これまでベールに包まれてきた王騎の過去と、謎の人物・摎の秘密が明かされる最新作『キングダム 大将軍の帰還』。これまで全作に登場している王騎役の大沢たかおさん、そして今作が初登場の摎を演じた新木優子さんにシリーズを振り返ってもらった。
大沢たかおさん(以下、大沢):映画『キングダム』のお話をいただいた当時、漫画やアニメが原作の作品を実写化することに対する風当たりが強かったんですよ。だから『キングダム』はある意味、これで失敗したら後がないという崖っぷちからのスタートでしたね。なかでも王騎は特異なキャラクターで、彼こそが映画化のキモだとプレッシャーをかけられていました。つまり僕が生命線だと(笑)。王騎というキャラクターがこの作品にとってどれほど重要な役なのかは僕自身も理解していましたし、至らない部分もあったとは思うけれど、僕ができることは限界までやって、あとは観る方に委ねようという感じでしたね。
新木優子さん(以下、新木):私は1作目を劇場で観ていて、映画としての魅力をすごく感じた作品だったので、オファーをいただいた時はうれしかったです。戦わなければいけない時代を生きる摎は武力的な強さはもちろん、心の強さも持ち合わせています。原作でも彼女の芯の強さを一番に感じたので、それをしっかり表現できたらいいなと思いながら演じました。劇場で観ていた時から壮大なスケールの世界にのめり込める臨場感が魅力だなと感じていたんですが、私たちが着る衣装や馬具など、細やかなところにまで気を配られていて、まるでその時代を本当に生きているような感覚になりました。演じるみなさんも本気で目の前の相手に向き合っていて、だからこそ観ていて映像の中に入り込んだような気持ちを味わえるんだなって。
大沢:出演者もスタッフも、全員のエネルギーが強い作品だよね。その頃は、もし、この映画が成功したらシリーズ化しようという話はあったけど、まだ続編の話はなかったんです。それよりも、いま撮っている映画をいいものにしたいという想いが強かった。それが強烈な熱を生んでいるんでしょうね。原作がいいのはもちろんだけど、原作を超えるには人間の“生”のエネルギーしかない。とにかくみんなが必死に戦っていました。だから新木さんや吉川(晃司)さんみたいに、途中から撮影に参加した人にとってはやりにくいんじゃないかなと最初は心配していたけれど、前作までを観て自分なりの想いや情熱を現場に持ってきてくれたので、そこは感謝しかないですよね。
新木:私が撮影に参加した時、監督、プロデューサー、出演者、スタッフの全員が一つのチームとして、いい映画を作るんだという同じ目標に向かって戦っているのを感じました。アクションシーンや馬に乗るシーンでは、私ができるようになるまで手取り足取り教えていただきました。プロフェッショナルなみなさんに、チームの仲間としてあたたかく迎え入れていただいたのがうれしかったです。1作目を観た時、長澤まさみさんが演じる楊端和(ようたんわ)がとても印象に残ったんです。美しくて、魅力的で、映画を観終わった後にも強い印象を残す。そんな存在感を私も摎として残せたら、というプレッシャーと、今まで明かされなかった王騎の過去に触れる役どころなので緊張感を持って撮影に臨みましたが、現場でお会いした大沢さんが王騎そのものだったので、私も摎としてスムーズに『キングダム』の世界に入り込めました。
大沢:摎はこの映画にとって本当に大事な役どころだったから、新木さんが引き受けてくれてよかった。王騎にとって摎という存在は彼のすべてだったから。現場で対面した新木さんは摎そのものだったし、その姿を見て僕もうれしかった。何よりホッとしました。今までがんばってきたことが報われたな、と思わせてくれました。
新木:そんなふうに言っていただけて本当に光栄です。王騎って将軍としても武人としても強くて、誰にも負けたことがない。でも今回、そんな王騎の過去が明かされて、彼が強くいられる理由が実はすごく人間らしくて、繊細であることがわかるんです。あれほど怪物的な強さを持つ王騎も人間なんだなと感じるシーンが今作ではたくさん見られます。信(しん)が王騎と一緒に馬を駆りながら想いを受け継ぐシーンは観ていてグッときましたし、王騎という将軍の人としての強さ、血も涙もある人間らしさを今作では強く感じました。
大沢:王騎のセリフにもあるように、何万もの軍勢を従える将軍という立場はそれなりの経験と、いろんなものを背負わないとたどり着けないものだと思うんですよ。六大将軍と言われるほどの存在に誰もが簡単になれるわけではないですから。たった1人で、一瞬にして国を滅ぼすことができるほどの武力を持っていますからね。逆に、王騎さえ倒せば、とみんなが躍起になるような存在でもあるんです。だから将軍というのは、一般人から見たらある意味、異次元の存在なんだろうなと思います。
新木:『キングダム』は、諦めない人たちが集う物語だと思うんです。成し遂げたいことだったり、自分が得たい何かがあることで、自分自身が強くいられるし、何回でも立ち上がることができる。私自身にもそう思わせてくれた作品なので、今作を観てくださる方に、どんなことにも立ち向かっていける力強さを感じ取っていただけたらと思います。
大沢:『キングダム』というのは信がいろんな挫折を経験しながらも、そんな逆境を乗り越えて自分の夢に向かって突き進む姿を描いた作品ではありますが、実は、人は誰しもひたむきにがんばっているんですよね。今作で何度も絶体絶命に陥る信は、それでも諦めずに最後まで前を向いて生き続けます。そんな彼の熱とエネルギーはきっと観ている人に届くだろうし、観た人は元気になって劇場を出てくるだろうなと信じています。
『キングダム 大将軍の帰還』
シリーズ史上最高スケールで描かれる二人の男の因縁の戦い。
野営地にたった1人現れたほう(※广に龍)煖によって飛信隊は壊滅状態に。ほう(※广に龍)煖は9年前、大将軍・摎を討ち取り、その直後、王騎に死の寸前まで追い込まれた男だった。王騎に復讐する機会を狙っていたほう(※广に龍)煖は李牧の誘いに応じて秦の侵攻に手を貸し、ついに二人は再び相まみえることに…。初めて明かされる王騎の過去、そして王騎が嬴政に告げた先々代の遺言とは? 秦と趙、国の存亡をかけた一戦を圧倒的なスケールと熱さで描いたシリーズ集大成。©原泰久/集英社 ©2024 映画「キングダム」製作委員会
おおさわ・たかお 3月11日生まれ。1995年の映画『ゲレンデがとけるほど恋したい。』をはじめ、ドラマ『星の金貨』、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』、ドラマ『JIN‐仁‐』など長きにわたり活躍中。
ニット¥35,200(ザ ヴィリディアン TEL:03・5447・2100) シャツ¥47,300(ワングラヴィティ/エストネーション TEL:0120・503・971) その他はスタイリスト私物
あらき・ゆうこ 1993年12月15日生まれ。『劇場版コード・ブルー‐ドクターヘリ緊急救命‐』、ドラマ『六本木クラス』『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』など話題作に多数出演。
ドレス¥68,200(アキラナカ/ハルミ ショールーム TEL:03・6433・5395) イヤカフ¥30,300 リング¥41,700(共にトムウッド/トムウッド 青山店 TEL:03・6447・5528)
※『anan』2024年8月7日号より。写真・酒井貴生(aosora) スタイリスト・黒田 領(大沢さん) 髙野夏季(HITOME/新木さん) ヘア&メイク・神川成二(大沢さん) 中山友恵(新木さん) 取材、文・尹 秀姫
(by anan編集部)