まることも。では、妊娠糖尿病になったらどうすればいいのか。門岡先生は「基本的には食事療法がメインで、それだけだと血糖値のコントロールが難しければインスリンを投与」とのこと。

「糖質は赤ちゃんの栄養源なので、抜くのはNG。食べる順番に気を配るだけで血糖値の急激な上昇は抑えられます。食事の際はまず野菜、次にタンパク質、炭水化物の順で食べるように指導します。間食も、甘いものはなるべく避けスティック野菜などに切り替えることも必要」

血糖値は出産後に自然と落ち着くそうだが、妊娠糖尿病を経験した女性はその後も糖尿病を発症するリスクが高いという。

「妊娠糖尿病を経験した女性のうち産後5年間で20%、10年間で30%の割合で糖尿病になったというデータがあります」

そのため妊娠糖尿病になった人は出産後も検査が推奨されているが、実際に検査を受けた人は3割ほどという調査結果も。

「産後は赤ちゃんの世話で忙しく、自分のことは後回しになりがち。でも妊娠糖尿病になったということは生活習慣病になりやすい体質ということ。それを妊娠によって発見できたと前向きに考え、産後も健康管理に注意して検診を続けていくことが大切です」

まだ妊娠していない人でも心がけてほしい対策としては、

「妊娠前から定期的に検診を受けましょう。そしてバランスのよい食事を摂り、ストレスをためないなど心身のケアを心掛けたいですね」

妊娠糖尿病はどんな人がなるの?

誰でもなる可能性はある!
「なりやすい人の特徴は、肥満、前回の妊娠で妊娠糖尿病だった人。II型糖尿病(一般的に生活習慣病と称されるタイプの糖尿病)の家族がいる、年齢が高い、多嚢胞性卵巣症候群、血糖値を調整する働きを持つインスリンの分泌量が少ないことなどがありますが、どんな妊婦さんもなる可能性はあります」

赤ちゃんにはどんな影響が?

難産になったり、子供に肥満のリスクも。
「妊娠中の血糖管理が赤ちゃんにも影響します。まず、お腹の中で大きくなりすぎて難産になる可能性が考えられます。出生後に低血糖や呼吸障害に陥るリスクも。また将来的に糖尿病のリスクが高まったり、小学生くらいから肥満になることもあるので、乳幼児健診でチェックします」

なぜ出産後も、糖尿病のリスクが高まるの?

将来糖尿病になるリスクは7倍以上。
「妊娠糖尿病になった人は、産後、血糖値が正常化しても、将来糖尿病になるリスクが正常な経過だった妊婦さんに比べて7倍以上。ただし妊娠しなければ見つからなかった軽度の糖代謝異常なので、見つかったことをチャンスと捉えて産後も定期的に検査を受け、血糖値をチェックしましょう」

今日からできる対策って?

検診を受け、プレコンセプションケアを。
「妊娠糖尿病対策もプレコンセプションケアの一環。たとえば肥満や体重増加により妊娠糖尿病になる可能性が高まるため、妊娠前から健康に注意して定期的に検診を受けるようにしましょう。また暴飲暴食を避け、無理をせず疲れをためないなど、毎日の過ごし方も大切です」

門岡みずほ先生 産婦人科専門医。亀田総合病院産婦人科部長代理、臨床遺伝科部長代理。札幌医科大学卒業後、国保旭中央病院を経て2014年に亀田総合病院産婦人科に着任。数多くの妊娠糖尿病の妊婦の診察経験を持つ。

※『anan』2024年9月4日号より。イラスト・二階堂ちはる 取材、文・音部美穂

(by anan編集部)

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